研究課題/領域番号 |
23K04090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
齋藤 有 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (60469616)
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研究分担者 |
谷水 雅治 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (20373459)
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (50569283)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 道路堆積物 / 重金属 / シェムリアップ / プノンペン / アンコール遺跡 / 鉛 / 交通 / 鉛汚染 / 重元素同位体 |
研究開始時の研究の概要 |
道路堆積物には,自動車や道路標識など交通に関連するものを中心に人為起源の重金属が多く含まれている.それらは浮遊粒子状物質として大気汚染に関与したり,雨水によって河川や地下水環境に流入して水環境に悪影響を及ぼす.本研究では,世界有数の大都市である東京をメインの対象地域,地方都市(徳島)および発展途上国の都市(シェムリアップ,プノンペン)を比較対象地域とし,道路堆積物の重金属汚染の様態の違いとその要因を検討・評価する.含まれる重金属元素の濃度と同位体比,それらの空間分布を明らかにした上で,汚染の様態の地域的な違いを,産業構造,環境汚染対策の違いから考察,さらに,水域への道路汚染の影響を検証する.
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研究実績の概要 |
2023年8月にプノンペン,2024年2月に徳島市で道路堆積物の採集調査を行った.プノンペンでは市の中心部を網羅するように交通量の多い道路を選定して1km間隔で40地点,徳島市では市内の主要道路である県道30号線と国道318号線,439号線より1km間隔で17地点より道路端に集積した堆積物を採取した. 2022年9月にシェムリアップで採取した試料,2023年にプノンペンで採取した試料について,元素濃度と鉛同位体比の分析を行った.各試料は自然乾燥後,重金属元素が濃縮しやすく可動性の高い100μm以下の細粒成分をふるいで抽出,天然のケイ酸塩粒子の寄与を除外するため,1M塩酸で溶出する成分を分析対象とした.分析は総合地球環境学研究所の共同利用機器を利用して行った.元素濃度はICP質量分析装置,鉛同位体比はマルチコレクター型ICP質量分析装置を用いて測定した. 元素分析の結果,シェムリアップ,プノンペン共,道路堆積物には,以前測定した東京の試料と同様に,亜鉛,銅,カドミウム,鉛が強く濃縮されていることが明らかになった.ただし,その4元素とも東京と比較すると濃縮度は低く,東京の道路環境の重金属汚染が際立つことが確認された.プノンペンとシェムリアップではプノンペンの方が濃縮度が高く,両都市の産業構造の違いを反映したものと解釈できる.すなわち,プノンペンは首都であり,人口,交通量も多く,各種産業が発達しているのに対し,シェムリアップはアンコールワットに依存した観光都市である. 鉛同位体比は206/204, 207/204, 208/204ともシェムリアップで高く,東京で低く,プノンペンはその中程度の値となった.ただし,カンボジアの2都市は206/204に対する207/204が高い点で東京とは異質である.シェムリアップに関しては,遺跡のコーティング由来の鉛が寄与していることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
徳島,シェムリアップにおいて予定通りに試料を採取できた他,プノンペンにおいても面的分布を把握するのに十分な数の試料を採取することができた.さらに,シェムリアップ,プノンペンの試料については,100μm以下成分について元素濃度,鉛同位体比の測定も完了し,徳島の試料についても,同成分について元素濃度分析は完了している.また,東京の試料についても鉛同位体比を完了し,東京,シェムリアップ,プノンペンの三都市については,元素濃度分布図,鉛同位体分布図を作成して空間分布の傾向の解析への取り組みを開始したところである.計画していた①都市毎の元素同位体分布の把握,②粒度区分・成分毎の元素同位体比の把握,③流域への道路堆積物の影響の把握,という3課題のうち①を概ね完了したことになる.本研究の期間は4年であり,すでに1/3を完了したことから概ね順調と判断できる.また,分担者の申氏は,東京の試料について鉄同位体比の測定を完了しており,谷水氏は水銀濃度の分析に取り組んでいるところである.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はまず,徳島の道路堆積物試料の100μm以下成分についての濃度同位体分析を完了させる.また,東京,シェムリアップ,徳島,プノンペンより濃度・同位体比がそれぞれの中央値に近い典型的な試料を8試料程度ずつ選定し,粒度をさらに細分して画分毎の分析を行う.徳島市内の河川において河川水,懸濁物,底質の採取を行う.2025年度は,河川試料の分析を行い,道路堆積物の元素組成・同位体比と比較,交通起源物質の水域への影響を調べる.2026年度は,補完的な分析を行うとともに成果のまとめと公表作業を中心に行う.
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