研究課題/領域番号 |
23K04195
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
立花 潤三 富山県立大学, 工学部, 准教授 (60397502)
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研究分担者 |
榊原 一紀 富山県立大学, 工学部, 教授 (30388110)
中村 正樹 富山県立大学, 工学部, 教授 (40345658)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 位置情報ビッグデータ / 橋梁の統廃合計画 / マルチエージェントシミュレーション / 住民合意形成 |
研究開始時の研究の概要 |
インフラ施設の老朽化が進む中,人口減少や財源のひっ迫化等を理由としてインフラの統廃合の検討が不可避となっている。この統廃合における最大の課題は住民合意である。住民合意形成をうまく進めるためには従来のトップダウン的な情報提供だけでなく,住民視点に立った統廃合の影響を提示する必要がある。本研究では,地域住民の日常的移動を再現するマルチエージェントシミュレーションを開発し,ある橋梁が撤去された場合に個人が被る不利益を定量的に表す。本モデルは,携帯端末のビッグデータを活用することで従来よりも高精度で橋梁が無い場合の住民への影響を表現できる。この分析結果を実際の住民説明会に提示し有効性を検討する。
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研究実績の概要 |
(1)マルチエージェントシミュレーションにおけるエージェントの行動を決める満足度関数のパラメータ推定 (a)携帯端末から得られる位置情報ビッグデータ(LDDI LOCATION ANALYZER 以下KLA)を用いてパラメータ推定を行うための情報収集を行った。具体的には、対象地である富山市市街地内の交差点133カ所の時間毎交通量データを収集した。(b)パラメータ推定は、SA法を用いて行う。具体的手順を以下に示す。①距離、手間、費用の各パラメータに初期値を与え、シミュレーションモデルを回す。②KLAから得られた行動履歴との二乗誤差を算出する。③各パラメータの値を微小変化させ、再びシミュレーションを回す。④①~③までの作業をパラメータが収束するまで繰り返す。本年度は、パラメータ推定を行うためのSA法のプログラムの構築を進めた。 (2)2層構造化した最適ルート計算工程の構築 本マルチエージェントシミュレーションでは、エージェントに出発地と目的地を与えると満足度関数の最大化を目的とし,各移動手段(徒歩,自転車,電車,自家用車,バス)の組合せによる最適化問題を解くことでルートを決定する。このままでは計算量が膨大なため、本研究では2層構造化した最適ルートの計算工程を構築する。計算工程は「上層」と「下層」に分けることで計算量を大幅に削減する。本年度は、下層における道路の小区分への分割と各小区分ごとの最適ルート計算を進めた。計算には,重み付きの最短経路探索で効率的な解を提供するダイクストラ法を用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)SA法を活用した満足度関数のパラメータ推定、(2)2層化した最適ルート計算工程の構築、(3)対象地内の橋梁の評価、(4)住民合意形成における本研究結果の有効性の検証を行う。それぞれの進捗状況を以下に示す。 (1)Simulated Annealing法を活用した満足度関数のパラメータ推定 満足度関数はエージェントの動きを決める役割を持ち,距離,手間,費用を変数とした関数で表される。本研究のMASでは,徒歩,自転車,電車,自家用車,バスを組み合わせた移動を想定している。本研究では,満足度関数のパラメータ推定をSimulated Annealing法により推定する。本年度は、パラメータ推定を行うためのSA法のプログラムの構築を進めたがまだ完成には至っていない。令和6年度にはプログラム構築を完成させ、パラメータ推定を完遂する予定である。パラメータは平日朝,平日昼,休日昼の晴天・雨天別で求める。 (2)2層化した最適ルート計算工程の構築 目的地までの移動手段とルートは,満足度関数の最大化を目的とし,各移動手段(徒歩,自転車,電車,自家用車,バス)の組合せによる最適化問題を解くことで求まる。このままでは計算量が膨大なため、本研究では2層構造化した最適ルートの計算工程を構築する。計算工程は「上層」と「下層」に分けることで計算量を大幅に削減する。本年度は、下層における道路の小区分への分割と各小区分ごとの最適ルート計算を進めた。来年度は上層である小区分の組合せ最適化計算工程を構築し、1万人のエージェントでのシミュレーションを24時間以内で回せるモデルを構築する。(3)、(4)、に関してはシミュレーションモデル構築後に実行できるため令和6年後期から実施する。(4)に関しては、自治体との事前協議を進め、住民合意形成における有効性検討の準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Simulated Annealing法を活用した満足度関数のパラメータ推定 パラメータ推定を行うためのSA法のプログラムの構築を進めたがまだ完成には至っていないため令和6年度前期にはプログラム構築を完成させる。完成し次第パラメータ推定を行いエージェントの行動を決める満足度関数を構築する。 (2)2層化した最適ルート計算工程の構築 2層構造化した最適ルートの計算工程のうち「下層」における道路の小区分への分割と各小区分ごとの最適ルート計算を進めたがまだ完了はしていないため、令和6年度初旬に下層での計算を終え、令和6年度中に、上層である小区分の組合せ最適化計算工程を構築し、1万人のエージェントでのシミュレーションを24時間以内で回せるモデルを構築する。 (3)対象地内の橋梁の評価(令和6年)KLAを活用して作成したODデータおよび(1)で求めた属性別のパラメータをMASに入力してシミュレーション実験を行う。シミュレーション実験は対象橋梁19橋梁全てが存在する場合と各橋梁をそれぞれ撤去した場合の合計20パターンのシミュレーションをシナリオ毎に行う。シナリオは、平日朝、平日昼、休日昼とする。各橋梁の有無によって地域住民が受ける負担(効用関数の住民合計)を求め、橋梁の重要度を定量的に評価する。 (4)住民合意形成における本研究結果の有効性の検証(令和7年)従来住民説明会で用いている資料に加えて本研究結果を提示した場合の有効性を検証する。本研究結果では地域住民の不利益(合計値)が示すことができ,これら住民が受ける不利益を含め住民が知りたい情報を全て提示することが,信頼関係を築くための土台となると考える。富山市と地元住民の意見交換会を複数回開催し,この資料を提示することによる自治体職員などに対してヒアリング調査を行い、住民合意形成において住民が受ける不利益を示すことの有効性を検証する。
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