研究課題/領域番号 |
23K03931
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
足立 伸太郎 京都先端科学大学, ナガモリアクチュエータ研究所, 助教 (30761233)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | トポロジカル物質 / 高圧力 / 電界効果トランジスタ / 電気二重層トランジスタ / イオン伝導 / 電界効果 / 高圧 |
研究開始時の研究の概要 |
トポロジカル物質は工業製品の省エネ・高速動作化に貢献できる材料として期待されているが、候補物質毎に「どの程度ドーピングし、どの程度の応力や磁力を印可すればトポロジカルな性質を抽出できるのか?」という基本的な実験結果が不足している。本研究では、圧力効果と電界効果を融合した物性制御・測定技術をトポロジカル候補物質に適用し、多次元(温度、圧力、電界、磁場等の)状態図を完成させる。
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研究実績の概要 |
トポロジカル候補物質において、そのトポロジカルな性質を抽出するための実験手法として本研究では電気輸送特性測定を用いる。電気輸送特性とは、対象物質の電気抵抗率やHall係数等を意味し、これらの物性値がドーピング量、温度、磁場、圧力によってどのように変化するかという知見がトポロジカル物性を抽出・制御するために必要である。これらの測定を進めるために下記実験を行った。 (1)まず、広範な圧力領域における測定に対応するために、ギガパスカル(GPa)オーダーという非常に高い圧力を試料に印加するためのセットアップを構築した。高圧力発生のために専用のピストンシリンダー型圧力セル(略称PCC、最大印加圧力2GPa程)を用いて、その中にある試料の電気抵抗測定、Hall係数測定を実行するための機器や回路を準備した。 (2)本研究で重要となる各試料のドーピングレベル制御には電界効果を適用する。本研究独自の手法として、高圧力発生セルPCC中で電界効果実験を行えるようにし、常温環境だけでなく絶対温度5K程度までの低温環境において、圧力効果、電界効果、磁場効果を利用した物性抽出・制御をするための準備をし、テスト測定を行った。 (3)電界効果実験のために以前から使用していたイオン液体は数GPaの高圧力下では固化してしまい、正負のイオンの移動・分布制御による電界効果が制限されることがわかった。この問題を克服するために、数GPaの高圧力下でもイオン伝導性を示す固体物質の存在に着目し、これを電界効果トランジスタ構造の誘電層そして場合によってはこれを高圧力印加のための圧力媒体として機能させる新手法を編み出した。この新手法によって、これまでより広い圧力領域・ドーピングレベル量による物性制御が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から進めてきた高圧力発生用ピストンシリンダー型セル(PCC)や電気輸送特性の測定回路・機器の準備状況はおおむね順調である。必要な電子機器や冷凍機を令和5年度内に移設、テストできたことで測定の自由度が高まった。一方、現状の測定手法では歩留まりが悪い点が課題であり、トライアンドエラーによる模索中の部分も多い。本研究計画の鍵となる電界効果の実験については、常温・常圧力では再現性良く実行できる状況で、高圧力印加時や低温における実験技術を向上させることが必要である。予想外の進展としては、数GPaの高圧力下でもイオン伝導生を示す固体物質が複数存在し、それが電気二重層トランジスタの誘電層として機能することがわかった。これにより、イオン液体を用いた方法では電界効果の利用が困難であった2GPa以上の高圧力下であっても外部電圧を用いたキャリア密度制御が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き高圧力発生セルPCC試料空間内に電気二重層トランジスタ構造の電界効果セットアップを構築し、試料に対して圧力効果・電界効果・磁場効果(+低温)を印加した複合環境下でのトポロジカル相抽出・制御を行う。圧力効果によって格子定数の減少や構造相転移が起こったとき、その境界で電気抵抗等の値に飛び等が現れると予想され、その観測を目指す。電界効果ではゲート電圧の大小によりドーピング量を、そしてゲート電圧の正負によってドーピングするキャリアの正負(ホール又は電子)を直接制御し、各種物性のキャリア密度依存性を網羅的に観測する。磁場効果の中で特に重要な実験である量子振動の観測によってFermi面を確定させ、Hall係数測定によってキャリア密度の定量化を行う計画である。これら圧力効果・電界効果・磁場環境を可能な限り組み合わせた実験を行い、複合環境下におけるトポロジカル相の電子状態を明らかにする。
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