研究課題/領域番号 |
23K03972
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
岡本 卓 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (40204036)
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研究分担者 |
横井 直倫 公立千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (60353223)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ランダムレーザー / 光トラッピング / ランダム媒質 / 微粒子光散乱 / レーザー発振制御 / 時間領域差分法 / 光シミュレーション / レーザー構造設計 |
研究開始時の研究の概要 |
不規則な共振器構造をもつランダムレーザーは、画像ノイズが発生しにくいレーザーとして注目されている。しかしながら、現状では発振効率が低い、制御が難しいなどの問題点がある。本研究では、光トラッピングを用いて発振状態の媒質構造を直接かつ実時間で制御するという新たな手法により、ランダムレーザー発振にもっとも適した媒質構造は何かを探る。本手法はレーザー媒質を構成する微粒子の位置制御により発光状態を自在に変化させる技術へとつながる。最終的に、発振効率が高く、かつ用途に応じた発光制御が可能なランダムレーザーの実現を目指す。
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研究実績の概要 |
光トラッピング技術を用いた高効率かつ発光制御可能なランダムレーザーの実現を目指し、まずは空間光変調器 (SLM) による微粒子トラップ用光波パターンの生成可能条件を探った。その結果、波長671nmのトラップレーザー光を40×、NA:0.5の対物レンズを通して試料に照射する場合、中心点から半径約10μmの範囲内ではトラップ光点を形成できることが分かった。 次に、いくつかのトラップパターンでランダムレーザー媒質中の微粒子を光トラッピングし、発光実験を行った。エスミール(エタノール68%、水32%)を溶媒としたローダミン590溶液中に酸化チタン粒子(粒径250nm、体積充填率0.3%)を分散させた懸濁液を薄膜状(0.2mm厚)に形成したものを試料とした。その下面よりトラップレーザー光(出力800mW、1点当たりの光強度5~30mW)を連続照射した。そして、試料上面より波長532nm、パルス幅10ns、パルスエネルギー 12~30μJの励起光を連続パルス照射した。その結果、1) トラップ点を横一列に1~4点配置(間隔6.7μm)した場合、2点配置で発光強度が最大となり、最大スパイク強度がトラップなしに比べて2倍近く増加した。2) 3, 4点トラップの場合、一列配置よりも三角形・四角形配置の方が発光強度が高くなった。3) 発光強度が最大となる1点当たりのトラップ光強度は、トラップ点数2点:15mW、3点:7.5, 15mW、4点7.5mWであった。 さらに、微粒子の光トラッピング・シミュレーションにより、トラップ光強度・トラップスポット直径と微粒子の凝集度との関係を求めた。上記3)の結果と比較することにより、トラップ点数により発光に最適な凝集度が変化することが明らかとなった。 以上の結果より、トラップ光の点数・配置および強度とレーザー発光状態との関係が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、微粒子トラップ光パターンの生成、レーザー発光実験、光トラッピング・シミュレーションの全てを実施することができた。トラップ光パターンの生成については、10×10点の格子状ドットパターンなども生成可能であった。しかし、トラップ点を増やしすぎると1点当たりのトラップパワーが小さくなり、微粒子をトラップできなくなるため、発光実験では4点以内に留めた。また、今年度は光トラップパターンに着目して実験を行ったため、微粒子の種類や直径、利得媒質の種類や濃度による影響については検討していない。 光トラッピング・シミュレーションについては、当初の解析サイズ6×6×6μm、粒子数8個から12×12×12μm、30個に増加させることができ、より現実に近いシミュレーションが行えるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
微粒子トラップパターンによる発光特性の違いが確認できたので、今後は他の実験パラメータも加えてより高出力・高効率なランダムレーザー発振の条件を探っていく。微粒子の種類や直径が発振特性に与える影響を調査する。また、微粒子分散媒質の粘度は微粒子の沈降や凝集に影響を与えるため、増粘剤による効果も検証する。さらに、レーザー発振を動的に制御する手法についても検討を始める。トラップ光のオンオフのみならず、トラップ点を励起領域内外に移動させることによる発振制御の可能性について検討する。 発光特性とランダム媒質構造との関係を調査するため、ランダム媒質の固体化も試みる。エタノールの代わりに光硬化性樹脂を使用し、微粒子をトラップしたのち光で試料媒質を固化する。これにより、試料媒質中の微粒子分布状態を顕微鏡で詳細に観察可能となる。 シミュレーションについては、ランダムレーザーの発光シミュレータの作成に取りかかる。研究室で開発した現有の2次元版を現実に即した3次元版に拡張する。また、MEEPなど実績のあるフリーソフトに光増幅の要素を取り込めるか検討する。
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