研究課題/領域番号 |
23K04033
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
仙頭 紀明 日本大学, 工学部, 教授 (40333835)
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研究分担者 |
大矢 陽介 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長 (30571202)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 液状化 / 礫質土 / 単純せん断試験 / 排水 / 有効応力解析 |
研究開始時の研究の概要 |
臨海部の埋立地では、岩ズリといった礫質地盤材料のような建設発生土を埋立てに用いることが多い。このような地盤材料は、透水係数が大きいため、震動中の排水の影響が大きく、従来の非排水条件で求めた液状化強度を用いて耐震設計を行うと、過度に保守的な評価となり建設コストが増大する問題がある。この課題解決のために、礫質土に適した震動中の排水を制御できる繰返しせん断試験方法を提案し、排水を考慮した液状化強度と変形特性を明らかにする。さらに液状化解析を実施して、実験結果を再現するための合理的な方法を検討する。以上より、現状の非排水条件に基づく液状化評価スキームを見直すための試験・解析技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
臨海部では岩ズリといった礫質地盤材料を埋立てに用いることが多い.このような地盤材料は、粒径が大きいため,砂質土と比べて試験結果が少ないことに加え、震動中の排水の影響により過剰間隙水圧が消散し、沈下が発生するが,間隙水の移動を無視した従来の設計体系では適切な評価が難しい.この課題を解決するために、粒径が大きい礫質土の物性評価に適した比較的大型の動的単純せん断試験装置を開発した. 試験装置の概要を示す.直径20cm,高さ20cmの供試体に対し,鋼製の積層リングで側方変位を拘束した単純せん断条件とした.さらに振動台を用いて繰返しせん断を載荷する方式とし,装置自体を振動台上に設置して加振することで,鉛直応力載荷用の錘の慣性力が供試体に繰返しせん断力として働くような機構を新たに考案し,装置の設計と製作を行った. 装置の基本性能を把握するための試験の概要を示す.試料は礫質土のいわき硅砂1号(平均粒径3.5mm)であり,排水及び非排水条件で繰返しせん断試験を行った.周波数2Hzの正弦波を載荷し,最大加速度は100galから100galずつ段階的に振幅を上げて400galまでとし,各10秒間加振した. 結果の概要を示す.まず,加振により発生する慣性力で繰返し単純せん断試験が可能であることが確認できた.せん断応力振幅は供試体の剛性変化により変化し,一定振幅とはならないこともわかった.得られた応力ひずみ関係は従来の試験結果と類似しており,せん断ひずみの増加とともに,剛性が低下し,減衰が増加する傾向は,粒度が近い礫質土の既往の実験結果と近くなった.一方で,非排水条件の実験では,過剰間隙水圧が上昇するとメンブレンとキャップの間に供試体から排水された間隙水が侵入し,非排水条件を保持できないといった改善すべき課題があることもわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究テーマ「地震中の排水を考慮した礫質地盤の液状化評価スキームの構築」の中で,令和5年度は,実験では動的単純せん断試験装置の開発と基本性能の確認,解析では液状化解析コード(FLIP)を用いた既往の要素シミュレーション手法の整理を行った.実験及び解析ともに現在までの進捗は概ね良好である. 本試験装置は新しいアイデアに基づく新規開発であり,試行錯誤しながら載荷機構及び仕様を決定したため,装置の製作期間も含めて半年以上の時間を費やした.そのため,基本性能試験に十分な時間を費やすことができなかった.このような時間的制約がある中で,試料を1種類に絞り,試験条件も排水,非排水の2種類に絞ることで,必要最小限の条件下ではあるものの,当初想定した通り装置が動作することを確認し,実験データを取得することができた.例は少ないものの既往の実験結果と比較して,試験結果は概ね整合しており,概ね基本性能を確認することができた. さらに研究代表者が委員長を務める土木学会地震工学委員会の「地盤の過剰間隙水圧上昇と消散に伴う変形の評価小委員会(令和4年度~6年度)」において,話題提供と実験見学を実施した.国内の第一線で活躍する研究者からは,供試体の高さが試験結果に及ぼす影響,運動方程式の数値減衰が結果に与える影響,砂質土による検証等を検討すべきとのアドバイスをいただいた。 数値解析については,研究分担者と研究協力者は,今回の実験結果を用いた検証に備えて,非排水条件の液状化解析プログラムを用いて,排水挙動を疑似的に表現するための要素シミュレーション方法について既往の方法を整理した.
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今後の研究の推進方策 |
まず装置の基本性能を確認するための追加試験を実施する.具体的には,排水(乾燥)条件において砂質土や港湾の埋立に用いられた岩ズリについて試験を行い,既往の試験結果または別途実施する中空ねじり試験の試験結果との比較を行う.さらに,先述の小委員会で指摘のあった供試体寸法の影響を確認するために,供試体高さを約半分にした条件での試験を実施する. 次に非排水条件で発生した不具合の解消を行う.具体的には,過剰間隙水圧の上昇により供試体からの間隙水が上部キャップとメンブレンの間に入り込まないように工夫を施すことで非排水条件の試験ができるように改良する.この改良には,試験機開発に携わった関係者と協議しながら実施する.この改良の後に,礫質土の繰返しせん断特性に及ぼす加振中の部分排水条件の影響を調べるために,精密流量調整バルブを組み合わせた繰返しせん断試験を実施する.特性が異なる数種類のバルブは既に購入済みであり,試験に適したバルブを選定して実験を実施する. 数値解析については,これまでに得られた試験結果について要素シミュレーションを実施して,パラメターの合理的な設定方法について検討を行う. また研究成果については,学会発表を行うとともに,試験装置の特徴とその基本性能についてまとめた内容を査読付き論文に投稿する.さらに,研究成果を先述の小委員会に再度意見照会して研究者のレビューを行いながら研究を進めていくこととする.
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