研究課題/領域番号 |
23K04145
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
板垣 直行 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (00271891)
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研究分担者 |
長谷川 兼一 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (50293494)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 断熱 / 蓄熱 / 熱伝導率 / 比熱 / 熱容量 / 木造 / パネル構法 / 温熱環境 |
研究開始時の研究の概要 |
木材により、構造、仕上げに加え、断熱等の環境機能を兼ね備えたパネルを開発し、それを構成することのみで多機能を実現する建築構法を開発する。まず、木材の断熱性能、吸放湿性能、蓄熱性能などを、素材レベルのみならず実大の部材断面レベルで計測し、それらの特性に基づいたパネルの断面構成等を検討する。また断熱性能を高めるための木材への加工を検討し、より合理的な断面構成とする。さらにこのパネルを構成して作られた建築空間において実測を行い、温熱環境の特性や蓄熱の影響を明らかにする。最終的にはパネルの仕様と温熱環境性能の関係を把握し、要求される性能に応じたパネルの設計方法およびその構成方法を確立する。
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研究実績の概要 |
多機能な木材パネルを実現するにあたり、まず木材の熱的物性を再確認した。吸放湿性に関しては湿度応答法における実験より吸湿の状況を確認することができた。またブースを用いた実大サイズでの検討を行い、その効果を確認したが、厚さによる影響は確認できなかった。 木材の熱伝導率や比熱に関しては、現在一般的に用いられている値は、1960年代に行われたDunlopらがブンゼン氷熱量計を用いて測定されたデータに基づいており、その後、示差走査熱量計による測定のデータがあるものの、数値的には近い値であった。これに対し、松下らが大容量での断熱型熱量計を用いて計測した比熱は、Dunlopらが示した比熱の値より1.1倍程度高かった。この差については、サンプルによる誤差としては考え難く、計測方法によるため、さらに言えば試験体が粉体レベルのものとある程度の体積を持ったものとの差によるものではないかと考えられた。これを検証するため、改めて両者の試験による計測を検討しているが、大容量での断熱型熱量計での計測装置の使用の手配が遅れ、年度内での実施が出来なかった。今後これらについて実施を検討していく。 木材の断面に空気層を設ける加工に関しては、モルダーおよび丸鋸を用いていた材に細い溝を入れる方法を考案し、サンプルの製作を行った。将来的にはモルダーの刃をそのような仕様で製作すれば、モルダーのみの加工で材料を製造できると考えられる。このサンプルを用いたパネルについて、今後、環境試験室を用い、屋内外を想定した環境条件を再現して評価を行う予定である。 また、以前に建設した縦ログ構法による応急仮設モデル住宅に関して、その縦ログパネルの断熱性、蓄熱性の影響を確認するため、温熱環境の計測の準備を進めた。今後建物のパネルおよび空間での温熱状態と外部における温湿度を計測し、それらのデータの蓄積を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたように、木材の比熱に関しては大容量での断熱型熱量計での計測装置の使用を検討しているが、装置の借用に関する情報収集が十分にできていない。性能評価機関等での依頼試験については可能であるが費用が高額となってしまうため、計測可能な研究機関を把握して、共同実験等の方法を検討していくか、他の方法による実施を検討する。 木材パネルの仕様については、効率的に空気層を設ける方法を検討し、サンプルの試作は出来ており、令和6年度にパネルレベルで試作していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度においては、まず遅れている比熱測定の検証に関して大容量での断熱型熱量計測を実施する事を検討し、実大断面での物性の把握を行っていく。 空気層の加工をした木材パネルについては、溝等の仕様を変えたパネルを試験体として試作し、環境試験室を用いて、屋内外を想定した環境条件を再現して評価を行う。これによって得られたデータと再確認された木材の物性値との理論的な適合性を検討していく。さらにその適合性を踏まえ、温熱環境についてモデルによるシミュレーションによる解析の方法を検討してく。 一方、木材パネルを用いたユニット空間での温熱環境の実測に向けて、その試験体や計測装置などを検討していく。この際、パネルを建物の外壁として構成する方法についても検討を行う。 これらを令和6年度に推進していく予定である。
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