研究課題/領域番号 |
23K04108
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
金子 健作 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (00715279)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 強震動予測 / 構造ヘルスモニタリング / 機械学習 / ニューラルネットワーク / 3D都市モデル / 地震応答解析 / オープンデータ / WebGIS / 構造モニタリング / 地震被害推定 / AI |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,多数の地震波記録を深層学習し,学習済みモデルよる事前予測と構造モニタリングデータを合わせた方法により,地震後1分以内に数十万棟オーダーの広域建物群の健全性評価と非構造部材の損傷可能性評価を可能にする革新的な手法を開発する。まず,K-NETなどの公開データから地震動強さなどを学習する。これに加え,多様な建物群と地震動特性を考慮した弾塑性応答シミュレーションにより,震源情報と建物・非構造部材応答の確率的関係を構築する。加速度センサがない階や建物群を含めた応答推定を可能にする。この推定アルゴリズムと3D都市モデルデータを連携し,地震被害推定をWebで可視化できるアプリとして実装する。
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研究実績の概要 |
公的地震動データベースを用いて震源情報(マグニチュード,震源深さ,緯度・経度)と日本全土で記録された最大地動加速度や加速度応答スペクトルの関係を深層学習し,地震動評価AIを構築した。さらに,10万ケース以上の多様な構造特性を有する非線形多質点系モデルの時刻歴応答解析結果を訓練データとして,建物応答評価AIを学習した。これら2つの学習済みAIを組み合わせて,気象庁から得られる震源情報のほか,地盤情報と3D都市モデル (Project PLATEAU)の属性情報から,都市レベルの広域に立地する数万から数十万棟の最大応答値や地震被害度を即時に推定可能なフレームワークを構築した。その推定結果をWebGIS上で可視化した3D都市モデルに色分け表示し,対話的なWebアプリケーションを作成した。これには,オープンソースであるCesiumJSのライブラリを用い,JavaScriptのプログラミング言語で実装した。その他,公開されているハザード情報や様々なオープンデータを重畳表示することも可能である。これにより,地震発災時の非日常から日常,および過去(記録)から未来(推定)への時間軸,日本全土から都市・建物単体までのマルチスケール性など,多様かつ新たな観点から地震リスク情報を理解できるように工夫した。また,IoT地震計を通じて得られる建物の実際の加速度記録をWebAPIを介してアプリケーションに取り込むことで,AIによる推定と記録データとの比較を容易に行うことができる。これにより,AIによる広範かつ面的な地震被害度の推定と,建物単体の記録をリアルタイムに比較できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究成果については,国際シンポジウム (WCEE2024)への投稿や,2024年度の日本建築学会年次大会に投稿した。また,日本建築学会(建物健全性モニタリング小委員会)主催のシンポジウムや研究代表者が所属する大阪公立大学の市民向け防災講座において,開発したWebアプリケーションをデモンストレーションした。また,Webサイトを期限付きで試験的に公開した結果,一般市民から高い評価を得たことがアンケート結果から判明した。 プロジェクト初期には,構造モニタリングシステムには自作の加速度センサ(Raspberry PiのようなシングルボードコンピューターとMEMS加速度センサを組み合わせたシステム)を使用する計画であったが,研究助成期間中は利便性と性能の観点から市販のIoT地震計を使用することに変更した。この変更にもかかわらず研究は予定通り進み,助成期間後も自作センサーの開発は継続する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,非構造材の被害度の指標となる床応答スペクトルを推定できるように,新たに非構造材応答推定AIを学習することに注力する。また,これまでの成果は非木造(鋼構造や鉄筋コンクリート造など)の建物かつ中高層建物に限定していた。研究成果を木造建物に展開するため,国土地理院などの空中写真から構造種別を判定し,3D都市モデルの属性を補完する仕組みを研究する。また,同じく対象外としていた超高層建物については,構造特性に関して建物の個別性が強く,統計ベースで被害度を推定することは困難であるため,既存の超高層建物に導入された構造モニタリングシステムのデータを利用することを検討する。これを前述したフレームワークに取り組むための応用を目指す。最終的には,数学的枠組みであるベイズ推定を用いて,不確かさを含むAIによる広域推定と正確な構造モニタリングによる単点推定を統合する新たなアプローチを完成させる。さらに,これをWebアプリケーションに実装する計画である。
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