研究課題/領域番号 |
23K03912
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
古谷 栄光 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (40219118)
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研究分担者 |
星野 光 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (30836292)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 静脈麻酔 / 個人差 / 擬似参照信号反復調整法 / 鎮静度制御 / 鎮痛度制御 / 機械学習 / 麻酔制御 / 自動調整 / データ駆動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,手術において鎮静・鎮痛・筋弛緩の3要素を適切に維持するための静脈麻酔制御システムについて,患者の個人差および個人内変動に応じた制御系の調整と信頼性の高い指標のない鎮痛度の制御を実現することを目的として,擬似参照信号反復調整法等のデータ駆動手法を用いた薬剤投与開始初期データに基づく制御系の調整法,麻酔維持時の患者の特性変化に応じた制御系の再調整法,および機械学習に基づく鎮痛状態の制御方法の研究を行う.
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研究実績の概要 |
本研究では,手術における静脈麻酔の自動制御システムについて,臨床応用の課題である患者の個人差および状態に応じた制御装置の調整と信頼性の高い指標のない鎮痛度の制御を,データ駆動手法を利用することにより実現することを目的として,鎮静薬投与開始初期データに基づく鎮静度制御系の擬似参照信号反復調整法を用いた自動調整法の検討,新しい静脈麻酔薬レミマゾラムによる鎮静状態を把握するための指標に関する検討,および機械学習による鎮痛状態の推定に関する基礎的検討を行った.得られた結果は以下のとおりである. 1. 静脈麻酔薬等の効果を表すモデルであるむだ時間を含む線形系と非線形関数が直列接続されている系において,臨床データから想定される範囲の患者の個人差を考えた場合,ほとんどの患者に対して擬似参照信号反復調整法を用いることにより適切に制御系の調整が可能であることを確認した. 2. 脳波に基づく鎮静度指標Bispectral Index (BIS)により静脈麻酔薬レミマゾラムの投与量不足を検出できる可能性があること,および年齢が高くなると低い効果部位濃度でBIS値が低下し,効果が現れるまでの時間遅れが大きくなる傾向にあること,性別による差はほぼないと考えられることがわかった. 3. 鎮痛状態を臨床データから推定するための基礎的検討として,生体から得られる時系列データから状態を推定する機械学習に適した方法について機械学習のためのベンチマークデータセットを用いて検討した結果,回帰型ニューラルネットワークに記憶セルを導入することで長期的な依存関係を学習できるように改良された長・短期記憶(LSTM)を適用した場合に,推定精度が高いことがわかった.今後さらにパラメータのチューニングを行うことで,精度の向上が可能かどうか検討するとともに,麻酔時のデータに適用して鎮痛状態の検出に利用できる方法を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,麻酔薬等の効果を表すむだ時間を含む線形系と非線形関数の直列結合で表される対象について,想定される個人差の範囲では擬似参照信号反復調整法で適切な制御系の調整が行えることが確認できている. また,新しい静脈麻酔薬レミマゾラムの効果を把握するための指標として,従来プロポフォール麻酔でよく用いられているBispectral Index (BIS)が投与量不足の検出について有効であると考えられること,および年齢等による個人差の傾向について確認できている. さらに,鎮痛薬の調整に必要であると考えられる生体の時系列データに基づく状態推定のための機械学習法について,ベンチマーク問題を利用してよく似た動作を区別するのに適した方法とパラメータの検討を行い,推定精度が高い手法の候補を選定できている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,擬似参照信号反復調整法による鎮静度制御系の調整について,実際の手術で行われる麻酔導入方法で得られるデータに基づく調整法の構成と有効性の確認を行う.手術時には通常速やかに麻酔導入するために麻酔薬の急速投与を行ってから,維持のための一定速度の投与を行うが,この場合にも導入時の短時間のデータから調整が可能であるか確認する.調整可能な場合には,臨床データを利用して,適切な調整が行えるかどうかを検討する. 次に,時系列データに基づく生体の状態の機械学習による推定法について,より精度よく推定を行うためのハイパーパラメータなどの検討を行ったあと,鎮痛薬投与速度の変更が行われている時間区間周辺の臨床データに基づいて,鎮痛薬投与速度の増減が行われる状態の学習を行う.まずは鎮痛薬投与速度が増加している状態に注目して鎮痛薬が不足している状態が検出可能かどうかを検討する. また,筋弛緩度制御系についても擬似参照信号反復調整法を用いて調整可能か検討するとともに,今年度までに開発した作用機序に基づくモデルを用いた個人差の同定についても並行して検討を行い,いずれがより適切に調整可能かを検討する.
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