研究課題/領域番号 |
23K04125
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
岸田 慎司 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (10322348)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | パイルキャップ / 場所打ちコンクリート杭 / ト形部分架構 / 鉄筋コンクリート造 / 基礎梁 / 曲げ破壊 / せん断破壊 / 杭頭接合部 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,場所打ちコンクリート杭(以下,場所打ち杭)パイルキャップを含む部分架構の水平加力実験を実施し,2つの課題に取り組む。 ①「場所打ち杭パイルキャップの破壊発生のプロセスを明確にする」。 ②「場所打ち杭パイルキャップの耐震性能の定量化と設計法の提案」。 ①により複合的な破壊メカニズムを明確にし,パイルキャップ破壊に対する力学モデルを構築する。この力学モデルにもとづき,パイルキャップの耐震性能評価設計法を提案し,実験にて妥当性を確認しつつ,さらに設計例を提示することで設計資料を提供する。
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研究実績の概要 |
試験体は地上3階建ての鉄筋コンクリート造の側柱下におけるト形部分架構を参考に設計を行い,場所打ちコンクリート杭,袖壁付き柱,基礎梁,パイルキャップによって構成される縮小架構試験体を2体製作した。各試験体の設計時の破壊形式は試験体ES-1がパイルキャップのせん断破壊とし,試験体ES-2の正載荷時の破壊形式はパイルキャップの曲げ破壊となるよう設定した。加力方法は基礎梁端をピンローラー支持,柱頭及び柱脚をピン支持とし,軸力を柱頭から導入し,基礎梁端部の支持点にある鉛直ジャッキより載荷した。実験開始時に長期時軸力に対応するために柱軸力比0.01の軸力を導入し,層せん断力に比例して柱軸力比0~0.02の範囲で変動させた。 試験体ES-1の正載荷側では,最大耐力となったR=+2%時にパイルキャップのひび割れがパイルキャップ底面から上部にかけて大きく入った。最大耐力以降もパイルキャップのひび割れが拡幅し,柱,基礎梁,杭に入ったひび割れの幅より広い結果となった。負載荷側ではR=-1.0%サイクルでパイルキャップのひび割れが入った。柱の危険断面における曲げひび割れの損傷の方が激しいことから柱の曲げ破壊であると考える。 試験体ES-2の正載荷ではR=+0.5%サイクル時に柱,基礎梁,杭に曲げひび割れが発生した。最大耐力時には基礎梁の曲げひび割れが拡幅した。パイルキャップには微小なひび割れが発生し,パイルキャップの曲げ破壊で想定される危険断面にひび割れが発生しなかった。負載荷側も同様でパイルキャップにひび割れが発生せず,柱の曲げひび割れが拡幅し,脚部にて圧壊を起こした。 設計時に想定した破壊性状とはならなかったことを踏まえ,場所打ちコンクリート杭のパイルキャップのせん断破壊および曲げ破壊時の強度を求める計算式を再検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,試験体を2体製作し,加力も終了している。 データの整理が若干遅れてはいるが,実験に対する論文を日本建築学会大会に1編投稿できた。 内容は場所打ちコンクリート杭のパイルキャップ破壊性状を2タイプについて,ひび割れ発生状況や鉄筋の降伏状況を実験的に明らかにし,せん断強度式および曲げ強度式の適合性について検討した。 現在,実験結果の考察をさらに進めており,今年度の実験計画を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「場所打ち杭パイルキャップの耐震性能の定量化と設計法」の提案:最大耐力,耐力限界点,軸力支持限界点,履歴吸収エネルギーなどを定量化し,設計法を提案する。 パイルキャップの目標性能を力学特性に関連付けるために,せん断破壊型と曲げ破壊型の杭頭荷重-変位関係と損傷状態について考察する。パイルキャップせん断ひび割れ発生時,杭頭部主筋曲げ降伏時,杭頭部の限界変形時,軸力保持限界時などが杭基礎の損傷状況(ひび割れ幅等)とどのように対応するかは,実験結果の詳細な検討が重要となる。さらに,平行してパイルキャップ内の応力伝達メカニズムを提案することを試みる。本研究で実施したト形部分架構試験体の成果に申請者の既往の実験研究成果を重ね合わせて立体的な破壊モデルを表現できるマクロ・モデルを構築し,パイルキャップ破壊強度および変形性能を定量的に評価する。ここでは,理論的なストラット・タイモデル等を使用してパイルキャップ終局耐力を求める。以上の研究で得られた実験結果の分析から,パイルキャップの簡易な評価モデルの確立,および耐震性能評価法を策定する。 場所打ちコンクリート杭のパイルキャップの場合も,既製杭の場合と同様に杭頭埋込部破壊には,杭が埋込部でこじれる機構や杭が接合部から抜け出すことに抵抗する杭頭定着筋の曲げ抵抗機構が混在し,挙動が複雑になる。そこで構造実験と並行して有限要素解析により杭頭埋込部の抵抗機構を解明し,終局時耐力および変形角の評価式を構築する。
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