研究課題/領域番号 |
23K04149
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松田 礼 日本大学, 理工学部, 教授 (30469580)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 低周波音 / 風車騒音 / 振幅変調 / 心理生理反応 / 振幅変調音 / 感覚特性 / 生理心理反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究で対象とする低周波音は,風力発電施設の風車から発生する100Hz以下の低周波数成分を含む振幅変調音(振幅変調低周波音)である。本研究では,振幅変調低周波音を構成する物理量(搬送波周波数,音圧レベル,振幅変調度,変動周期)と4種類の感覚(低周波音特有の不快感,振動感,圧迫感と振幅変調により生じる変動感)を評価する心理反応量,および生理反応量との量-反応関係を実験により明らかにする。本研究の目的は,振幅変調低周波音における感覚特性を定量的に評価する指標を確立することである。さらに,振幅変調低周波音と定常低周波音を両方評価できる共通の指標も検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では,振幅変調低周波音における感覚特性を定量的に評価する指標を確立することを目的としている。振幅変調低周波音は100 Hz以下の低周波数成分を含む,音圧レベルが時間変動する振幅変調音である。本年度(令和5年度)は,振幅変調低周波音を構成する物理量と5種類の感覚(ラウドネス,変動感, 不快感,振動感,圧迫感)との刺激量-反応関係を実験により明らかにすることを目指した。 振幅変調低周波音を構成する物理量と感覚との関係を検討するために,低周波音用チャンバ内に被験者を着座させ,振幅変調低周波音を全身暴露したときの感覚を心理学的手法(評定尺度法,マグニチュード推定法)により測定した。振幅変調低周波音は純音の搬送波を振幅変調させ,等価音圧レベル,振幅変調レベル(振幅変調度),変動周期を変えて作成した。振幅変調低周波音を構成する物理量と,低周波音特有の感覚である不快感,振動感,圧迫感の3つの感覚,およびラウドネス,振幅変調による変動感を加えた合計5種類の感覚との関係を調べた。比較のため,音圧レベルが時間変動しない定常低周波音による実験も行った。 振幅変調低周波音によるラウドネスは,変動周期や振幅変調レベルによらずほぼ一定であった。また,振幅変調低周波音と定常低周波音の間に統計的有意差は認められなかった。振幅変調低周波音による変動感は変動周期によらずほぼ一定であったが,振幅変調レベルが大きくなると増加する傾向がみられた。変動感は物理量が同一条件の振幅変調低周波音と定常低周波音の間で統計的有意差が認められた。不快感,振動感,圧迫感は搬送波周波数が増加するにつれて振幅変調低周波音,定常低周波音のいずれにおいても減少した。ただし,搬送波周波数が20Hzの振幅変調低周波音における不快感,振動感,圧迫感は定常低周波音に比べて大きく感じる傾向がみられ,統計的有意差も認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(令和5年度)は,感覚閾値以上の振幅変調低周波音と定常低周波音を全身暴露した場合の心理反応測定を予定しており,研究の結果,振幅変調低周波音を構成する物理量と心理反応量(ラウドネス,変動感, 不快感,振動感,圧迫感)との関係や定常低周波音との違いも見出せるまでに至ったことから,おおむね順調に進展していると判断している。 本研究で対象としている低周波音の設定音圧レベルは,定常低周波音における感覚閾値に標準偏差の2倍,3倍の音圧レベルを加えた感覚閾値以上の音圧レベルとした。ただし,振幅変調低周波音は音圧レベルが時間変動するため,音圧レベルの時間平均である等価音圧レベルを用いた。感覚閾値以上の等価音圧レベルの振幅変調低周波音を全身暴露した時の心理反応測定を行った。ラウドネスと変動感は,刺激の強度を判断し,想定される正の数値を回答することによって感覚量を直接測定する方法であるマグニチュード推定法を用い,不快感,振動感,圧迫感は,「1.全く感じない」から「7.非常に感じる」の単極7段階の評定尺度を使用した。実験は低周波音用チャンバに設置した直径380mmのスピーカ4基から低周波音を発生させ,チャンバ内の椅子に着座させた被験者に低周波音を全身暴露した。実験に関する進捗状況として,実験条件数と被験者数については,ほぼ予定通り実験を実施することができた。 現在は,振幅変調低周波音と定常低周波音の全身暴露による生理反応測定実験のための予備実験準備,および心理反応測定実験から得られた心理反応量と振幅変調低周波音を構成する物理量との関係について詳細な解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(令和5年度)に実施した振幅変調低周波音と定常低周波音を全身暴露した時の心理反応測定は継続しつつ,生理反応測定の実験を実施する。振幅変調低周波音と定常低周波音を構成する物理量に関する実験条件は心理反応測定実験と同じ条件で実施する予定である。 次年度(令和6年度)から振幅変調低周波音と定常低周波音の全身暴露時における被験者の生理反応測定を実施する。測定する生理指標は胸鎖乳突筋電位,聴性誘発電位,心電位で,いずれも皮膚表面に電極を貼付して測定する非侵襲測定である。胸鎖乳突筋電位と聴性誘発電位の測定から得られたデータは,音刺激暴露を起点とした電位時間波形を複数重ね合わせて加算平均処理を行うことによって特徴を抽出する方法で解析する。心電位の測定からはRR間隔とLF/HFを算出し,安静時に対する音刺激暴露時の変化比率を調べることで自律神経系の活動度を評価する。これらの生理反応量の測定結果から,振幅変調低周波音の搬送波周波数や変動周期との関係,および自律神経系の活動度評価によるストレス反応について検討を進める。そして,振幅変調低周波音を構成する物理量と生理反応量との関係と,本年度の実験における心理反応測定で明らかになった物理量と5種類の感覚(ラウドネス,変動感, 不快感,振動感,圧迫感)との関係を組み合わせることで,測定対象とした生理指標による生理反応量と振幅変調低周波音の心理反応量との関係を検討し,振幅変調低周波音の感覚特性を定量的に評価する指標の確立を目指す。
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