研究課題/領域番号 |
23K04023
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
崔 瑛 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60583797)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 盤ぶくれ / トンネル / 長期安定性 / 膨潤性地山 / 変状 |
研究開始時の研究の概要 |
膨潤性地山に掘削したトンネルは,建設後数年~数十年後に遅れて覆工のひび割れや盤ぶくれなど大変状を発現する場合があるが,その時間遅れ変状の発生メカニズムは明確でなく,具体的な対策の選定方法も確立されていない。 そこで本研究では,膨潤性地山に掘削したトンネルの時間遅れ変状の発生メカニズムの解明と,地山の更なる膨潤を考慮したトンネルの補修プランの選定方法の構築を目指す。膨潤性地山材料の膨潤・強度特性,位置,寸法,および周辺地山の力学特性,掘削方法から発生し得る時間遅れ変状を予測し,今後発生し続ける膨潤にも対応できる補修を施すことで,トンネルの長寿命化に寄与できる。
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研究実績の概要 |
2023年度は,水の浸入に伴う地山の膨潤を模擬する浸潤模型実験および同実験を対象とする有限要素解析を実施した。膨潤性地盤の構成則には,高速圧に応じた膨潤率と膨潤率の時間変化を考慮できるSwelling Rock Model(Wittke-Gattermann & Wittke, 2004)を用いた。以下に,模型実験および数値解析により得られた知見を示す。 1.模型実験では,覆工荷重の上昇→安定期→再上昇→安定という傾向が見られ,一旦安定したように見えたものの,その後覆工荷重が再上昇する可能性があることが分かった。さらに,荷重が再上昇するタイミングや増加度合は,周辺地山の強度特性によって大きく変動するとの結果が得られた。 2.数値解析により,覆工荷重が一旦安定した後再び上昇する一因として,膨潤性地盤の水の浸透過程が挙げられるとの知見を得た。浸潤初期段階において,水の浸透とともに膨潤性地盤は膨潤圧を発現し,周辺地山を押し出す。周辺地山の変位とともに膨潤圧の上昇はスピードを落とし,膨潤圧の上昇量が周辺地山の変形によってちょうど緩和される場合,覆工土圧は変化せず,一旦安定したように見える。周辺地山の変形が小さくなり膨潤性地盤を拘束すると,膨潤圧は再び上昇する。水の浸透に伴う飽和した膨潤性地盤の増加も,膨潤圧の上昇に寄与すると考えられる。すなわち,覆工土圧の変化は,膨潤性地盤と周辺地山の相互作用,および膨潤特性に起因するものであることが分かった。 3.Swelling Rock Modelは,浸潤に伴う強度の低下を考慮していないものの,浸潤に伴う地山の膨潤性だけでも,時間遅れの荷重上昇が発生する可能性があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,予定どおり水の浸入に伴う地山の膨潤を模擬する浸潤模型実験および同実験を対象とする有限要素解析を実施した。膨潤性地盤の構成則にSwelling Rock Model(Wittke-Gattermann & Wittke, 2004)を導入し,有限要素解析により模型実験における覆工荷重の変化を忠実に再現することができた。さらに,有限要素解析結果を分析し,時間遅れの覆工荷重の再上昇のメカニズムを明らかにすることができた。これらの研究成果は,国際会議で2編投稿しており,順調に対外発表等を実施している。以上から,本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定どおり,模型実験に対する数値解析,および実現場における掘削過程からその後の膨潤過程まで考慮することができる数値解析を実施し,トンネル掘削による周辺地山のゆるみと,水の浸潤に伴う覆工の時間遅れ変状のメカニズムについて検討する予定である。さらに,膨潤性地盤の構成則には,膨潤に伴う強度の低下を考慮できるものを新たに導入し,体積変化だけでなく,強度変化に伴う長期挙動についても検討する予定である。すなわち,膨潤性地盤の体積膨張と強度劣化の二つのアプローチから,膨潤性地盤における時間遅れ変状の発生メカニズムをまとめる。さらに,時間遅れの変状が発生しうる施工条件,膨潤性地盤の膨潤・強度特性,位置,寸法,および周辺地山の強度特性が,時間遅れ変状の発現度合いに及ぼす影響を体系化する。 その後,研究成果をまとめ,膨潤性地盤に掘削したトンネルの時間遅れ変状のメカニズムに基づき,今後の更なる膨潤に対応できる補修方法を提案する。具体的には,施工条件と膨潤性地盤の諸元から,今後変化し得る土圧を予測し,長期にわたっていずれの土圧にも対応できるような補修プランの選定方法を提案する予定である。
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