研究課題/領域番号 |
23K03940
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
阪東 一毅 静岡大学, 理学部, 准教授 (50344867)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 有機結晶微小共振器 / 非対称構造 / 放射レート / 空間依存性 / パーセル効果 |
研究開始時の研究の概要 |
ファブリ―ペロー型の有機結晶微小共振器について、活性層内の片方端面のみに間隙層を導入した非対称構造を溶液成長法により作製する。このような共振器では有機結晶と間隙層の共存によって共振器内部が非対称構造となるため、光電場の定在波形状も非対称性を持つようになる。共振器の自然放射レートは空間電場振幅に比例するため、間隙層の存在は共振器の表裏で放射レートの空間非対称性をもたらすため、発光測定によりこの空間依存性が可視化できるようになる。cw発光スペクトル測定では共振器試料の表裏で発光強度の変化が期待され、時間分解発光測定では表裏で放射寿命の変化が期待される。
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研究実績の概要 |
共振器内の構造に非対称性を導入した有機結晶微小共振器構造を作製し、その励起子放射レートの活性層内空間依存性を調べた。2枚の同じ誘電体多層膜ミラーを対向させ、有機結晶層と間隙(空気層)をそれぞれ数百nmの膜厚で挿入した。空気層の存在のため、ミラーと接する有機結晶界面(表側)では定在波が腹、空気層と接する有機結晶界面(裏側)では定在波が節となる状況を作ることができ、これを表裏で励起すると共振器結合定数の違いから、発光強度に差異が発生することが期待できる。 本年度は最も有機結晶の吸収係数が大きな波長(約395nm)の励起レーザーを新たに導入し、界面に局所的に生成した励起子からの共振器結合定数の空間依存性を反映した発光を観測した。その結果、明瞭に表裏励起で異なる発光スペクトルが得られ、共振器による発光増強効果を取り入れた発光スペクトルの計算結果との比較も行った。おおむね実験と計算が一致することが確認できた。 その一方で、非対称構造を共振器内の空気層がどちら側に導入されたのかを判別する方法がこれまでなく、前提とした計算が実験結果の表裏と完全に対応付けるのは難しかったが、反射スペクトルによって判別する方法を新たに確立した。これまで透過スペクトルで共振器構造を把握していたが、透過スペクトルでは表裏の違いは判別できなかった。一方で反射スペクトルは活性層の有機結晶が励起子吸収帯域で強く吸収されるため、表裏で違いが生じる。この手法を用いて表裏を判別する方法を考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非対称共振器を作製し、励起光源として395nmの半導体レーザーを新たに導入して表裏励起での発光測定を行った結果、表裏で非対称構造を反映した強度の違いが確認された。また、転送行列計算によって導出したフレネル係数を用いて発光スペクトルを計算し、おおむね良い一致を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
非対称共振器構造作製における新しい手法を試みる。共振器内に有機結晶を再結晶化したあと、非対称構造の基になる空気層を導入するが、これまでの手法では空気層導入の際に結晶にクラックが入るなどの問題が生じることが多かった。この手法についてはすでに有効性が確認されつつあるため、本格的にこれを用いた試料作製法で非対称共振器構造を作製する。 また、パルスレーザー励起による発光寿命の計測を試み、表裏励起によって寿命が直接変化するパーセル効果の直接観測を試みる。
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