研究課題/領域番号 |
23K04220
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
土屋 和男 常葉大学, 造形学部, 教授 (60333259)
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研究分担者 |
内田 青蔵 神奈川大学, 建築学部, 教授 (30277686)
小沢 朝江 東海大学, 建築都市学部, 教授 (70212587)
植田 道則 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (50908085)
新妻 淳子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (20814172)
堤 涼子 常葉大学, 造形学部, 講師 (10816135)
伊達 剛 常葉大学, 造形学部, 講師 (20913560)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 民藝 / 田舎家 / 高林邸 / 高林兵衛 / 柳宗悦 / 民藝館 / 合板 / 民家 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の核心をなす学術的「問い」は、日本近代住宅史における「民藝」と「田舎家」に注目し、相互の交差と影響・展開をどのように描くことができるのか、ということである。この「問い」に応える上で重要な事例として静岡県浜松市の高林邸を対象とし、以下の研究を行う。 1)高林邸の建築群と屋敷空間、家具・調度の総合的な調査、2)高林兵衛の史資料の分析、3)地域の近代化・産業と建築群との関係の考察を行い、これらを通して 4)「民藝」と「田舎家」の思想的・表現的実像を解明し、近代日本におけるその影響と住宅史上での位置付けを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、日本近代における「民藝」と「田舎家」に注目し、双方の文化・思想活動が、建築においてどのように現れたのかを解明し、その相関と住宅史上での位置付けを明らかにすることを目的とする。この研究にあたっては、「民藝」「田舎家」双方に直接的に関わる建築が現存し屋敷構えが一体として残る、静岡県浜松市の高林邸を主たる調査対象とする。2023年度には以下のような研究を行った。 1)高林邸の建築群と屋敷空間、家具・調度の総合的な調査:■田舎家の詳細平面図作成:田舎家の詳細実測を行ったところ、材料寸法にばらつきがあり、古材の転用であることが明確になった。■庭、外構屋敷空間の図面作成:降蹲踞等の石造建造物の他、敷地内水路等の実用的施設についても、積極的に「見せる」意図が見られた。■室内、家具・調度、住設機器等の実測:主屋における「民藝」的特徴が見られる部分等について、展開図の作成を行った。 2)高林兵衛の史資料の分析:■大礼博「民藝館」の構想ノートと高林邸主屋の比較:高林家所蔵のノートに描かれたスケッチ、実現した大礼博「民藝館」の古写真、現存する高林邸主屋の3者を比較し、その共通点と差異についてまとめた。 3)地域の近代化・産業と建築群との関係の考察:■地域における建材等に関する情報収集:高林邸主屋に用いられている合板について、地域の産業との関連を地元図書館等で調査した。 4)「民藝」と「田舎家」の近代日本住宅史上での位置付け:■柳宗悦邸見学および史料の閲覧、検討:日本民藝館において柳宗悦邸の見学と未公開史料の閲覧、ヒアリングを行った。■式場隆三郎邸の見学:式場邸を見学し、高林邸、柳邸との比較・検討を行った。■濱田庄司の家具ついてのレクチャー:濱田琢司氏を高林邸にお招きし民藝と家具に関する意見交換を行った。■石川家清水農園内住宅の調査:「田舎家」の比較事例として、石川農園内住宅の調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記した4つの内容について、それぞれ述べる。 1)高林邸の建築群と屋敷空間、家具・調度の総合的な調査:■田舎家の詳細平面図と庭、外構屋敷空間の図面作成はほぼ終了した。■引き続き、以下の実地調査を継続する。各建物の立断面図の作成。附属建物等の実測調査、痕跡調査。室内、家具・調度、住設機器等の実測、図面作成。 2)高林兵衛の史資料の分析:■大礼博「民藝館」の構想ノート、古写真の分析はほぼ終了したが、分析を進める過程でノートの作者が複数人によるものではないかという可能性が浮上している。これについては継続的に検討を進める。■家計簿、雇人支払帳を通覧し表にまとめたが、欠落箇所があり、全体像の把握には至っていない。 3)地域の近代化・産業と建築群との関係の考察:■地元産業と関連した特徴的な材料として、合板の使用が挙げられる。これは日本楽器製造によるものである蓋然性が高い。引き続き検討を進める。 4)「民藝」と「田舎家」の近代日本住宅史上での位置付け:■民藝関連の比較現地調査として、柳宗悦邸、式場隆三郎邸、濱田庄司邸等を訪問し、その共通点と差異について比較検討している。また、この過程で柳宗悦邸の史料に触れる機会を得たため、その分析に着手している。■主婦の友社創業者の石川武美が静岡市清水区内に造営した農園内住宅を調査する機会を得た。これは高林家とは異なるタイプの、近代建築家の設計による「田舎家」の事例であり、「田舎家」の類型を知る上で本研究の一部として組み入れた。■濱田琢司氏との意見交換を通して、「民藝」の展開について建築以外の観点から知見を広めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、概ね研究計画通りに進行しているので、研究計画に記した4つの内容に変更はない。 1)高林邸の建築群と屋敷空間、家具・調度の総合的な調査:■進行中の実地調査を継続し、図面を作成する。特に主屋の展開図、天井伏図作成を優先する。■建築図と造園・外構図を総合した全体図の作成を行う。同様に模型も制作する。 2)高林兵衛の史資料の分析:■史料と実測結果と合わせた建設、製作時期や意匠の内外の関連性、屋敷内での建物相互の関連性等の検討を行う。 3)地域の近代化・産業と建築群との関係の考察:■高林邸の建築材料を把握するために外部仕上表、内部仕上表を作成する。■前近代からの地域産業と結びつく材料(葛壁、葛布等)の使用と他事例との比較。■近代における地域産業と結びつく材料(合板等)の使用と他事例との比較。■近代における新規材料(白色ガラス、ステンレス等)の使用と他事例との比較。 4)「民藝」と「田舎家」の近代日本住宅史上での位置付け:■「民藝」の代表的事例である柳宗悦邸の史料分析を行い、高林邸との比較検討を行う。■「田舎家」の一類型である石川農園の建築史料調査、外構調査を行い、高林邸との比較検討を行う。■上記3)における比較対象として、日本楽器製造の合板が使用されているとされるヴォーリズ設計の住宅、合板の使用例として知られる木子七郎設計の住宅、近代数寄者による近代住宅である原三溪邸、同時代の先進的住宅であったレーモンドや吉田鉄郎設計による住宅等を実地調査する。■これまでの成果をまとめる意味で、民藝や数寄者に関する美術史、哲学等の研究者を招いた研究会を行い、本研究の展開に関する示唆を得る機会とする。
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