研究課題/領域番号 |
23K04114
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
貞末 和史 広島工業大学, 工学部, 教授 (20401573)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 鋼コンクリート合成構造 / 合成梁 / 頭付きスタッド / ずれ止め / せん断強度 / 傾斜スタッド / 鉄骨コンクリート |
研究開始時の研究の概要 |
鉄骨とコンクリートのズレ止めとして普及している従来型の垂直スタッドは柔なズレ止めであるため、鋼とコンクリートを組み合わせた合成構造に適用した際、合成効果・相乗効果を十分に活かしきれない。これに対して、頭付きスタッドを傾斜させて溶接するだけで剛なズレ止めの効果が得られる傾斜スタッドを最適な応力条件下で適用する鋼コンクリート合成梁を考案した。本研究では、はじめに、傾斜スタッドにとって有利な拘束条件下でのズレ止め効果を定量化する。続いて、載荷実験とFEM解析を行って考案した鋼コンクリート合成梁への傾斜スタッドの適用効果について明らかにした後、損傷と破壊形式を考慮した性能評価式を構築する。
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研究実績の概要 |
頭付きスタッドは建築・土木構造物における鉄骨とコンクリートのズレ止めとして広く普及し、合成梁や柱脚など様々な部分で使われている。しかしながら、従来型の「垂直スタッド」はせん断力を受けた直後に剛性低下が始まり、大きなズレを伴って最大耐力に達する特性を有しているため「柔なズレ止め」と呼ばれており、頭付きスタッドが有するポテンシャルは設計で十分に活かされていないのが現状である。垂直スタッドはズレが大きくなると共に抵抗力が大きくなるのは、初期時のダボ効果による抵抗機構から、ズレの進行と共にキンキング効果(ズレたことによるスタッド材軸方向の抵抗力)による抵抗機構へと変化することが理由である。したがって、初期時よりキンキング効果を発現する抵抗機構に改良できれば、頭付きスタッドは高い初期剛性と大きな耐力を有する「剛なズレ止め」として合理的に設計利用できる。これに対して、本研究の代表者は頭付きスタッドを45°傾斜させて溶接する「傾斜スタッド」に着目し、傾斜スタッドは初期時よりキンキング効果を発現する剛なズレ止めとしての性能が得られることを明らかにしている。ただし、地震力のような正負の繰返し力を受ける部分に傾斜スタッドを適用した構造では、傾斜スタッドが負方向にせん断力を受ける場合に鉄骨とコンクリートの接合面が離間して、キンキング効果が低下することがわかっており、傾斜スタッドを剛なズレ止めとして活用するには、接合面垂直変位が拘束される箇所への適用が効果的であり、剛なズレ止めによる合成効果を引き出せる構造の設計法を提示することが必要である。 令和5年度は、鉄骨とコンクリートの接合面に対して垂直方向に作用する圧縮力・拘束力の大きさが傾斜スタッドのせん断特性(ズレ止め効果)に与える影響についての実験を行い、採用した実験変数が接合部のせん断特性に与える効果について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究で傾斜スタッドのせん断抵抗機構に基づくせん断強度式を提案しているが、提案式によると、傾斜スタッドのせん断強度は、スタッド長さがコンクリートのコーン状破壊を生じない長さであれば、高強度の頭付きスタッドを使用すればコンクリート強度に関わらずせん断強度が大きくなる。一方で、垂直スタッドのせん断強度は、コンクリート強度が小さいとコンクリートの支圧破壊によってせん断強度が決まるせん断強度式となっているため、高強度の頭付きスタッドを使用しても、せん断強度を大きくすることはできない。したがって、せん断強度は、コンクリート強度が小さく、頭付きスタッドの材料強度が大きい場合に傾斜スタッドと垂直スタッドの差が大きくなると予測される。そこで、令和5年度は高強度の頭付きスタッドを使用した場合の傾斜スタッドの効果について確かめることを目的のひとつとして設定し、さらに、鉄骨とコンクリートの接合面に対して垂直方向に作用する圧縮力・拘束力の大きさが傾斜スタッドのせん断特性に与える影響について定量化するための実験を計画した。 試験体形状は鉄骨梁とRC床スラブを頭付きスタッドを用いて結合する合成梁の接合部分と同様の形状とした。全試験体ともRC部分の形状と配筋,コンクリート設計基準強度および頭付きスタッドの軸径は同一であり,頭付きスタッドの傾斜の有無と材料強度および接合面垂直方向の変位拘束の有無を実験変数とした。実験の結果、高強度材料の頭付きスタッドの使用および接合面垂直方向の離間変位を拘束した条件下において、傾斜スタッドのせん断耐力が増大することが明らかとなった。しかしながら、実験で得られたせん断強度の最大値は、せん断強度の計算値に達しない場合があることがわかり、これは繰返し載荷を受けていることの影響であると考えているため、今後、接合面の変位拘束の影響も含めてせん断強度式を修正する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度以降は、はじめに、傾斜スタッドを用いて接合された鉄骨とコンクリートの接合面垂直方向の変位が拘束された条件下におけるせん断力-ズレ関係評価式を構築する。 続いて、傾斜スタッドを適用する建築構造部材として、H形鋼フランジの内側のみにコンクリートを充填した鋼コンクリート合成梁を対象とし、構造性能について検証するための実験を行う。鋼コンクリート合成梁は、梁内のコンクリートが上下のフランジによって拘束されているため、梁がせん断力を受けて鉄骨とコンクリートがズレようとした時、反作用として接合面垂直変位を拘束する力が生じて、傾斜スタッドに有利な応力状態となる。 傾斜スタッドを設けた鋼コンクリート合成梁試験体を製作し、長期荷重を想定した鉛直荷重(一方向荷重)を与える載荷実験を行う。曲げ圧縮側フランジ(上フランジ)の局部座屈をコンクリートが抑制する一方で、傾斜スタッドがズレようとする時に接合面垂直応力が発生してフランジの局部座屈を助長する可能性がある。上フランジの座屈性状は床スラブの有無によって異なると推測されるため、床スラブの有無を変数とする試験体計画とする。次に、構築した接合部のせん断力-ズレ関係評価式を鋼コンクリート合成梁試験体の解析モデルに反映した非線形FEM解析を行い、実験結果との対応状況について検証する。続いて、実験結果と解析結果をもとに、傾斜スタッドを用いた鋼コンクリート合成梁に起こりえる損傷と破壊形式を同定し、設計で利用できる復元力特性の評価式を考案する。 本研究の最終年度は、傾斜スタッドを設けた鋼コンクリート合成梁試験体を製作し、地震力を想定した正負繰り返し荷重を与える載荷実験を行った後、考案した復元力特性評価式の妥当性について検証する。必要に応じて非線形FEM解析による検討を加え、復元力特性評価式を改良する。
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