研究課題/領域番号 |
23K03945
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
大谷 直毅 同志社大学, 理工学部, 教授 (80359067)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
|
キーワード | 窒化炭素 / 希土類 / ユウロピウム / テルビウム / 発光効率 / バインダー材 / 分散溶媒 / 光触媒効果による水分解 / 蛍光材料 / 希土類ー窒化炭素ハイブリッド / 結晶構造 |
研究開始時の研究の概要 |
窒化炭素に希土類をドープして作製する新蛍光材料である希土類ー窒化炭素ハイブリッド材料の最適な作製条件を検討する。未知の材料系の結晶構造と発光特性の因果関係を明らかにするとともに将来のLED応用の可能性を検討するため、新蛍光材料をUV-LEDに塗布する素子作製方法についても検討を行う。新傾向材料の作製条件および物性評価という学術的研究をメインとして、将来の産業応用を視野に入れている。
|
研究実績の概要 |
窒化炭素をベースに希土類を添加するRGB光三原色の蛍光材料の合成を行っている。令和5年度は、ユウロピウムを添加する赤色蛍光材料とテルビウムを添加する緑色蛍光材料の研究開発を中心に行った。 赤色蛍光材料に関しては、前年度の成果(特許出願中)を国際会議にて発表し、査読付き国際論文誌に掲載された。また、国際会議でのディスカッションでの指摘を受け、焼成温度とユウロピウム添加量依存性を詳細に調べた。その結果、発光特性を最適にする素子作製条件を特定することができた。また、XPS解析により結晶構造の変化を推定できるデータが得られた。この成果は、今年度の半導体物理国際会議(7月、カナダ、オタワ市)にて発表予定である。 緑色蛍光材料に関しては、ベースとなる窒化炭素にベンゾグアナミン単量体と二量体を用いて比較を行った。もっとも強い発光強度が得られるテルビウムの混合比は、単量体と二量体で大きく異なることがわかった。この理由は、テルビウムに配位するベンゾグアナミンの配位数が単量体では10、二量体では8と推定できることがわかった。この結果は本年12月の国際会議(IDW、札幌)にて発表予定である。以上のことから、赤色および緑色蛍光材料に関しては、発光強度を最適にする作製条件が特定され、結晶構造についても推定できた。 塗布法による成膜条件のため、窒化炭素の良好な分散条件の検討も行い、電流注入での青色発光を確認した。これは査読付き国際論文誌に投稿中。またバインダー材への分散特性と静電噴霧法による成膜の検討を行い、良好な薄膜が得られる一定の知見が得られた。これは本年6月の国際会議(M&BE、松江)にて発表予定である。 一方、窒化炭素の他の応用である光触媒効果による水分解では、カルシウム添加により触媒効果が大きく改善されることがわかった。この結果は査読付き国際論文誌に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は窒化炭素をベースに希土類を添加するRGB光三原色の蛍光材料の合成であり、将来にマイクロLEDなどへの応用可能性を検討するものである。したがって、発光効率を改善することが必要となり、そのために結晶構造を特定することが必須と考えられる。また、紫外線あるいは青色LEDに赤色および緑色蛍光材料を塗布する必要があるため、塗布法による成膜が可能であることも必須となってくる。 初年度である令和5年度では、上記のように、赤色蛍光材料は発光効率の改善が行われており、その結晶構造は、直接観測はできていないが、XPS解析によりユウロピウム周辺にアミノ基が集まっていることを示唆する結果が得られた。 緑色蛍光材料に関しては、発光効率を最大とするテルビウムと単量体および二量体の比率を明らかにした。またその混合比と発光効率の関係から窒化炭素の配位数を推定することができた。 以上の成果は、発光効率の改善および結晶構造の特定についてかなり前進しており、3年間で終える予定を早期に解決できる可能性を示している。 一方、塗布法による成膜については、窒化炭素のみの青色発光ダイオードの試作、またバインダー材中の分散特性を検討しており、一定の成果が得られたとともに問題点もいくつか明らかにした。静電噴霧法では膜厚の均一性が不十分であり、蛍光材料の合成条件にも強く依存することがわかった。現時点の成果を国際会議(6月、松江)にて発表しその後に論文投稿する。
|
今後の研究の推進方策 |
希土類添加の窒化炭素の発光効率の改善には一定の成果が得られた。しかしながら、実用には70%以上の発光効率が要求されておりまだ十分ではない。ひとつの原因として、窒化炭素の青色発光が残っており、これは窒化炭素から希土類へのエネルギー遷移が十分に行われていないことを示している。この問題の解決手段として圧力合成を検討している。いまの合成パラメータはアニール温度と希土類の添加量の二つのみである。さらに高圧力をパラメータに加えれば、希土類と結合する配位子(窒化炭素)が増えてエネルギー遷移量が改善され発光効率の向上が期待できる。さらに単結晶の合成も期待できるので、XRDによる結晶構造の観測も可能になるかもしれない。 研究計画にはなかったが、新しい蛍光体として、希土類を含むコロイド量子ドットの作製を開始した。ひとつはペロブスカイトをベース材料としており、もうひとつはInP系である。まだサイズにばらつきがあるが、改善できれば発光効率の大幅な上昇が期待できる。さらには量子井戸的な超薄膜の合成も行っており、当研究室の材料合成の能力をフル活用して多角的に作製と評価を行っていきたい。 バインダー材の分散性は、膜の平坦性と材料分散の不均一性が問題として浮かび上がってきた。分散媒の最適化はバインダー材を薄める溶媒の種類と濃度が鍵になると思われる。静電噴霧法は材料の無駄を少なくできるメリットはあるが、使用できる溶液が限られるので、スピンコートなども試してみる予定である。
|