研究課題/領域番号 |
23K04214
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
中村 琢巳 東北工業大学, 建築学部, 准教授 (20579932)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 日本建築史 / 茶室 / 数寄屋 / 地方色 |
研究開始時の研究の概要 |
茶室は近世寺社建築や民家、町並みといった文化財ジャンルに比較して「地方色」という研究視点や文化財評価が極めて希薄な分野である。一方で、とりわけ明治時代以降の近代東北を凝視すれば、茶室や茶室を内包した数寄屋は、地方独自の建築的展開を呈したと考える。たとえば、雪国独特な庭園のあり方や寒冷地ゆえの内外観・建具の工夫、北山杉を主流とする京風茶室とは異なる「雑木」の多用、江戸時代から明治に至る武家流の定着と衰退そして近代における千家流の普及、といった歴史的展開を指摘できる。本研究は日本建築史研究のなかでも、こうした「茶室の地方色」に焦点をあてる。
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研究実績の概要 |
本研究は「茶室と数寄屋の地方色」に焦点をあてた日本建築史研究である。雪国寒冷地という風土性を有し、近世・近代で武家流から千家流への流派の継承・転換を経験し、かつ多彩な地域的文脈を有する東北地方は、地方色を考察する上で格好のフィールドといえる。 2023年度は研究着手時期であり、「近世から近代への継承と変化」「武家流と千家流の比較」「雪国の風土性と茶室」といった当初から設定している各テーマに適した事例の歴史的建造物実測調査を幅広く行った。たとえば、武家の茶室の近代を探る事例として、旧亘理邸(宮城県登米市佐沼)の歴史的建造物および古図の調査を実施し、旧邑主が明治を迎えて建てた住宅や茶室、庭園の記録化を行った。仙台市指定文化財・残月亭の調査もあわせて、給仕口の意匠や用材に千家流茶室と異なる特徴を帯びた点などを把握している。東北の近代における千家流の茶室については既往研究が少なく、本年度は文献調査によって研究事例を幅広く抽出した。そして比較分析のために他地方(東京および箱根)の千家流茶室の実測調査にも取り組んだ。雪国という東北独特な風土性からの茶室・数寄屋の検討としては、津軽地方の大石武学流庭園・瑞楽園および重要文化財民家・旧平山家住宅の数寄屋「離れ」の分析に継続して取り組んだ。この2件のケーススタデイについては、研究成果を日本建築学会大会の学術講演で発表することができた。たとえば旧平山家住宅の「離れ」の意匠的特徴として見いだされる重厚な戸袋に集約された装飾性や建具などあり方を、雪国仕様の観点から検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要で述べた通り、今年度は当初設定した視角である、時代変遷、武家と千家流、雪国といったテーマの事例調査(歴史的建造物の実測)を予定通り進めることができ、おおむね順調に進展しているといえる。加えて、とくに雪国である津軽地方の数寄屋建築の分析(瑞楽園および旧平山家住宅離れ)、裏千家出入り棟梁である木村清兵衛の作品、については継続的に研究を蓄積していたこともあり、今年度、学会発表(日本建築学会)のかたちで成果公表にもいたることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の今後の推進について、提示している「近世から近代への継承と変化」「武家流と千家流の比較」「雪国の風土性と茶室」という各テーマから述べていく。まず、近世から近代への継承と変化について、2023年度に明治時代から大正にかけての近代の事例を把握した。一方、2023年度は近世期の茶室に関する調査を実施していないため、2024年度は近世茶室の建造物調査を実施し、近代との比較の視座を整えたい。近世茶室の事例として、著名な茶人として知られる藩主・松平定信ゆかりの白河城下町での検証を進めたい。また東北における千家流茶室の近代での展開も、2023年度は調査実施にいたっておらず、2024年度で特に裏千家淡々斎ゆかりの東北茶室に着目し、フィールドワークに取り組む。雪国の視点は、これまでは津軽地方を中心に進めており、2024年度以降はより東北地方のほか地域も含めて、情報把握を進める。
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