茶室は近世寺社建築や民家、町並みといった文化財ジャンルに比較して「地方色」という研究視点や文化財評価が極めて希薄な分野である。一方で、とりわけ明治時代以降の近代東北を凝視すれば、茶室や茶室を内包した数寄屋は、地方独自の建築的展開を呈したと考える。たとえば、雪国独特な庭園のあり方や寒冷地ゆえの内外観・建具の工夫、北山杉を主流とする京風茶室とは異なる「雑木」の多用、江戸時代から明治に至る武家流の定着と衰退そして近代における千家流の普及、といった歴史的展開を指摘できる。本研究は日本建築史研究のなかでも、こうした「茶室の地方色」に焦点をあてる。
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