研究課題/領域番号 |
23K04233
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
赤星 保浩 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (60222519)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 宇宙ごみ / 超高速衝突 / 二段式軽ガス銃 / 固体ロケット / 空隙率 / 宇宙ゴミ / 宇宙環境 / アルミナスラグ / 固体ロケットモーター |
研究開始時の研究の概要 |
増加傾向にある宇宙ごみの中で、0.1から1mmのサイズの多くは固体ロケットモーターから排出されるアルミナスラグだと言われている。これらのアルミナスラグは形状がいびつなだけでなく、内部構造も不均質であり、空隙を有していることが多い。これまで超高速衝突時に形成されるクレータの外部形状依存性については多く研究されてきているが、外部形状が同じ大きさであっても内部に空隙がある場合とない場合で、超高速衝突時に生じるクレータの差異についてはあまり研究されてきていない。本研究ではアルミナスラグを例に取り、空隙率によるクレータ形成の違いについて数値解析ならびに実験の両面から解明を行う。
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研究実績の概要 |
超小型衛星のコンステレーションに伴い、軌道上物体の数は年々増加傾向にあるが、中でも0.1から1mmのサイズ範囲では固体ロケットから宇宙空間に排出される微小粒子(アルミナスラグ)が支配的になっていると言われている。固体ロケットから排出されるアルミナスラグは内部構造が複雑で均質ではない。一方、ISO24113では内部構造には関係なく1mm以上のアルミナスラグを軌道上に排出しないよう設計するよう要求している。本研究ではこのような不均質材料が宇宙機表面に超高速衝突したときの損傷評価を行い、均質材料との違いを実験的に明らかにしつつ、数値解析を援用することで損傷メカニズムの相違を明らかにする。同じ大きさの微小粒子でも、損傷程度が密度(空隙率)や不均一性にどの程度依存するかを数値解析ならびに実験の両方から明らかにしようとしている。 2023年度は外径1mmの中実アルミ球飛翔体とφ0.3mmの貫通穴を有する外径1mmの模擬飛翔体の2種類の飛翔体を用意し、九州工業大学に設置している二段式軽ガス銃で秒速3km程度に加速し、両者がアルミ板(ターゲット)に衝突した際に生じるクレータ形状の比較を行った。また、並行して数値解析コード(AUTODYN)を用いて、衝突実験と条件を揃えた解析を実施し、中実飛翔体と貫通穴を有するアルミ飛翔体によるアルミ板上に形成されるクレータ形成過程の分析を行った。ただし、現行の実験においては衝突方向に対する貫通穴の姿勢が特定できないため、数値解析ではいくつかの姿勢を仮定して解析を行い、衝突クレータ形状を比較することで、衝突直前での飛翔体の姿勢を推定した。これらの研究成果は2024年度の宇宙科学技術連合講演会や衝撃波シンポジウムなどで発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年7月14日午前9時過ぎにJAXA能代ロケット実験場で爆発事故が発生した。固体ロケットモーターから排出されるアルミナスラグの入手についてはJAXAと引き続き相談しているが、この事故の影響もあり、アルミナスラグをすぐに入手するのは困難な状況である。そこで2023年度はアルミ球に貫通穴を設けることで擬似的に空隙率を有する飛翔体を作成し、衝突実験を行なった。一方、JAXAの方では3Dプリンタを用いて空隙率30%程度のアルミナ粒子(直径3.2mm)の試作を行ってみた。2024年度にJAXA宇宙科学研究所が有する二段式軽ガス銃で試射してみて、アルミナスラグの代替品として使えそうであれば、九工大にも分けてもらうようJAXAと相談する予定である。分けてもらうことができれば、九工大でも衝突実験を実施しようと検討している。なお、これまでの研究成果をもとに、宇宙機関間宇宙ごみ調整会議(IADC)のWG3(Protection)におけるInternal Task 40-7において「JAXA_ShapeEffectsReport_V0.0.docx」として文書を取りまとめ、NASAの担当者に提出した。2024年4月にインドで開催されたIADCにおいて他国からのレポートも収集され、2025年4月にドイツで開催される次期IADCにおいて、レポートの統合と整合性確認などの作業を行うことになっている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は比較が容易であるという理由から厚板への衝突実験を行いクレータ形状での比較を行なった。今後は実際の宇宙機でよく使用される二重壁構造への衝突を検討する。また、改めて飛翔体形状や空隙率に着目した弾道限界曲線に関する過去の文献を調査し、飛翔体、板材の物性と弾道限界曲線との関係について整理を行う。これらの成果はIADC WG3のレポートにも反映させ、Steering Groupのレビューによる承認手続きを経て、IADCのHP上で公開される予定である。また、一部の研究成果は宇宙科学技術連合講演会、Aeroballistic Range Association、衝撃波シンポジウム、Hypervelocity Impact Symposiumなどでも発表を行う予定である。
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