研究課題/領域番号 |
23K03946
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
松浦 秀治 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (60278588)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | p型4H-SiC / 高濃度Al添加4H-SiC / 電気伝導機構 / ホール係数 / バンド伝導 / ホッピング伝導 / IGBT / Al添加4H-SiC / XRD |
研究開始時の研究の概要 |
新幹線N700S系で用いられているSiC metal-oxide-semiconductor field-effect transistor (MOSFET)よりも1桁以上の低消費電力のSiC insulated-gate bipolar transistor (IGBT)を目指し、nチャネルIGBTのコレクタ層となる高濃度Al添加4H-SiCの抵抗率低減に向けた電気特性の評価を行う。 高濃度Al添加4H-SiCの研究は世界ではほとんど行われていない状況で、Siでは観測できていない電気特性を我々はこれらのSiCで観測しているため、それらの物理モデルを構築する。
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研究実績の概要 |
SiC半導体を用いたnチャネルInsulated Gate Bipolar Transistor (IGBT) のp型4H-SiC基板(コレクタ)の低抵抗率化のためには、アクセプタであるAlを高濃度添加する必要がある。そこで、Alを高濃度添加した場合のp型4H-SiCエピ膜の抵抗率の温度依存性とホール係数の温度依存性を測定し、電気伝導機構を調べた。低温領域での電気伝導機構はホッピング伝導機構であり、高温領域ではバンド伝導であった。また、ホール係数は、ホッピング伝導領域で負であった。一方、バンド伝導領域のうち、高温側では理論どおりにホール係数が正であったが、低温側では負の領域も観測された。 p型半導体のバンド伝導領域では正孔が価電子帯を伝導し、ホール係数は正になると考えられているが、特異な現象(バンド伝導領域の低温側で負になること)を説明できる物理モデルとして、価電子帯以外にバンド伝導できるエネルギーバンドとしてAlアクセプタの第1励起準位がミニバンドを形成し、このミニバンドのエネルギー的に下半分(伝導帯下端付近と類似)ではホール係数が負、上半分(価電子帯上端付近と類似)ではホール係数が正になるモデルを提案した。これに関する論文をJournal of Applied Physicsに掲載した。 高濃度Al添加4H-SiCエピ膜の電気特性と、エピ膜を成膜させる4H-SiC基板の[0001]面から[11-20]方向へのOff-cut角(2°、4°、8°)との関係を調べるために、エピ膜の抵抗率とHall係数の温度依存性の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は令和5年度から令和7年度の3年間で、バンド伝導領域でHall係数が負になる物理モデルの構築を計画していた。令和4年度までの研究では、高濃度Al添加4H-SiCにおけるホッピング(最近接ホッピング:NNHと可変領域ホッピング:VRH)伝導領域でHall係数が負になる原因として、ホッピング伝導の場合キャリア(電子と正孔)がホッピングできる先の局在準位の密度(電子と正孔のホッピング確率)の違いで決まることを突き止め、論文に発表した。一方、バンド伝導の場合、キャリアが伝導するのは非局在準位間(エネルギーバンド中)のため、上記の考え方が適用できない。そこで、Alを高濃度添加したため、価電子帯以外に、アクセプタの第1励起準位がミニバンドを形成し、このミニバンドのエネルギーと運動量の関係式から、Hall係数の符号が正および負になる物理モデルを提案した。これらの内容はJournal of Applied Physicsに掲載されたので、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、次の2テーマを引き続き行う。 A.高濃度Al添加4H-SiCの成長条件で異なる電気特性の物理モデルの構築:異なるAl濃度の気相成長法(CVD法)による高濃度Al添加4H-SiCエピ膜の電気特性と、エピ膜を成膜させる4H-SiC基板のOff-cut角(2°、4°、8°)との関係、及び成長温度との関係を調べ、エピ膜の抵抗率とHall係数の温度依存性を解析し、電気伝導機構を検討する。一方、2次イオン質量分析法(SIMS)で求められる(実際に添加された)Al濃度とHall効果測定から求められるAlアクセプタ密度との関係(活性化率)、X線回折法(XRD)による結晶性と活性化率との関係を調べ、これらを説明できる物理モデルを構築する。これらの結果から、高濃度Al添加4H-SiCの抵抗率を低減できる可能性を探る。 B.VRH伝導でのMottプロットの傾きと結晶性との関係を説明できる物理モデルの構築:低コスト化が見込まれる昇華法や溶液法による高濃度Al添加4H-SiC膜の電気特性を詳細に調べる。ここで、昇華法や溶液法による高濃度Al添加4H-SiCの結晶性はCVD法より良くないため、CVD法でのエピ膜より低いAl濃度からVRH伝導が現れる。これらの実験結果から、VRH伝導でのMottプロットの傾きと結晶性との関係を説明できる物理モデルを構築できる可能性を探る。また、n-channel IGBTのコレクタ層への可能性も検討する。
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