研究課題/領域番号 |
23K03991
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22010:土木材料、施工および建設マネジメント関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
徳臣 佐衣子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 特別研究員 (40646121)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 非破壊検査 / コンクリート構造物 / 打音検査 / 自動化 / ストリングシュータ / 遠隔試験 |
研究開始時の研究の概要 |
橋梁やトンネルの老朽化は社会問題化しているが、高所の打音検査は容易ではなく、多くの橋梁やトンネルを管理する地方自治体では十分な点検ができていない。高所検査の効率化の一つの方向性として遠隔検査がある。遠隔検査が可能になれば、高所作業車が不要になったり、移動しながらの検査が可能になったりするからである。 本研究では、長さ1~2メートルの環状ストリングに大きさ数ミリの打撃球を取り付けて、ストリングを検査面に向かって打ち出し、打撃球で壁面を打撃するストリングシュートインパクタを開発する。この装置は、トンネルや橋梁床板下面のコンクリートの浮き・剥離を、遠隔にて簡便・安価に、効率的に検査が可能である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ストリングシュータを用いた遠隔打音検査である。遠隔打音検査が実現できれば、点検の際の高所作業車や、ビルを囲む足場が不要になる。この検査方法は、軽い環状の紐を二つのローラーで空中に打ち出し、紐が空中を漂う原理を利用している。この紐に打撃球を取り付け、周期的な打音検査を行う。検査対象はトンネルの上部、橋梁の床板下面、ビルの外壁である。研究段階には以下が含まれる:(1)ストリングの軌道予測、(2)ストリングシュータの開発、(3)コンクリート内の空洞検出、(4)タイルの浮き検出である。試験は実験室レベルから実構造物レベルへと進展する。 平成5年度には、軌道計算に関する文献調査を行い、ほぼ正確な軌道予測が可能になった。この計算では、ストリングが浮き始める臨界速度の算出方法も明らかになった。開発したストリングシュータは三種類である。一つ目は卓上モデルで、約5cm径の二つのローラーを用いてストリングを約50cm打ち出すものである。二つ目は、直径25cmのローラーを用いて数メートル離れたコンクリート試験片内の空洞を検出するために開発されたものである。最後に、直径18cmのローラーを用いるタイルの浮きを検出するシュータである。また、打撃音響の抽出を可能にし、連続する音響データから小球が検査対象に当たった際の音響を抽出し、欠陥の検出を行うことができた。これにより、以前は問題となっていた小球がストリングシュータの取り込み部に当たり衝撃音を発生させる問題を完全に解決した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究開始時の研究内容は、(1)ストリングの浮遊の軌道計算、(2)ストリングの選定、(3)ストリングシュータの開発であった。ストリングの軌道は文献調査によって明らかになった。ストリングの選定では、各種の素材を用い、編み方も数種類実施し、浮遊性の検証を行った。浮遊性は線密度に対する線の空気抵抗の比で決定されることが明らかにされ、このパラメータに基づいて開発が進められた。ストリングシュータの開発に関しては、外壁検査用に検査距離が50センチメートル程度のものであるが、ある程度安定した打ち出しが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の課題は、(1)ストリングの耐久性と(2)ストリングの安定性である。(1)ストリングの耐久性に関する課題は、ストリングシュータの基本原理に由来している。ストリングシュータのストリングがローラーによって打ち出された後、空中を浮遊する原理は、ストリングと空気との摩擦によるものである。これは真空中でストリングが浮遊しない実験からも明らかである。すなわち、ストリングの空気抵抗による浮力がストリングの重力を上回るために浮遊するわけである。したがって、金属チェーンなどの重い素材をストリングシュータのストリングに使用しても、その重さのために空気中を浮遊することはない(超高速であれば放物運動として浮遊する可能性はある)。軽量で空気抵抗の大きなストリングが必要となるが、釣糸のような短繊維のストリングは向かない。短繊維は空気抵抗が小さいためである。そこで、細い繊維を編んだ構造が最適であるが、細い線は耐摩耗性が低い。今後は耐摩耗性と浮遊性を併せ持つ繊維の太さや編み方の開発を行う予定である。 (2)また、ストリングの安定性に関しては、ロールを用いた押し出し方法とは異なる押し出し方法を開発する予定である。不安定となるのは、打ち出し速度が一定であるためのようである。
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