研究課題/領域番号 |
23K04137
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤坂 修一 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (00501066)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
|
キーワード | ナノファイバー / エレクトロスピニング / 吸音材料 / 振動挙動 / 力学物性 / Dispersion method / ラム波 / 吸音 / 振動 |
研究開始時の研究の概要 |
吸音材として幅広く利用されているグラスウールなどの繊維集積材は多孔質型吸音材料に分類され、幅広い周波数域で吸音を示す。過去の研究において、繊維径をより細くした微細繊維(ナノファイバーを含む)からなる不織布は、広帯域での高い吸音率と比較的低い周波数域に吸音ピークを示した。これは、サンプル振動が関与することが音響モデルを用いた計算から示唆された。そこで本研究では、微細繊維不織布の「振動と吸音率の同時測定」と「ラム波を用いた力学物性評価(Dispersion method)」を実現し、内部構造と力学物性、振動挙動、吸音特性の関連を明らかにする。さらに本材料の吸音メカニズムを解明する。
|
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、ナノファイバー(微細繊維を含む)不織布が薄くても、低周波数域で高い吸音率を示すことを観測した。これはサンプルの振動が関与していることが示唆された。そこで、本研究では、内部構造の異なるナノファイバー不織布を作製し、「振動・吸音率の同時測定」、「Dispersion methodによる力学物性評価」を可能にすることで、不織布の内部構造と力学物性、振動挙動との関連を明らかにすること、また、本材料の吸音メカニズムを解明することを目的としている。 本年度は、振動・吸音率の同時測定システムとDispersion methodによる力学物性評価システムの構築を行った。測定サンプルとして、繊維径の異なるポリスチレン(PS)からなるナノファイバー不織布をエレクトロスピニング法により作製した。 振動・吸音率の同時測定システムでは、既存のシステムでの測定法、解析手法の改良を行い、インピーダンス管中の音波入射時のサンプル表面の振動状態と垂直入射吸音率を計測することが可能となった。繊維径の太いグラスウールなどではほとんど振動が観測されないのに対して、ナノファイバー不織布では、強制振動と固有振動が観測された。空気流れ抵抗の増加に伴い、強制振動によるひずみ量が増加することが分かった。 Dispersion methodは、音波・超音波をサンプルに入射し、材料中を伝播するラム波の伝播速度から、力学物性を逆推定する評価法である。繊維径、厚みの異なるPSナノファイバー不織布で測定を行ったところ、面内方向の引張弾性率は、繊維径だけでなく、厚みによっても変化した。サンプル断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、今回作製した厚いサンプルでは、厚み方向に繊維径、嵩密度の異なる相があることが原因であることが分かった。得られた知見は次年度の内部構造の異なるサンプルの作製に活かしていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、実施予定であった「振動・吸音率の同時測定システムの構築」、「Dispersion methodによる力学物性評価システムの構築」のうち、「振動・吸音率の同時測定」については測定法、解析手法の改良により、振動と垂直入射吸音率の測定が可能となった。「Dispersion methodによる力学物性評価」については、厚み方向の弾性率(E3)が得られなかったが、面内方向の引張弾性率(E1)、せん断弾性率(G31)が得られた。厚み方向の弾性率評価については次年度以降も検討を続ける。上記に加えて、PSナノファイバー不織布の作成条件が得られ、また、サンプル断面のSEM観察が可能になった。次年度に行う、内部構造の異なるサンプル作製、評価に不可欠な知見が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度、得られたPSナノファイバー不織布の作製条件を基に、より幅広く繊維径を変えたサンプルの作製、また後処理(熱処理、プレスなど)により、内部構造の異なるサンプルを作製する。内部構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)、パームポロメータ(空孔径測定)、比重計等により評価する。初年度に構築したシステムを用いて、力学特性、振動特性のデータを蓄積し、内部構造との関係を明らかにする。また、厚み方向の弾性率評価手法についても継続して検討する。
|