研究課題/領域番号 |
23K04228
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
溝端 一秀 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00271875)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | クランクトアロー翼 / 姿勢変化角速度 / 動的空力 / 煙流線 / PIV |
研究開始時の研究の概要 |
クランクトアロー主翼を有する超音速機の飛行特性予測や自律的誘導制御系設計に必須の動的空力特性(姿勢変化角速度に対する各種空力係数の変化率、すなわち微係数)について、機体模型の姿勢変化角速度を伴う風洞試験および非定常CFD解析における流れの3次元的可視化および時間的統計処理によって、クランクトアロー主翼を有する超音速機形状の動的空力にかかる周囲流れの空間的・時間的な構造・メカニズムを明らかにする。これによって、超音速機・極超音速機の空力特性・空力設計に関する定量的知見の蓄積に資すると共に、大気中を高速度で飛行する航空宇宙機の技術的成立性の構築に貢献する。
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研究実績の概要 |
クランクトアロー主翼を有する超音速機の飛行特性予測や自律的誘導制御系設計に必須の動的空力特性(姿勢変化角速度に起因する各種空力係数の変化率、すなわち微係数)について、機体模型の姿勢変化角速度を伴う風洞試験および非定常CFD解析における流れの3次元的可視化および時間的統計処理によって、機首・主翼・尾翼の空力干渉や主翼渦系と尾翼との干渉などの機体周囲の流れの構造・メカニズムを解明することを目的とする。これによって、超音速機・極超音速機の空力特性・空力設計に関する定量的知見の蓄積に資すると共に、大気中を高速度で飛行する航空宇宙機の技術的成立性の構築に貢献することを狙っている。実施事項は以下の通りである。 1)煙流線法およびオイルフロー法による機体周囲流れの空間的・時間的構造の計測: 機体模型姿勢変化を伴う動的風洞試験において、模型周囲に煙を流して流れを可視化する「煙流線法」および模型表面にオイルを塗布して動きを観察する「オイルフロー法」を用い、機首・主翼・尾翼の周囲流れの空間的・時間的構造を調べる。 2)非定常CFD解析による機体周囲流れの空間的・時間的構造の予測: 風洞試験と同等条件の非定常CFD解析によって機体周囲流れを解き、その空間的・時間的構造を調べる。 3)3次元ステレオPIV計測および時系列画像の統計処理による機体周囲流れの空間的・時間的構造の把握: 動的風洞試験において流れに注入された煙粒子の動きを2台の高速度ビデオカメラでステレオ撮影し、PIV法によって流れ場の空間的構造を調べる。さらに時系列映像を統計処理することによって、流れ場の時間的構造変化を解析する。 4)総合的解析: 以上を総合して、姿勢変化角速度を持つ機体周囲流れの空間的・時間的構造を考察し、機体にはたらく動的空気力の空間的・時間的メカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、実施項目毎に以下のように進捗のプラスマイナスがあるものの、総じて概ね順調に進展している。 1)煙流線法・オイルフロー法による機体周囲流れ構造の計測: クランクトアロー主翼の動的空力メカニズムにおいては翼上方の渦流れ構造が重要であり、煙流線法による空間流れの可視化の優先度が高いと考えられることから、煙流線法に焦点を絞った。機体模型にロール角速度またはヨー角速度を与え、クランクトアロー主翼上面、垂直尾翼側面、および機首側面の流れ場を可視化し高速ビデオ撮影した。映像から、ロール角速度またはヨー角速度によって左右主翼の前縁剥離渦強度に差が生ずること、垂直尾翼に横力が発生すること、さらにヨー角速度によって機首側面に剥離渦が生ずることが推定され、従前の天秤計測に見られたロールダンピング劣化およびヨーダンピング劣化のメカニズムを概ね説明できた。これは、当初計画より良好な進捗である。 2)非定常CFD解析による機体周囲流れ構造の予測: 機体周りの非定常空気流を解くための非定常CFD解析の手法改良を進めた。複雑な非定常流れを対象としていることから、計算の安定性、速度、および精度の並立に苦心している。 3)現有2次元PIVソフトの3次元ステレオ化・フォーカス一様化機器の導入: 当初計画通りに、本助成金を用いて所要の機器およびソフトウエアを導入した。 4)3次元ステレオPIV計測の試行: 本年度は煙流線法に注力したことから、次年度に延期することとした。
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今後の研究の推進方策 |
1)令和5年度は、上流から下流へと伸びる煙流線によって空気流を可視化し、高速度ビデオカメラによって撮影した。この手法では、流れ場の全体像を捉えることができる反面、カメラの視線方向(奥行き方向)の流動を捉えることが困難である。一方、次年度以降取り組むステレオPIV計測では、レーザーシート上での三次元流速ベクトル分布が計測され、奥行き方向の流速成分も分かるが、流れ場の全体像は同時には捉えられない。そこで、令和6年度は、これら二つの計測方法を補うために、流れを横断する煙線をストロボ的に生成し、この煙線が機体模型周囲でどう変形するかを観測する。これによって、流れの三次元的構造推定の確度を高める。 2)PIV計測については、令和5年度導入の機器およびソフトウエアを用いて、令和6年度はステレオPIV計測を実施し、時系列画像の統計処理を試みる。 3)煙線による可視化映像、ステレオPIV計測による時系列画像、および非定常CFD解析の結果を総合的に解析・評価して、姿勢変化角速度による動的空力メカニズムを推定する。
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