研究課題/領域番号 |
23K03927
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
王 冬 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (10419616)
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研究分担者 |
山本 圭介 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (20706387)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | トンネリング障壁高さ / 近赤外発光 / MIS型 / Ge-On-Insulator基板 |
研究開始時の研究の概要 |
近赤外測定技術をIoT社会の中で活用するには、低消費電力、コンパクトな近赤外光源が必要である。本研究では、金属-絶縁体-半導体(MIS)構造を用いて、絶縁膜/Ge界面の特性を制御し、界面からの運動量獲得現象を明確化して、間接遷移発光の効率向上機構を解明する。それを基に、絶縁膜材料の適正化によりキャリアのトンネリング障壁高さを制御し、Ge-MIS構造の間接遷移発光効率を最適化する。更に、Ge-on-Insulator基板上に素子を作製し、空間的なキャリア閉じ込め効果を利用して発光強度の増強を図る。最終的に、現状の10倍以上の発光強度を持つ近赤外発光素子を試作する。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究成果は以下の通りである。 (1) 本研究を実施するため、まずはキャリアのトンネリング障壁高さ(障壁高さ、以下同様)の測定方法を確立する必要がある。大気暴露無しで高品質SiO2 (10 nm)/GeO2 (~1 nm)/Ge構造を形成し、蓄積状態でのIV特性による絶縁膜に印加した電界強度を正確に把握して、Fowler-Nordheim(F-N)トンネリング障壁を形成した。IV特性の温度依存性を調査し、180 K以下での電流はF-Nトンネリング電流となることを明らかにした。F-Nモデルで評価した電子の障壁高さ(~3.3 eV)は理論値(3.5 eV)とほぼ一致している。これにより、障壁高さの測定方法を確立した。 (2) SiO2 (1~10 nm)/ GeO2 (~1 nm)/Ge構造を形成し、障壁高さの絶縁膜の膜厚依存性を調査した。SiO2の厚さ=10 nmの場合は障壁高さが理論値(3.5 eV)付近であるが、SiO2の厚さ=5 nmから障壁高さが徐々に減少し、SiO2の厚さが1 nmに薄くなると、障壁高さが0.6 eVまで低減した。その原因は、SiO2層が薄い場合、IV特性は界面トラップと界面付近のBorderトラップによるリーク電流に支配されると考えている。 (3) 以上の成果を踏まえ、絶縁膜の材料をSiO2からAl2O3に変更して、障壁高さの変化を調査した。Al2O3が十分に厚い場合、電子の障壁高さ(~2.8 eV)は理論値(2.8 eV)と一致している。SiO2と同様に、膜厚の減少に伴う障壁高さの減少も観測されているが、膜厚が1 nmに薄くなった場合、Al2O3 (~1 nm)/ GeO2 (~1 nm)/Ge構造は1.3 eVの電子障壁高さを有している。絶縁膜の材料の変更により障壁高さを制御することを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の核心内容は、キャリアのトンネリング障壁高さの評価および制御となっている。そのために、トンネリング障壁高さについての研究を前倒しした。2023本年度は、障壁高さの測定方法を確立した上、Ge-MIS構造のIV特性の絶縁膜厚依存性を調査することで、界面欠陥の障壁高さへの影響を明らかにした。さらに、絶縁膜の材料の変更により障壁高さを制御することを実証した。これは、研究計画当初の予想を上回っている。MIS型発光素子の金属電極の設計については、マスクレス露光装置の導入に伴い、2024年度から本格的に開始する。その後にGe-MISの受発光特性を系統的に考察することは妥当だと考えている。以上より、全体的に順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
1.MIS型発光素子の金属電極の設計:発光を引き出すため、光の回折現象を利用した網状の電極とする。また、GeO2/Ge界面への影響を最小限に抑えるため、熱蒸発法を用いてAl電極を形成する。 2.GeO2/Ge界面特性の制御と発光特性の考察:SiO2/GeO2の成膜条件によりGeO2/Geの界面準位密度を制御する。界面付近のボーダートラップ密度は、Al-PMAにより制御する。発光スペクトルの形状とピーク波長により界面からの運動量提供機構を解析する。 3.トンネリング障壁高さの制御と発光特性の考察:GeO2/Ge構造を形成後、その上に数 nmのSiO2、Si3N4、Al2O3、Y2O3、ZrO2、HfO2など様々な絶縁膜を成膜し、トンネリング障壁高さを制御する。2023年度に確立した障壁高さの評価方法を用いて実際のトンネリング障壁高さを測定し、MIS素子の構造を最適化する。 4.GOI基板の作製と評価:Smart-Cut法を用いてGOI基板を作製する。GOI基板の表面ラフネスは化学機械研磨(CMP)で制御する。Ge/Al2O3の界面特性をDLTS、Ge層の結晶性を顕微Photoluminescence (PL) 法で評価する。また、Etch-backやGe-on-Nothingなど技術を踏まえ、他のGOI作製方法も模索する。 5.GOI基板上のMIS型発光素子の作製と最適化:最終年度はGOI基板上のMIS型発光素子を作製する。薄いGOI基板を使用するため、キャリアは縦方向に閉じ込められ、発光再結合が生じる確率は大幅に増加と考えられる。また、発光強度のGOI表面ラフネスの依存性を考察すると共に、Si側に電圧を印加することで縦方向のキャリア閉じ込め効果を制御することで、高効率に発光することを期待できる。
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