研究課題/領域番号 |
23K03875
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉田 久 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (50278735)
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研究分担者 |
小濱 剛 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (90295577)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 生体システム / 状態変化検出 / 情報論的瞬時等価帯域幅 / 胎児心電位計測 / 胎児心拍変動 / てんかん脳波 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
生体システムにおける状態変化検出法の確立は、生体内部の経時的変化、特に手術中などにおける喫緊の状態変化を検出する上で非常に重要である。通常、臨床現場における診断は計測されたデータを医師が視覚的に把握し、その変化を判断することが一般的であり、医師の経験に依存していることが多い。客観的な状態変化の検出やその検出精度向上のためには計測データのモデリングに基づいた状態変化検出法の確立が有用であると考えられる。本研究では、時系列モデリングによる状態変化検出法を適用し精度良く状態変化を検出する方法を開発し、研究代表者らがこれまでに取り組んできた生体信号を試金石として、評価・検証することである。
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研究実績の概要 |
生体システムにおける状態変化検出法の確立は、生体内部の経時的変化、特に手術中などにおける喫緊の状態変化を検出する上で非常に重要である。通常、臨床現場における診断は計測されたデータを医師が視覚的に把握し、その変化を判断することが一般的であり、医師の経験に依存していることが多い。客観的な状態変化検出には計測データのモデリングに基づいた状態変化検出法の確立が有用である。そこで本研究では客観的な状態変化の検出のために時系列モデリングによる状態変化検出法を開発し、研究代表者らがこれまでに取り組んできた生体信号を試金石として評価・検証することで、生体の健康状態、延いては臨床現場における喫緊の診断に役立てること、また状態変化の予兆を捉えることで様々な疾病の未病対策を試みる。 本年度は状態検出法を適用する生体信号の試金石の一つとして胎児心拍変動を取り上げた。研究代表者および研究協力者らは、これまでに妊婦腹壁上の生体電位信号から胎児心電位を抽出し、ここから胎児心拍変動を計測する技術を開発してきている。本年は3名の妊婦に協力してもらい、上述の胎児心拍変動計測技術を利用して、妊娠約20週から40週の胎児心拍変動データを得ることができた。この胎児心拍変動に予備的な周波数解析を実施し、妊娠週数によって胎児心拍変動の周波数特性が経時的に変化することを見出した。 もう一つの試金石として、てんかん患者の脳波を用いたてんかん発作の予兆の検出を試みた。てんかん発作開始点から60秒間前までのデータをてんかん発作の予兆ありデータ、てんかん発作開始点ならびに終了点から1時間以上間隔の空いている間欠期データを予兆なしデータとラベル付し、機械学習によって両者を判別できるか検討した。機械学習には時系列をそのまま入力する場合と時間周波数解析した結果を入力する場合の2つの方法で検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は生体信号の状態変化を検出するための方法を開発することが目的である。本年度は、状態検出法を適用する主なターゲットの一つである胎児心拍変動の計測ならびにその周波数解析を行っている。胎児心拍変動は胎児子宮内環境の悪化を診断するための指標として分娩時に利用されているが、このような診断をしたい場合は必ずしも分娩時だけではない。突然起こる妊娠異常を早期に発見するためには周産期における定常的な計測が必要である。今回、研究代表者および研究協力者らが開発してきた胎児心拍変動計測技術を利用して、妊娠約20週から40週の胎児心拍変動データを3名の妊婦の協力のもと得ている。一般に病院内で計測された胎児心電位ならびに胎児心拍変動は特定の妊娠週のデータのみであり、周産期において継続的に胎児心拍変動を計測した例は世界的にもないと思われ、本研究で得られたデータは非常に学問的価値が高いと考えられる。また予備的な周波数解析を実施することにより、妊娠週数によって胎児心拍変動の周波数特性が経時的に変化することも見出している。胎児の成長に従って胎児心拍変動がどのように変化するかといったこれまで知られていなかった新しい知見が得られるならば、周産期医療の新たな道が開かれる可能性もある。 さらに、てんかん患者の脳波をターゲットにして、てんかん発作の予兆検出を機械学習によって行えることを確認した。てんかん発作の予兆として、現在、高周波振動(High Frequency Oscillation)や低周波活動(Epileptic DC(Slow) shifts)の存在が注目されている。本研究はまず何らかの予兆を機械学習によって見出し、これがどのような特徴をもった信号であるかを解析しており、上記2つのバイオマーカを含めてその成果は大変興味深いと考えられる。 以上により、本研究は概ね計画通りに進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は研究実績概要で述べたように、生体信号から状態変化を検出し、その背後にある生体システムの経時的変化を捉え、その先に至る状態を客観的に予測することを目的にしており、観測された生体信号から生体内部の状態変化を捉えることにより、生体の健康状態、延いては臨床現場における喫緊の診断に役立てようとするものである。また状態変化を捉えるだけではなく、状態変化の予兆を捉えることで様々な疾病の未病対策を可能としようという試みである。これを実現するために、以下のような研究実施計画を立てている。 第一に引続き胎児心電位の計測から、胎児心拍変動を測定することを継続的に実施するために、産婦人科外来でも簡便に計測できるシステム開発に取組み、世界に例を見ない周産期における胎児心拍変動のデータ取得ならびにその解析を先に進める。また当初の研究計画で予定されていた分娩時の胎児子宮内環境の悪化を診断するための指標"Reassuring FHR pattern"の重要なパラメータである胎児心拍数基線、胎児心拍数基線細変動、胎児心拍数一過性変動の3変数からなる状態空間モデルを用いた生体信号モデルを生成した上で、その状態変化を検出する方法に関する研究開発も並行して進める予定である。 第二にてんかん患者にとって重要なてんかん発作予測について、機械学習によるてんかん発作予測法の研究開発を進める。一般に機械学習による状態変化が検出可能な場合、その結果はブラックボックスから得られた結果でしかなく、信号中のどの特徴量がどのように変化したのかを説明することは難しい。そこで本研究では機械学習を異なる状態かどうかの判別のみに利用し、その後に様々な状態変化検出法を適用して信号の特徴量を捉えるという方策を取り、てんかん発作予測やその他のターゲットとする特定の信号の状態変化検出に関する研究を進める予定である。
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