研究課題/領域番号 |
23K03870
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 利則 東北学院大学, 工学部, 教授 (20500432)
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研究分担者 |
松浦 寛 東北学院大学, 工学部, 教授 (30612767)
小倉 振一郎 東北大学, 農学研究科, 教授 (60315356)
森島 佑 東北学院大学, 工学部, 講師 (40734132)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | センシング / Wi-Fi / 異常検知 / Wi-Fiセンシング / 農作物被害 / CSI |
研究開始時の研究の概要 |
鳥類による農作物被害を防止するための手法として,音や光などによる鳥類への威嚇がある.この威嚇は,害鳥が飛来するタイミングで行うことが有効である.しかしながら,鳥類の農地侵入を検知する安価で効果的な手法が見出されていない. そこで本研究はWi-Fiセンシングに着目し,電波障害物の多い果樹園に飛来する「野生の鳥」を対象として,長期にわたる計測に基づいた適切な検知方法を見い出して,その精度を評価する.これにより,鳥害対策におけるWi-Fiセンシングの有効性を実証する.
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研究実績の概要 |
農地及びグラウンドにおいて人を対象とした検知精度と検知範囲を検証した。圧縮Beam Forming Reportに含まれる角度情報に多変数ホテリング理論を適用した結果,想定より広い範囲(もしくは小さい対象物)での異常検知が可能となるように思われた。しかしながら,その後,測定時間の経過とともに正常時の統計値が偏位する事象(以後,データドリフトと呼ぶ)がわかり,検知精度と検知範囲を再検証する必要があるとの認識に至った。そのため,研究計画策定時には想定していなかった電波暗室を用いた追加実験を行い,異常検知手法の再検討を行っている。また,農地とグラウンドでの検知精度を比較し,農地での検知精度が劣ることを定量的に確認した。 既知の文献に示されている機械学習の手法を適用して,農地における人検知と位置(エリア)推定の実験を行った。その結果,予想に反して,非常に高い判定精度となることがわかった。しかしながら,その文献に用いられていない評価手法(学習データをテストデータより過去のデータとするもの)では,判定精度が著しく劣化することが分かった(以後,因果律問題と呼ぶ)。その原因と対策を現在検討している。この実験と評価結果について学会発表を行った。 屋外での長期間測定を行うための測定系構築を目指した計測を行った。具体的には,RTK-LIBを用いて圃場の起伏や苗木の位置や大きさを精密計測し,測定系の設計に必要な現地データをおおむね収集した。測定機器の消費電力も計測し,電源容量と測定時間の関係を把握した。測定機器の防水対策と温度対策の両立に十分な目途が立っていない。また,夜間における野生動物の圃場荒らしがあり,長期間測定に向けた機器の固定方法やケーブルの設置方法に課題があることも分かった。 その他,一昨年度の測定データを活用して,検知エリアの設計手法に関する検討結果などを学会発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は次の7項目を目指していた。(a)屋外長期測定を行うための主要装置調達,(b) 測定系の設計に必要な現地データ取得,(c)閾値判定に基づく侵入検知アルゴリズム検討とその評価プログラム作成。これにより,(a1)測定系の設計と構成を完了,(b1)アンテナ位置/設置方向と検知範囲の関係,カメラ位置と撮影範囲,想定される状況での機材消費電力を把握,(b2)ブルーベリーが実をつける6~9月の間に日中数時間の連続測定からカラスが飛来する事例を取得し伝送路状態の変位量を計測,(c1)農地での人検知実験を行い,グラウンドでの実験と比較。 測定系設計と構成に関する(a)(b)(a1)(a2)(b1)はおおむね達成したが,①測定機器の防水対策と温度対策の両立に十分な目途が立っていない。また,②圃場の起伏が大きいことがわかり,平坦な測定エリアを確保するにはAPとSTA間の距離を短くする,③野生動物の圃場荒らし対策,などが必要となることが分かった。 測定する農地(東北大学川渡フィールドセンター)にカラスが飛来する頻度が一昨年度に比べてほとんどなく,農地での測定を4回(延べ5日)行ったものの,(b2)の事例は収集できなかった。そこで,カラスを意図的に誘引してデータ取得する実験を,鳥獣保護法などに留意して行政機関の助言も得ながら,延べ2日行った。初日はマヨネーズやヒマワリの種を餌としたものの飛来はなく,2日目に手羽先の残飯などを餌としてカラスの誘因に成功した。しかしながら2日目の天候が不安定で,風速や風向や天候(曇り~雨)の状況が目まぐるしく変化していたため,伝送路状態の変位の要因を特定することが困難であった。 項目(c)(c1)については,主軸として考えていた異常検知手法(圧縮4角度への多変数ホテリング理論適用と既知文献の手法)に前項で述べた課題があることが判明し,進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では次の6項目を予定していた。測定装置を現地に設置し(a),長期間の連続測定を行い(b1),動画の動き検出ソフトと目視により鳥獣侵入の有無に応じてデータを分類する(b2)。さらに,侵入検知パラメータを検討して検知精度を評価し(b3),学習アルゴリズムに基づく侵入判定ソフトを作成して(c),検知精度を比較する(b4)。一方,昨年度の研究によって,データドリフトによって異常検知の精度が大きく劣化することや,エリア推定の因果律問題が明らかになっており,この対策に一定の目途をつけることが(b3)(c)(b4)の実施に欠かせない。また,昨年度の屋外測定で得られたノウハウを反映して(a)(b1)を実施する必要がある。 以上を踏まえて今年度は次のように進める。まず,農地での長期間測定(a)(b1)は当初計画通り進め,データの蓄積を図る。電源供給と測定機器の防水対策と温度対策に関しては十分な目途が立っていないため,試行錯誤的に進める。動画の動き検出ソフト(b2)については,鳥獣侵入の検出が可能な市販品の調達もしくは内製による作成を進める。しかし,データの分類(b2)については,風速や気温,天候状況も考慮して行う。 項目(b3)を進めるため,課題が判明した4角度への多変量ホテリング理論適用の他,4角度以外の測定量に変換する方法と主部分空間による異常検知法の適用を模索し,複数の環境における検知精度の定量比較を行った上で(b3)に着手する。また,前項で述べた因果律問題は項目(c)(b4)を進める前にその性質を把握すべき(可能であれば解決すべき)ものと考えられることから,まずはグラウンドで昨年度実施した人検知実験のデータを流用して,データの前処理方法と判定精度の関係を明らかにした上で着手する。必要な場合は,電波暗室やグラウンドでの新たな測定や検証を行う。
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