研究実績の概要 |
本研究全体の実施計画は以下の通りである。本研究では,現状の1chのQ(t)メータを改良(x,y座標に配置する下部電極面積を小さくし,高位置分解能化を図る)し,1次元(x座標)Q(x,t)メータ,もしくは,2次元(x,y座標)Q(x,y,t)メータを実現することが目標である。具体的には以下の①から⑤を実施する。 ①15chのQ(x,t) メータを製作し,針‐平板電極系シリコーンゲル試料の電流分布と蓄積電荷分布について調査する。②15chのQ(x,t) メータを用いて,針‐平板電極系シリコーンゲル試料の温度特性(室温~100℃)を測定可能とする。③測定中にトリー等が発生し,絶縁破壊が発生しても装置が破損しないための保護回路を設ける。④15chのQ(x,t) メータを利用して,シリコーンゲル中の電流分布と蓄積電荷分布の周波数特性を調査する。商用周波数(50Hz)から直流(1mHz以下)までの周波数応答を測定し蓄積電荷量を評価する(温度特性を含む)。⑤1次元15ch-Q(x,t) メータを2次元60ch-Q(x,y,t) メータに展開し,針‐平板電極系シリコーンゲル試料のトリー進展についての調査を行う。 現在,①から③を15ch-Q(x,t)メータを製作した。今後2年間は,④と⑤の マルチチャンネルのQ(x,t)およびQ(x,y,t)メータの製作を平行して行う予定である。 昨年度の実績について,①にあたる電極の高分解能化は,市販の表面実装部品用の基板(SMTコネクタ変換基板:0.3-0.8mm間隔の電極)を利用して行った。シリコーンゲルの他に高粘度シリコーンオイルについて実験を行った。②の測定については,低温乾燥機などを利用して,実験を行っている。③については,オペアンプ(LT1793)を利用したインピーダンス変換器とスパークギャップを利用した測定部と保護回路を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究①から⑤を進めるにあたって現状のハードウエアの部分の準備は上記の予定の通り進めてきた。ソフトウエアの面の研究実績とその課題を以下に示す。本研究は,マルチチャネルのQ(t)メータ[15ch-Q(x,t)メータ,60ch-Q(x,y,t)メータ]のハードウエアを開発して,かつ,試料内の電荷蓄積分布(各チャネルでの蓄積電荷量)についても測定データを得られるようにしたいと考えている。その中でソフトウエアとしては,各チャネルで測定したQ(t)波形から試料内部の蓄積電荷を算出する方法が重要となる。空間電荷分布とQ(t)が測定可能な程度の厚さのある試料(200μm)を用いて,両者の並列同時測定を行い,Q(t)波形から蓄積電荷量を測定する方法について研究を進めている。Q(t)法の有用性は,高精度電流測定が可能である点である。一方,空間電荷分布測定では,正味の試料内の電荷分布を測定しており,正負の電気伝導に寄与する電荷が同じ位置にある場合には観測されない。そこで,現状では,試料内部での蓄積電荷を考慮した等価回路(Rs:平衡もれ電流を考慮した抵抗分,Cs:試料の静電容量成分,Ra-Ca:試料内へ電荷蓄積,吸収電流成分)の過渡解析を行いQ(t)波形から等価回路Caに蓄積する電荷量を蓄積電荷とする方法がよいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,マルチチャンネルのQ(t)メータ[15ch-Q(x,t)メータ,60ch-Q(x,y,t)メータ]のハードウエアの製作を進める。また,厚いフィルム試料(厚さ200μm,ポリプロピレンフィルム)を利用した空間電荷分布とQ(t)の同時測定から等価回路によるシミュレーションを行い,1チャンネルのQ(t)波形から蓄積電荷を算出するソフトウエアの構築を進める。さらに,構築したソフトウエアをマルチチャンネルに展開しして,マルチチャンネルのQ(t)メータのデータ処理を行い,針-平板電極等の蓄積電荷の分布を算出する。2024年度は15chのマルチチャンネルのQ(t)メータについて上記内容を達成したい。
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