研究課題/領域番号 |
23K03928
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
畠山 哲夫 富山県立大学, 工学部, 教授 (90222215)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | SiC / 第一原理計算 / MOS界面 / シリコンカーバイド / 双極子 / 欠陥 / バンド配列 / 伝導帯オフセット / 移動度 / 散乱 |
研究開始時の研究の概要 |
SiC-MOSFETの喫緊の課題はSiC-MOS界面の電子の低移動度である。これまでの研究により、高密度の界面双極子散乱体が移動度劣化の主要因の可能性が高いことが示されている。本研究では、界面の双極子の物理的実体の解明を目指し、第一原理計算による界面欠陥の電子構造の解析を行い、双極子散乱体の物理的実体とその形成機構について検討する。さらに、双極子散乱移動度理論に基づいたSiC-MOS界面移動度の物理モデルについて提案を行う。物理モデルを用いた計算と実験との比較により界面双極子の物理の深耕を行う。
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研究実績の概要 |
次世代省エネ電力用半導体であるSiC-MOSFETの重要な課題はSiC-MOS界面における電子の低移動度である。この問題に対処するため、低移動度の物理的要因を明確にすることが本研究の目的である。ホール効果による移動度測定と有効質量近似を用いた擬二次元電子ガスの散乱理論による移動度の計算から、高密度な界面電気双極子散乱体が移動度低下の主要な原因であることが示されている。本研究は、界面の電気双極子散乱体の物理的実体とその起源を明確にすることを目指している。
当該年度には、4H-SiC/SiO2界面におけるバンド配列(伝導帯オフセット)および界面双極子の形成を第一原理計算に基づき理論的に検討した。SiC基板の面方位や界面の化学結合が異なる複数のケースについて計算を実施した結果、エネルギー的に安定な結合から構成される界面構造に注目し、伝導帯オフセットの値はSi面で2.40 eV、C面で1.43 eV、m面で1.30 eVの値を得た。この面方位依存性はXPSによる実験結果と一致している。さらに、界面の電界密度から見積もられる界面双極子の面方位依存性と伝導帯オフセットの相関が存在することを示し、界面における結合種と大きく相関する界面双極子がバンドオフセットの決定要因であることが示された。
4H-SiC/SiO2界面においては、C-C結合を含む欠陥構造が形成される確率が高いことが第一原理計算によって示されている。この欠陥が界面双極子の形成に与える影響を調査するため、C-Cを含む界面構造の安定性を評価した。その結果、Si-C-C-Si構造が安定であることが示された。今後は、界面双極子と欠陥の相互作用についての検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究予定として、SiC-MOS界面における電荷移動(電気双極子形成)及びSiCと酸化膜のバンド配列について、第一原理計算を活用して解析することを計画していた。研究実績に示されるように、予定していた研究項目はすべて実施され、電荷移動による界面双極子形成およびバンド配列に関して具体的かつ定量的な説明が可能な研究成果を得ることができた。このため、研究は概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定として以下の内容を実施する。 (1)第一原理計算を活用して、界面欠陥と界面の電荷移動の関係、及び界面双極子との相互作用を調査し、SiC MOS界面の移動度を制限する双極子欠陥の形成メカニズムを解明することを目指す。 (2)SiC MOS界面の移動度に関する基礎研究の社会実装を目指し、SiC MOSFET開発に必須のツールであるTCADで使用するSiC-MOS界面の移動度の物理モデルを考案する。
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