研究課題/領域番号 |
23K04085
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
石川 奈緒 岩手大学, 理工学部, 准教授 (10574121)
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研究分担者 |
伊藤 歩 岩手大学, 理工学部, 教授 (90312511)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 抗菌薬 / 河川環境 / 藻類 / 分析法構築 / LC-MS/MS / 抗菌剤 / 河川 / 毒性試験 |
研究開始時の研究の概要 |
下水処理水放流河川には,人が使用した多種多様な抗菌剤が下水処理水とともに流出する。河川の流下に伴う抗菌剤濃度の低下は,希釈効果や生物化学的作用が関与する。抗菌剤が混在している河川環境での水生生物への生態毒性や薬剤耐性菌の出現に対する安全性は,各抗菌剤から個々に求められた値を加算しただけで複合影響を加味した適切な評価はできない。本研究では,河川環境での抗菌剤濃度の推移を堆積物や付着藻類への吸着,太陽光による光分解や微生物による分解等のメカニズムから説明するモデルを構築する。加えて,多種類の抗菌剤が混合する放流河川水における水域生態系の健全性と薬剤耐性菌発生助長の危険性を評価する手法を開発する。
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研究実績の概要 |
付着藻類中の抗菌剤分析法を構築するために,藻類Raphidocelis subcapitata を用いた添加回収試験を行った。対象抗菌剤としてスルファピリジン(SPD)を用いた。藻類細胞を含む培養液100 mLを孔径1 μmのガラス繊維ろ紙で吸引ろ過した。ろ紙を100 mLのビーカーに移し,ろ紙上の藻類へSPD溶液(100 μg/L)を100 μL添加して3分程度静置し,SPDが吸着した藻類を模擬的に作成した。次に,抽出液としてメタノール,アセトンまたはアセトニトリルを10 mL加え,10 分間超音波抽出を行った。メタノールで抽出したビーカーには超純水を10 mL混合後,孔径0.3 μmのガラス繊維ろ紙でろ過し,ろ液中のSPD濃度を測定した。アセトンとアセトニトリルで抽出した液はガラス沈殿管に移し、窒素を吹き付け0.5 mLまで濃縮した後、50%メタノールで10 mLに定容し、SPD濃度を測定した。SPD濃度は高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置にて分析した。結果、回収率が最も高い(99%)メタノールが抽出液として最適であることが示された。 また、岩手県内のA下水処理場の下水処理放流水および放流先河川(B川)、B川が合流するC川において採水および流量測定を実施した。下水処理水から検出されている6種類の抗菌剤を対象として、各地点での水試料中抗菌剤濃度と流量から抗菌剤負荷量を算出し、各抗菌剤の河川環境中での残留性を評価した。下水処理水放流口から2 km程度流下した採水地点においても一部の抗菌剤は検出されていた。さらに、C川での2地点間(約1.5 km)流下した際の残留率はアジスロマイシン、ロキシスロマイシン、スルファピリジンで85%以上となり、マクロライド系やサルファ剤の残留性が示唆された。一方でレボフロキサシンは残留率が10%未満であり,分解されやすい可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画されていた藻類へ吸着した抗菌薬の分析法の構築は今年度で目処が立っており、順調に進んでいる。また下水処理水放流先河川の抗菌剤実態調査は予定より早い段階から開始することができている。生態毒性試験や抗菌活性試験も進めており、現在は概ね順調に研究計画通りに進められていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画に沿って研究を推進する。下水処理水放流先河川の抗菌剤実態調査を引き続き実施するが、その際に昨年度構築した藻類中の抗菌剤分析法を用いて実河川から藻類を採取し、藻類中の抗菌剤を分析する。河川水や藻類中の抗菌剤濃度を測定し、河川環境中での抗菌剤の挙動を評価するためのデータを蓄積する。また、藻類を用いた生態毒性試験や抗菌活性試験については純水系だけでなく実際の河川水や下水処理放流水でも実施し、より実環境に即した状態での抗菌剤の水域生態系への影響、さらに河川環境中で分解しやすい抗菌剤については分解生成物の抗菌活性の有無について確認することで、水域生態系の安全性評価につなげる。
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