研究課題/領域番号 |
23K03934
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
首藤 浩文 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, 主任研究員 (00912940)
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研究分担者 |
磯上 慎二 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, 主任研究員 (10586853)
増田 啓介 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, 主任研究員 (40732178)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 負のスピン分極 / ハーフメタル材料 / ホイスラー合金 / 磁気抵抗効果 / スピントランスファートルク / 磁気記録 / 負のスピン分極率 / マイクロ波アシスト |
研究開始時の研究の概要 |
スピントロニクスデバイス技術の進展に伴い、新規デバイス構造・デバイス動作を実現できる「負のスピン分極材料」の重要性が高まっている。しかしながら、これまでのスピントロニクス材料の研究は正のスピン分極材料に集中しており、負のスピン分極材料は圧倒的に未開拓である。高い負のスピン分極を有する材料の開発とその学術的理解を目標として、第一原理計算、スパッタ法による膜の作製、デバイス作製と評価を行う。これにより、次世代のHDD向けスピントルク発振素子といった応用に資する負のスピン分極材料の開発とその有用性の実証を行う。
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研究実績の概要 |
負のスピン分極を有する材料は、スピントロニクスデバイスの新たな構造・動作を可能にし、その性能を飛躍的に高めることができる。Mn基ホイスラー合金であるMn2VGa、Mn2VAlははmajority-spin stateにギャップを持つ電子構造を有し、高い負のスピン分極を有することが予想されており、負のスピン分極材料の有力な候補である。本研究では、これらの材料に関して、高品質な膜の作製とデバイス化による負のスピン分極の実証に取り組んでいる。 Mn2VGaに関して、組成と膜の規則化の関係を調べ、Mn-rich組成において、規則度の向上と規則化温度の低減が起こることが分かった。異常分散X線回折, 透過電子顕微鏡などの手法により膜の解析を行い、各サイトにおける原子の存在量を同定した。さらに異方性磁気抵抗効果の測定と解析により、異方性磁気抵抗効果の符号が電子状態の計算と矛盾しないことを示し、負のスピン分極が発現していることを示唆する結果を得た。 次にMn2VGaを用いた巨大磁気抵抗効果素子の作製に取り組んだ。Mn2VGaは加熱することによりAgとの相互拡散が生じるため、一般に使用されるAgの下部電極は使用できないことが分かったた。様々な下部電極の構造を検討し、Wを用いることでこの問題を解決できることを見い出した。Mn2VGa/Ag/CoFeの構造を有する巨大磁気抵抗効果素子は負の磁気抵抗効果を示し、Mn2VGaの負のスピン分極が実証された。また得られた負の磁気抵抗比はこれまで報告されたものの中で最大であり、Mn2VGaの高い負のスピン分極を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、巨大磁気抵抗効果素子におけるMn2VGaの負のスピン分極の実証に成功し、大きな負の磁気抵抗比を示すことができた。ホイスラー合金を用いた巨大磁気抵抗効果素子における負の磁気抵抗効果の報告は世界初であり、研究のマイルストーンを達成することができた。デバイスの作製においては、AgとMn2VGaの相互拡散が問題となったが、Wを用いてこの問題を解決できたことは研究の進捗にとって大きな役割を果たした。成膜プロセスにおいては、Mn2VGaの成膜によって装置の内壁に膜剥がれが生じてしまい、しばしば実験を停止してチャンバーを開けて清掃を行う必要があった。この問題を解決するため、防着版を設計して装置に追加し、研究の効率化をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
Mn2VGaに関しての研究を進めるとともに、Mn2VAlについての検討を行う。また、これまでのところ磁気抵抗効果のみに注目しているが、スピントランスファートルクを調べる実験を行う。負のスピン分極材料のメリットの一つとして、生じるスピントランスファートルクの方向を、一般の正のスピン分極材料に対して逆にできるということがあり、この特性を生かした新規素子構造が提案されている。この観点から、スピントランスファートルクを調べることは重要である。 これまで、MgO基板を用いたエピタキシャル膜を用いた実験を行っているが、今後は、より応用に近い多結晶膜の実験を行う。併せて、応用に向けて必要となるプロセス温度の低減にも取り組む。
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