研究課題/領域番号 |
23K03926
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
平山 尚美 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (70581750)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 熱電物質 / 有限温度 / 熱電輸送係数 / 不純物ドープ / 熱電発電 / 第一原理計算 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
環境低負荷な新規熱電材料の創成を理論主導で推進するため,マルチスケールモデリングにむけた基盤技術として,量子論に基づく電子状態計算から百万原子系の数値計算につなげる手法を確立する.本分野で用いられてきた第一原理計算は,計算コストの高さから,格子欠陥や結晶粒界などの不規則構造を扱いにくく,また,基本的には高温状態を解析できない.そのため,微視的構造と熱電物性の関係を説明できない場合も多かった.そこで本研究では,第一原理計算,分子動力学,機械学習を組み合わせた手法により,不規則構造や熱ゆらぎを考慮した数値計算を可能にし,微視的構造と電子状態の制御による熱電材料設計を実現する.
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研究実績の概要 |
環境低負荷な新規熱電材料の創成を理論主導で推進するため、マルチスケールモデリングに向けた基盤技術の確立を目指している。不規則構造や熱ゆらぎを考慮した熱電計算を実施するため、本年度はKKR-CPA法に基づく計算を実行した。 具体的には、2つの計算テーマに取り組んだ。一つは、熱電半導体Mg2Siに対するN型およびP型不純物(それぞれ、Sbと Ag)を微量ドープし、さらに格子欠陥を考慮した電子状態計算と熱電計算の実行である。ここで、フォノンによるキャリア散乱を考慮することで、有限温度効果も取り入れた。その結果、SbドープMg2Siの電気伝導率の実験値を定量的に再現し、さらに、電気伝導率とゼーベック係数の温度依存性を定性的に再現した。本成果については、応用物理学会第42回シリサイド系半導体研究会(2024年3月24日)で発表した。しかし、ゼーベック係数の絶対値が実験よりも小さいことや、格子欠陥によるキャリア散乱の寄与が、実験で観測されるよりも大きく見積もられるという問題が見られた。今後、さらなる精度向上にむけて検討を進める。 もう一つの計算は、Fe-Si-B 三元系の有限温度における電子状態およびフォノンエネルギーの計算である。第一原理計算から得られた全エネルギーにフォノンエネルギーを加えることで、有限温度における三元系の相図を作成した。現在、実験との比較など、本手法の精度検証を進めている。 以上のように、本年度は、有限温度における物性シミュレーションの実現にむけて、KKR-CPA法に基づくいくつかの計算を進めてきた。今後、計算精度を上げるとともに、機械学習に必要な教師データの取得方法を確立し、大規模計算に繋げていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械学習に必要な教師データの取得方法の確立を進めた。熱電計算の結果からは実験値との乖離が見られたものの、電気伝導率や系のエネルギーの計算は良好な精度を示しており、研究は、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
KKR-CPA法に基づく熱電計算の精度向上を目指して、Mg2Si以外の物質についても検証し、手法を改良する予定である。さらに、機械学習ポテンシャルを用いた分子動力学計算によるシミュレーションにも着手する。まず、さまざまな温度域の結晶について第一原理計算を行い、教師データを取得する。次に、Gaussian approximation potential法を使用して、原子間に働く力や全エネルギーを学習し、機械学習ポテンシャルを作成する。ポテンシャルの精度が悪い場合は、教師データの偏りを補正し、データセットを補強する。その後、構築したポテンシャルを用いて、格子欠陥や準安定相を含む多結晶体を計算機上で作成し、このような複雑な局所構造が熱電輸送特性に及ぼす影響の解明を目指す。
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