研究課題/領域番号 |
23K03974
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
岡本 大 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50612181)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 炭化ケイ素 / MOSFET / 界面準位密度 / チャネル移動度 / ゲート酸化膜 / 熱酸化 / シリコンカーバイド |
研究開始時の研究の概要 |
次世代の省エネデバイスとして注目を集めているSiC MOSFETにおいては、SiO2/SiC界面における高密度の界面準位に起因する低いチャネル移動度が問題となっている。我々はこれまでに、異原子導入法という独自のゲート酸化膜形成手法により、従来法の3倍を超える優れたチャネル移動度を実証してきた。本研究では過去の手法の課題であった、高チャネル移動度と酸化膜の高信頼性を両立できる新規ゲート酸化膜形成手法の確立を目指す。具体的には、フッ素系ガス添加による新しいゲート酸化膜形成手法を用いることにより界面特性の改善を試み、高性能SiC MOSFETを試作・実証する。
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研究実績の概要 |
次世代の省エネデバイスとして注目を集めているSiC MOSFETにおいては、SiO2/SiC界面における高密度の界面準位に起因する低いチャネル移動度が問題となっている。本提案においては、SiO2/SiC界面欠陥をさらに大きく低減したうえで高い信頼性を有するゲート絶縁膜を実現するため、フッ素系ガスSiF4の添加による熱酸化手法を提案し、その効果を調査することを目的として研究を推進している。初年度である令和5年度においては、研究の立ち上げと、MOSキャパシタによるF導入の効果の検証を主に行い、以下の成果を得た。まず、SiF4とO2を混合したガスをランプ炉に流し、高温に加熱できる実験系を構築した。RCA洗浄から、SiF4添加酸化、電極蒸着の一連のプロセスによりMOSキャパシタを形成するプロセスを学内で確立した。SiF4の添加量を変化させ、MOSキャパシタの特性を調べたところ、ごく微量の添加により界面準位密度が低減できることが明らかとなった。なお、これらの実験はランプ加熱炉によるものであり、チップ面内での膜厚ばらつきが大きくなるという課題が明らかとなった。安定した実験データを得るためには、3ゾーン制御による横型の拡散炉により実験を進めていく必要がある。令和6年度においては、3ゾーン加熱炉の立ち上げにより、MOS界面特性改善に向けたプロセス開発をさらに強力に推進していく。それと同時に、SiF4添加酸化によりSiC MOSFETを作製し、高チャネル移動度の実証にも取り組んでいく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうち、初年度の目標であったMOSキャパシタを用いたF導入の効果確認に関しては、界面準位密度を低減できる条件を見出すことができた。新規プロセスの開発において、界面準位が低減するのかどうかが最も大きな壁であるが、それをクリアできたことは大きな成果であると言える。さらに条件出しを進めて、MOSFETでの実証が期待される。一方、実施計画に記載していた全ての実験ができた訳ではなく、SIMSを用いた膜中のF濃度分布などの実施までは至らなかった。これは、F導入の条件出しをしっかりと行ってから実施したほうが良いという判断のためである。これらをトータルで考えると、最も困難である界面準位低減に成功していることから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初記載した研究計画に従い、前年度に得られたMOSキャパシタに対する結果を基にして、SiF4添加酸化を用いたSiC MOSFETの作製を行う。前年度と同様に、ここでも系統的に条件を変化させ、高いチャネル移動度が得られる条件を見出し、本提案手法の有効性を示す。MOSFET作製のためのクリーンルーム内の装置整備なども行い、学内でMOSFETの試作ができるようにする。作製したデバイスは、半導体パラメータアナライザを用いて、電界効果移動度などの評価を行う。また、各種の物理分析法を用いて、高移動度が得られる理由を明確化することを目指す。
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