研究課題/領域番号 |
23K04224
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 近畿大学工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田中 和幸 近畿大学工業高等専門学校, 総合システム工学科 都市環境コース, 教授 (50805520)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 打放しコンクリート / 近現代RC造 / 保存・修復 / 文化財 / 近現代鉄筋コンクリート造 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国における近現代のRC造は、文化財的な価値が認められるようになると保存・修復の際に設計者のコンセプトや建造物が持つ特徴を損なわない改修が求められている。ところが、打放しコンクリートに対しては文化財的な修復の方針が確立されているとは言い難い。本研究では、コンクリート面に写し出された堰板の木目から型枠の加工形状と組み立て方法を読み解き、設計者の意図や施工者の挑戦に加え、型枠工事に従事した職人の技術的な特徴を明らかにし、これらの点を尊重し文化財建造物として相応しい打放しコンクリートに対する修復の指針を示そうとするものである。
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研究実績の概要 |
本研究では、打放しコンクリート面に写し出された堰板の木目から型枠の加工形状と組み立て方法を読み解き、設計者の意図や施工者の挑戦に加え、型枠工事に従事した職人の技術的な特徴を明らかにし、これらの点を尊重し文化財建造物として相応しい打放しコンクリートに対する修復の指針を示そうとするものである。 令和5年度は、昭和39年に竣工し三重県伊賀市にある坂倉準三設計の旧上野市庁舎を対象に、打放しコンクリート面に写し出された型枠の継ぎ目の実測調査に加え、旧上野市庁舎の設計図書を保管している国立近現代建築資料館ならびに伊賀市文化財課において資料調査を行った。また、設計監理で現地に常駐していた坂倉建築研究所の好川忠延氏より型枠の施工状況について情報収集を実施した。 調査の結果、外部の柱には100㎜幅の本実型枠を使用することを基本としながら、30㎜、60㎜、70㎜、80㎜、110㎜幅の役物を使用していることが確認できた。そして、型枠の配列は100㎜幅のものを左端から並べ、右端を役物の型枠で調整しており、このことは設計図面より読み取ることができた設計者の意図に合致していることが分かった。 その一方、役物の型枠を集めて構築された柱は、見えにくい箇所に位置しており、100㎜幅の型枠が不足したことにより現場で対応した可能性を示唆した。また、耐震壁が取り付く柱では、左端に役物の型枠を使用していたが、それは柱と壁の入隅部を100㎜幅の型枠とすることを優先し、型枠の配列を変えた結果であったことを読み解いた。さらに、柱のコーナー部分には、コンクリート面に写し出された型枠の継目より、特異な形状の面木を使用していたことが判明した。 これらは、旧上野市庁舎の特徴である打放しコンクリート面を綺麗に見せる為に、設計サイドと現場サイドが協働でコンクリート型枠に取り組んだ結果であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は打放しコンクリート建造物の実測調査と資料調査を予定通り実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は打放しコンクリートが特徴である旧上野市庁舎を対象に現地調査と資料調査を実施した。令和6年度は、調査範囲を広げて、文化財となっている近現代RC造打放しコンクリート建造物を対象に現地調査と資料調査を行う予定である。 そして、本研究の目的である打放しコンクリートの文化財的な保存・修復の指針を示せるよう、近現代RC造における打放しコンクリートの現状を把握した上で、修理工事での問題点等を確認する計画である。
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