研究課題/領域番号 |
23K04262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24020:船舶海洋工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
小林 寛 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 海上技術安全研究所, 上席研究員 (20361503)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | CFD / Naval Hydrodynamics / Dual Single Phase / Moving Mesh / Dynamic Overset Approach / Independent two phases |
研究開始時の研究の概要 |
港湾内での風・波・潮流を含めた実際の水や空気の流れを再現した計算領域内で、自由航走して着桟する船体運動のシミュレーション手法を開発する。同一の格子セットで、地球固定座標系をベースとした移動格子法を用いて、水面下及び自由表面の計算と水面上の空気流れの計算を分離して実施し、両者から船体に働く荷重を合算して船体運動計算を行うことで風・波・潮流等の影響を考慮したシミュレーションを行う。過去に実施された着桟に関する実験結果等と比較して本手法の妥当性検証を実施する。本研究により、任意の海域・港湾内・水路等において、所望の気象・海象条件下での着桟等の船体運動の計算が可能になる。
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研究実績の概要 |
船舶周りの流場計算において、水(液相)の流れと空気(気相)の流れをそれぞれ別個に単相の流れとして計算する手法を開発した。計算格子は水の流場と空気の流場で同じ格子を使用する。対象物体の形状再現のため重合格子手法を導入し、現時点では定常流計算を行なっている。 船体周りの水の流場を、単相のLevel-set法を用いて自由表面流れとして計算を行う。収束した計算結果を元に、空気の流場の計算を行う。Level-set関数の符号を反転させて解くべき領域を切り替えるとともに、水中のセルについては流速ゼロを与えることで、自由表面を仮想的なSolid wallと見做して計算を行う。同時に、乱流モデル等で必要な距離関数については、物体表面からだけではなく自由表面からの距離も考慮したものとし、自由表面上方を吹走することにより発生する境界層的な流場プロファイルも計算可能とする。鉛直方向の格子間隔については、自由表面の変形を解像するために必要なクライテリアから決定しているため、空気の境界層的な流場プロファイルを計算について必ずしも十分な細かさでない場合があるため、turbulence kinetic energy(k) と specific rate of dissipation (ω)については、壁関数に準じた取り扱いをすることで、安定的に計算が実行されるようにした。 一つの格子セットを用いた水の流場と空気の流場両方を求める検証計算を実施し、問題無く計算可能であることを確認し、本手法の有効性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画においては、初年度では計算機環境の整備を行うとともに、重合格子手法の高速化を実施する計画としていた。 コード開発用の計算機を導入するなどの計算機環境の整備を実施した。重合格子手法の高速化に関しては、重合格子手法において必要となる格子間の補間情報計算において、最も計算時間を要する逆問題(各格子の各セルが他の格子のどの位置にあるのかを求める)の高速化を主眼として研究を実施した。高速化に際しては、Fast Multipole Method(FMM)などの導入を検討したが、FMMは距離関数などの総和計算で非常に威力を発揮するが、最小値問題について有効に機能するかどうかの検討結果を得るまでには至っていない。そのため、当初2年目に行う予定としていた、Level-set法で空中部分となる領域についてもCFD計算を行う手法の開発を前倒しして実施した。当該手法の実施内容については、上の研究実績の概要に示すとおりである。重合格子手法の高速化については、予定した内容を未だ達成していないが、後述の今後の研究の推進方策に示すように、局所座標系による手法などの導入で極力高速化を図ることができると考えており、また2年目の内容の一部を前倒しして実施していることなどから、全体としては概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、定常計算において、水の流場計算結果を元に空気の流場の計算が成功している段階である。これを元に、流体力と船体運動と組合せたシミュレーション手法の開発を実施する。具体的には、次のようなステップにより、非定常計算において、水と空気の両方の流ればを同時に解く手法の開発を行う。 (1) 水(液相)の流れと空気(気相)の流れそれぞれについて、流場の変数を用意, (2) 水と空気を切り替えた流場計算を、繰り返し実行, (3) 流体力の評価においては、水と空気の両方の流体の影響を考慮 を予定している。 また併せて、重合格子手法の高速化についても引き続き開発を実施する。例えば、逆問題の解を絞り込んでいく際の初期値選定の際に、現在は、定式化の簡素化等の理由で、cartesianなBounding boxを使用しているが、これを局所座標系に対応したものにして絞り込みの効率化することで、逆問題求解の高速化を図る予定としている。 これらの手法の開発を通じて、同一の格子セットで、水面下及び自由表面の計算と水面上の空気流れの計算を分離して実施し、両者から船体に働く荷重を合算して船体運動計算を行うことで風・波・潮流等の影響を考慮したシミュレーション法を実現する。
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