研究課題/領域番号 |
23K04226
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
|
研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
安 箱敏 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 准教授 (30725908)
|
研究分担者 |
石田 潤一郎 武庫川女子大学, 建築学部, 教授 (80151372)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | 住宅対策委員会 / 宅地開発事業 / 市街地計画 / 京城府営住宅 / 朝鮮住宅営団 / 大韓住宅公社 / 上道地区 / 新村地区 / 朝鮮半島 / 京仁地域 / 戦時期 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ソウル、仁川および両市間の京仁地域において、戦時体制期から「大韓民国都市計画法」が制定される1962年までの期間に策定・施行された都市開発事業を解明しようとするものである。戦時期に進められた都市事業は、韓国解放後に土地・施設の所有権の移転を進めるが、朝鮮戦争で大きな被害を受け、以後、計画理念を欠いた状態で様々な開発事業が進んだ。この経過は、植民地権力による総力戦体制下の特殊な都市計画を、戦後復興期の社会経済状況に即して再編・転換していく過程と捉えることができる。ここにおいて、日本による諸事業の完成状況を明確にし、1950年代に進行する地域再編成の様態と背景を解明する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ソウル・京仁・仁川地域における1940年代から1960年代までを研究対象とした「都市政策」と「空間構造」の解明にある。「都市政策」においては「京仁市街地計画」および都市防空事業を含む「公園緑地計画」に、「空間構造」においては「区画整理事業」および「住宅地造成事業」に主軸を立て、これらの都市政策によって現れる空間実像を追跡することを目標としている。当初の計画としては、京仁間の「工業用地」計画の解明をはじめに、市街地計画によって決定・区画される「公園・緑地計画」について解明、最終年度には対象地域の「住宅地造成」過程を解明し研究を完成することと設定した。当該年度においては年間計画を並行に進め、初年度と次年度の達成目標における京仁地域の「富平地区」を中心に研究が進んでいる。これに加えた最終年度目標においては、京城府における「府営住宅地」の開発事業を先に解明が進んでいる。京城府では、1930年代の早い時期から民間開発業者による住宅地開発が進んでいた。1939年の「住宅対策委員会」の設置は行政による宅地開発を促し、1940年代の戦時統制下という厳しい状況にもかかわらず官の主導による住宅造成事業は進展を果たしていく。本研究では、京城府の市街地計画による府営住宅地として構想され1940年から本格的に事業が始まる「金湖地区」「上道地区」「新村地区」の3地区の計画詳細を解明し、1941年に設立される「朝鮮住宅営団」の関与までを明らかにした。 以上の研究成果として、2024年度の建築学会学術大会において「富平地区」の「市街地計画公園」に関する調査結果について発表を予定しており、対象時期に行われた「住宅対策」に関する政策・制度成立から「京城府営住宅地」開発事業例については、2023年度の建築学会学術大会および「住総研研究論文集・実践研究報告集(No.50)」をとおして報告している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍中における近年の図書館整備や一般公開が進んだことをうけ、関連史料の発掘は極めて順調に行われた。韓国国家記録院(以下、記録院)による史料調査においては、オンライン公開史料の検索と現地訪問による原文調査を並行して行った。一般に公開されない行政史料を含めて、原図など原文史料の照会が必要な場合は、事前に所在場所を把握し調査に着手した(2024年5月の現在、記録院の所蔵史料は韓国内の4箇所(ソウル・京畿道城南市・大田・釜山)に分散保管されている)。終戦前後の文献調査においては、朝鮮総督府所管の行政史料は主に記録院が所蔵する原文史料に頼ることにし、韓国解放後の都市計画関連の規制法令集や計画図等については、韓国の国土交通部の公開史料を参考にしながら土地利用状況の痕跡を辿っていく方法で検証を進めた。今年度の具体的な現況照合範囲においては、総督府史料の大部分を保管する釜山記録館での文献捜索を先に、ソウル市内に残る府営住宅造成地の2地区(上道地区および新村地区)の現状を確認した。2000年以降の大規模な都市開発によって計画当初のほとんどの痕跡が消し去られた金湖地区(現・ソウル市金湖洞)に比較して、上記の2地区においては、計画時の街路網や公園といった都市基盤施設がロータリー公園や児童公園、空地として形跡を残していることを本調査によって確認できた。以上によって得られた成果については、前述した大会発表のほか、同時期の近代都市史に携わる日韓両国の研究者間の交流等で知見を深めてきた。今後の課題としては、戦後「朝鮮住宅営団」から事業主体を受け継いだ「大韓住宅公社」の事業詳細について解き明かし、終戦前後における「住宅地造成事業」の進展・変容の過程を明確にする予定でいる。これらを踏まえ、順調に進んでいることと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究方法においては、今まで続けてきた国内外の文献調査による詳細を把握、現地踏査等による照合確認作業を基本方法とする。2024年度においては、当初の目標であった「市街地計画」によって決定・区画される公園・風致地区・緑地地域をはじめとする対象地域に計画された「緑地計画」全般について考察を行う。1943年6月に開催された第6回市街地計画会議では、「高度国防都市計画」を目標とする大々的な「緑地計画」が企てられ法定都市計画との積極的な連係が図られるなど、戦時体制への突入は防空計画を促していく。都市計画における空地・緑地計画が重要課題として浮上したのである。本年度は、一部の解明が進んでいる京仁地域の「富平地区」における公園緑地計画に加え、同地域に設置された「保健広場」について追加調査を行う。さらには、法定都市計画と別途計画される防空緑地(郊外防空広場)について調査を始める。研究範囲においては、京城・京仁地域から仁川府の鶴翼地区までを視野に入れ、戦時体制下で遂行されていく「京仁市街地計画」「宅地造成事業」詳細の解明をもとに「公共空地」「公園緑地」計画について検証する。続いては、これらにおける韓国解放後の変容過程について追究することで本年度の研究課題を完成させる。
|