研究課題/領域番号 |
23K03951
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小田島 聡 北海道大学, 工学研究院, 特任教授 (20518451)
|
研究分担者 |
笹倉 弘理 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90374595)
鍜治 怜奈 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (40640751)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 単一光子源 / 金属共振器 / 多光子状態 / 波長制御 |
研究開始時の研究の概要 |
光量子による量子情報通信・量子暗号技術の確立に向け、高純度かつ十分に波長制御された個数状態光を、安定的に長期間供給する光子源の開発を行なう。半導体量子ドット試料に微細加工を施し量子ドットの個数制御を行なうことで、単一光子としての純度を保証する。本構造にファブリ・ペロー型共振器構造を付与することで共振波長を持つ光子を選別し、光子の均一化を図る。更には波長制御された光子源を複数並列動作させることにより、光子源の多チャンネル化を実現し多光子状態生成への展開を図る。本光子源の実現により、様々な量子ノードを既存の光ファイバー網で繋ぐ量子ネットワーク構築に貢献する。
|
研究実績の概要 |
本研究では高純度かつ十分に波長制御された個数状態光を、安定的に長期間供給する光子源を実現することを目的としている。発光源材料として半導体QD試料を用いるが、QD試料に微細加工を施すことで巨視的数のQD群から少数個のQDを抽出することを可能にし、これにより安定的な個数状態光を実現する。波長制御においてはQD微細構造に金属共振器構造を付加することにより、ある特定の波長域にある個数状態光のみフィルタリングする。更には応力印可によるQD発光波長および共振波長のコントロールを試みる。このように作製された波長均一性が高い光子源を並列駆動し位相制御することで、複数の光子源をまたぐ量子相関光子状態を実現することを最終的に目指す。研究計画のうち、「金属共振器構造の作製とその構造最適化」と「発光波長・共振波長のチューニング技術の確立」の2点は、それぞれ研究期間前期・後期における重要課題である。前者「金属共振器構造」についてはn-GaAs半導体試料上にAu半透過膜とAl2O3誘電体層によるファブリ・ペロー型共振器を作製することで、共振器による波長選択性を検証した。本構造により波長選択性は確認されたものの、フィルタリングによる制限帯域幅・透過光強度において十分な結果が得られたとは言えず、今後更なる考察と共振器構造の最適化が必要である。これに対し「発光波長のチューニング」においては、PMN-PT圧電素子を用いたGaAsQD光子源を作製することで、応力印可により最大4.5meV程度の発光エネルギーシフトを得るに至っている。本内容については、令和5年度において学会発表1件・国際会議発表1件を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的達成のため、研究期間内に以下の4項目を遂行する計画である。 ①半導体QD微細構造に対する金属共振器構造の作製と構造最適化、②金属共振器構造による発光再結合寿命の短縮化と発光波長均一化の検証、③金属共振器光子源並列動作による多チャンネル化と安定的多光子状態生成の探求、④圧電効果によるQD発光波長および金属共振器共振波長の変調 このうち①は研究の根幹をなすものであり、主に研究期間前半に集中的に行う必要がある。今年度(令和5年度)においては、発光波長の帯域が広いn-GaAs半導体試料上にAu半透過膜とAl2O3誘電体層からなるファブリ・ペロー型共振器を作製し、共振器としての動作検証を行った。共振器のフィルタリングによる透過光波長分布の狭帯域化が観測されたが、当初目指していた狭帯域化に比べ十分な結果とは言えず、本研究項目においては「やや遅れている」と判断せざるを得ない。その一方で④圧電効果に関する研究においては、十分な結果を得るに至った。PMN-PT圧電素子上にGaAsQD試料からなる柱状微細構造を散布し、Al2O3膜によりGaAsQD微細構造を固定化することで、QD光源に十分応力が印可される構造を作製した。応力印可による発光波長シフトも観測されたことから、④においては十分な結果が得られたと判断している。当初の計画では研究期間後半に行う予定であったものを前倒しで行ったことから判断して、④については「当初の計画以上に進展している」と結論付けている。これら①と④の進捗状況を総合的に判断することにより、全体としては「おおむね順調に進展している」と結論付けた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的達成のための4項目のうち、①半導体QD微細構造に対する金属共振器構造の作製と構造最適化、は最重要課題である。令和5年度に続き令和6年度においても本項目に集中的に取り組み、共振器構造の最適化を図る。 共振器構造として(A) n-GaAs半導体試料を用いた共振器構造の最適化、(B) GaAsQD試料による共振器付きQD光源の開発、を行うが、(A)作製に用いるn-GaAsは発光波長として860nm~1400nmと広域であるため、共振器構造の各種パラメータと共振波長の関係性を明確にするのに都合が良い。数値解析に基づいた設計と、実際に作製した共振器による測定を比較検討し、共振器としての最適化を図る(ターゲット波長へのコントロールとフィルタリング)。この(A)n-GaAs試料での知見を活かし、(B)GaAsQD試料において共振器構造を作製する。ここではターゲット波長1000nm付近、帯域幅として±20nm程度を設定する。当面は(1)試料同一面での励起・発光デバイスとするが、(2)裏面励起・表面からの光子取り出しによる透過型発光デバイスについても検討する。(1)においては圧電素子上にデバイス化することが容易であり、研究項目④圧電効果による発光波長・共振波長の変調へと繋がる。一方(2)の透過型発光デバイスにおいては光ファイバー組み込み型として開発することが可能であり、(1)(2)それぞれの利点があるため現時点では一方のみに限定せず研究を遂行する。研究項目①金属共振器構造の最適化にある程度見通しが立った時点で、②金属共振器構造による発光再結合寿命の短縮化と発光波長均一化の検証、③金属共振器光子源並列動作による多チャンネル化と安定的多光子状態生成の探求、に取り組む。
|