研究課題/領域番号 |
23K03995
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22010:土木材料、施工および建設マネジメント関連
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
杉本 和子 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 研究員 (60642171)
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研究分担者 |
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 教授 (80257427)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 非接触音響探査法 / 非破壊検査 / Spatial Spectral Entropy / SSE解析 / 空間スペクトルエントロピー / 共振周波数 / レーザドップラ振動計 / たわみ振動 / 有効直径 |
研究開始時の研究の概要 |
高度成長期に建設されたコンクリート構造物は,約60年を経て経年劣化が進み,その保守・点検が課題である。打音点検が主流であり,遠隔からの定量的な自動検査法が求められている。非接触音響探査法は,非接触・非破壊で遠隔(5~30 m)から,複合材料,特にコンクリートの浅層(~10cm)の内部欠陥を検出・映像化する。円形空洞欠陥(25 mm厚)の場合,直径の半分程度の欠陥深さまでの欠陥検出が可能である。その原理は,叩き点検と同じたわみ振動である。コンクリートの場合,深さ/直径の比が大きくなると,振動状態の挙動が変化する。その現象を説明する振動理論モデルを検討し,欠陥検出のための現実的な計算式を構築する。
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研究実績の概要 |
我々の研究している非接触音響探査法では,複合材料,特に,コンクリートの計測対象面を空中音波で加振・振動させ,内部欠陥を含む浅層の振動状態をレーザドップラ振動計で測定し,その2次元振動速度分布からデータ解析を行って,内部欠陥の検出とその映像化を行っている。この物理現象をモデル化するには,コンクリート薄板のたわみ振動と音波・振動伝搬を考慮する必要がある。前者は構造力学解析,後者は音響・振動解析に関わり,複合的な数値解析が望まれる。構造解析ソフトには,幾つかのものがあるが,我々の物理現象をうまく解析できるものを選定するために,調査するところから始めた。最近の音響学会や非破壊検査学会を散見すると,COMSOLによる解析の報告が幾つか見られた。COMSOLは,音響学・構造力学を含む複数の物理現象を組み合わせて有限要素法を用いて解析するマルチフィジックス(連成)数値解析ソフトである。非接触音響探査法によるコンクリート供試体(空洞・剥離の欠陥を含む)に対する実験データの解析結果を,構造力学・音響モジュールを搭載したCOMSOLにより,物理現象を再現するため,試行錯誤を行っている。 国際学会の発表では,直径と欠陥深さが異なる円形剥離欠陥の複数の実験結果を用いて,SSE解析により各共振周波数帯を検出し,その周波数帯について振動エネルギーによる映像化を行い,そのエネルギー分布より振動直径の見積もりを行った。薄板円盤のたわみ振動モデルの理論式と比較し,振動直径・欠陥深さ・共振周波数の関係を検討した。 研究室では,音源とレーザドップラ振動計を移動させながら,非接触音響探査法による計測が行われており,その解析にSSE解析を利用することも検討している。静止状態での理論解析が進めば,移動計測にも応用できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々の非接触音響探査法の実験の物理的状態を,マルチフィジックス(連成)数値解析ソフトのCOMSOLでモデル化し,初期条件を設定して解析するため,4月より,COMSOL解析トレーニングの各種セミナーに参加し,トライアルライセンスにより,使い方やその適用事例を勉強し始めた。その結果,我々の課題を解決するために最小限必要なモジュールが選択され,構造力学モジュールと本体を導入することにした。発注してから,ようやく7月頃にCOMSOLが導入された。その後,音波伝搬・対象物の振動状態も考慮するため,音響モジュールも導入した。非接触音響探査法で検出されるたわみ振動は,シンプルな物理モデルと思われるが,実際,対象物が複合材料であるコンクリートであるため,コンクリートの内部欠陥での境界条件をどのように考えて行くか,ソフト上の各種手順・設定の仕方など分からないところがあり,試行錯誤しながら進めている。そのような状況で,非接触音響探査法における過去の実験データの最新の解析結果を踏まえ,COMSOL解析ソフトを用いて,どのように物理現象を再現させていくか,どのようにアルゴリズムを組み立てていくか,先例を参考にしながら,確認しながら作業を行っている。当初の予定と比べれば,進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
異なる欠陥直径・欠陥深さの円形空洞・剥離欠陥を内包したコンクリート供試体における今までの実験結果に対して,固定端および単純支持の薄板状の円盤のたわみ振動を想定して構造力学による解析を行う。その際,材料パラメータを推定して実行し,実験とCOMSOLによる解析の結果を比較検討し,理論的な洞察を行う。必要に応じて,仮定した理論モデルをどう変形・調整するかを検討し,実験におけるたわみ振動現象の有効直径・欠陥深さ・共振周波数の関係を明らかにする。 SSE解析については,例えば,吹付けコンクリートのように,表面が平ら滑らかでなく,空中音波加振によって表面微細構造が微振動するような材料に対して,今までに報告したSSE解析の前処理(統計的に高周波数の外れ値を除去する)だけでなく,欠陥部の振動に関する,周波数空間における(共振周波数帯の連続的)広がり・物理空間における(面的な連続性の)広がりを考慮したSSE解析を検討できればと模索している。
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