研究課題/領域番号 |
23K04089
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
今井 剛 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20263791)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | メタン生成菌 / 耐熱化 / 中温メタン発酵 / 分子生物学的手法 / 資源循環の環(わ) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、脱炭素社会実現のためにメタン発酵の安定的高効率化に不可欠な中温メタン生成菌(35-37℃)の耐熱化(45℃付近へ適応)に取り組む。それは高速な55-60℃付近の高温メタン発酵の大きな欠点である不安定性を克服し、中温メタン発酵の速度向上(目標:中温菌の2倍)を同時に達成するためである。そのために本研究はどのような中温菌が耐熱化できるのか、それを解明しその最適な耐熱化の手法を開発・確立することを研究目的とする。次にラボスケール実験によって、中温菌と同等の阻害耐性を持つ耐熱化された中温菌を見い出す。これにより中温菌の阻害耐性による安定性を保持しながら45℃付近での高速発酵を実現する。
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研究実績の概要 |
本研究では、脱炭素社会実現のために必須なメタン発酵の安定的高効率化に不可欠な中温メタン生成菌(35-37℃付近、以下中温菌と称す)の耐熱化(中温菌の45℃付近へ適応)に取り組んだ。その理由は高速な55-60℃付近の高温メタン発酵の大きな欠点である不安定性を克服し、中温メタン発酵の速度向上(目標:中温菌の2倍)を同時に達成するためである。そのために本研究は「分子生物学的手法を駆使してどのような中温菌が耐熱化できるのか、それを解明しその最適な耐熱化の手法を開発・確立する」ことを研究目的とした。第1年度として行った研究は以下の通りある。培養温度の変化条件や添加基質、基質の添加頻度を変えた計10個のサンプルを用意し、そのメタン生成量の累積を比較した。最も多くのメタンを生成したのは,酢酸と水素の混合基質を加えたサンプルであり,メタン生成の直接の基質となる二つを加えたことでメタン生成段階の強化に成功したと考えられた。さらに、各サンプルに対して次世代シーケンサーによる菌叢解析を行った。耐熱域では中温メタン菌(最適培養温度が37℃付近の菌種)よりも高温メタン菌(55℃付近)が多く存在し、そのうち水素資化性メタン菌(水素からメタンを作る菌種)であるMethanococcus属やMethanoculleus属が優占種となった。また、中温メタン菌の一種で,酢酸も水素もメタンに変えることができるMethanosarcina属の存在比を確認したところ、水素培養時にその値が大きくなり、耐熱域では水素からのメタン生成の働きが活発であることが考えられ、メタン生成以前の酸生成段階における水素の増産が今後の課題として挙げられた。そのために、耐熱域におけるメタン菌のメタン生成挙動をより詳しく把握するために、「45℃付近でのメタン菌の適応挙動の解明」を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年度として行った研究は以下の通りある。培養温度の変化条件や添加基質、基質の添加頻度を変えた計10個のサンプルを用意し、そのメタン生成量の累積を比較した。最も多くのメタンを生成したのは,酢酸と水素の混合基質を加えたサンプルであり,メタン生成の直接の基質となる二つを加えたことでメタン生成段階の強化に成功したと考えられた。さらに、各サンプルに対して次世代シーケンサーによる菌叢解析を行った。耐熱域では中温メタン菌(最適培養温度が37℃付近の菌種)よりも高温メタン菌(55℃付近)が多く存在し、そのうち水素資化性メタン菌(水素からメタンを作る菌種)であるMethanococcus属やMethanoculleus属が優占種となった。また、中温メタン菌の一種で,酢酸も水素もメタンに変えることができるMethanosarcina属の存在比を確認したところ、水素培養時にその値が大きくなり、耐熱域では水素からのメタン生成の働きが活発であることが考えられ、メタン生成以前の酸生成段階における水素の増産が今後の課題として挙げられた。 以上のように、研究計画に従っておおむね順調に結果が得られていることから、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ラボスケール実験による中温菌の45℃への耐熱化:耐熱域におけるメタン菌のメタン生成挙動をより詳しく把握するために、「45℃付近でのメタン菌の適応挙動の解明」として、メタン菌の各菌種の存在比やメタン生成能の変化を把握する。特に水素資化性高温メタン菌について、水素培養時において特に優占する種やその存在比を把握し、酸生成段階からその適応挙動を解明する予定である。 (2)ラボスケール実験による中温菌の阻害耐性を持つ耐熱化菌の探索:中温菌と同等の阻害耐性を持つ菌を見い出す。バイアル瓶を用いた複数条件の同時並行で実施する。阻害要因としては、負荷変動、温度低下、pH低下などを対象とする。 (3)ベンチスケールへのスケールアップと最適運転条件の設定:ベンチスケールの2Lサイズのファーメンターを用いて耐熱化した中温菌のスケールアップ培養実験(120mL程度から2Lへのスケールアップ培養実験)を行うための準備段階として予備実験を開始する。
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