研究課題/領域番号 |
23K04309
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
前田 佳孝 自治医科大学, 医学部, 講師 (40754776)
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研究分担者 |
新保 昌久 自治医科大学, 医学部, 教授 (70406049)
小松原 明哲 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80178368)
淺田 義和 自治医科大学, 医学部, 准教授 (10582588)
川平 洋 自治医科大学, 医学部, 教授 (90447285)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 薬剤師 / 視線計測 / 暗黙知 / ノウハウ / 医療安全 / 安全教育 / 暗黙知、ノウハウ |
研究開始時の研究の概要 |
熟練薬剤師は医師の処方を基に薬剤を正確かつ効率的に調剤できる。一方、そのノウハウは暗黙知であり、薬剤師間で共有されていない。特に新人への実践的なノウハウ教育は不十分であり、多くの病院で安全上の課題となっている。そこで、本研究では安全で効率的な調剤に必要なノウハウを抽出し、新人への効果的な教育手法を確立する。具体的には熟練者の観察可能な行動のノウハウと、その背景の行動意図等の内的ノウハウを抽出し、各々を紐づけて教育する。熟練者が様々な臨床状況で調剤に成功する理由の解明に主軸を置き、調剤で最も重要な薬剤師の視線に係る計測データを分析することで、広範なノウハウを抽出・教育する。
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研究実績の概要 |
本研究は薬剤師による安全で効率的な鑑査(医師の処方の妥当性や、準備された薬品の確認等)に必要なノウハウを、視線計測データに基づき抽出し、新人への効果的な教育手法を確立するものである。【実際の薬剤室】と【実験環境】での薬剤師の鑑査を分析することでノウハウを抽出する。 本年度は主に【実際の薬剤室】での検討を行った。経験年数3年目の3名、20年目以上の熟練者4名の薬剤師に注視点カメラ(Tobii Pro Glasses 2)を装着し、5分間で実際に鑑査を行ってもらった。得られた視線データを解析し、経験による差異を明らかにした結果、3パターンの鑑査方略が得られた。 【熟練者の鑑査方略】2つの方略(患者の症状に不適な処方の検出を目的とした注視/薬品の投与量や投与方法に関する薬学的な妥当性のチェックを目的とした注視)が認められた。 【3年目の薬剤師の鑑査方略】処方箋と調剤済みの薬品、薬袋の照合(2つ以上の情報同士の照らし合わせ)を主に実施していた。 以上より、経験の浅い薬剤師は処方箋と薬品の単純な一致を検証しており、熟練者は薬品同士の禁忌の検出や患者の疾患に対する薬品の妥当性の検証を行っていることが明らかになった。こうした熟練者が行う妥当性の検証では、患者背景や薬学に関する専門知識が必要とされる。次年度以降は本研究成果を発展させ、経験年数の浅い薬剤師が照合に加えて、妥当性のチェックのための注視を行えるようにするための教育方法を検討する。 なお、R5年度は実施には至らなかったが、類似名の薬品を扱う場面や、他者のエラーを検出する場面といったハイリスクな状況を実験環境下で作為的に生じさせ、薬剤師に模擬的に鑑査を実施してもらう予定である。その際の視線計測データを解析し、さらにノウハウを具体化する予定である。本実験に関する準備は概ね完了しており、R6年度初頭には実施できる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請時の研究実施計画において、R5年度は【実際の薬剤室】と【実験環境】での薬剤師の鑑査を分析することでノウハウを抽出する予定であった。 前者については、研究実績の概要に示す通り、予定通りに実施できた。 後者については、研究協力者の薬剤師から意見を得ながら、ハイリスク状況を再現した実験シナリオ(誤った処方箋や類似名の薬品を扱う場面など)を設定し、実験対象の薬剤師にシナリオに則り模擬的に鑑査をしてもらうことで、ノウハウを抽出する予定であった。しかし、対象薬剤部門における通常業務が繁忙であり、シナリオの設定に想定以上の時間を要したため、計画に遅れが生じた。R5年度末時点でシナリオの設定は概ね完了したため、R6年度初頭には実験環境下での検討を開始できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度は以下を実施する予定である。 【1.実験環境下でのノウハウの抽出】ハイリスク状況を再現した実験シナリオ(誤った処方箋や類似名の薬品を扱う場面など)を設定し、経験年数の異なる薬剤師にシナリオに則り模擬的に鑑査をしてもらうことで、ノウハウを抽出する。同実験では、対象者に注視点カメラを装着してもらう。 【2.教育すべきノウハウの選定】R5年度に明らかにした実際の薬剤室でのノウハウと、R6年度に明らかにする実験環境下でのノウハウには、安全上望ましくない方法や、教育よりも作業手順として整備すべきものを含む恐れがある。そこで、安全の専門家(分担者)と共に、教育すべきノウハウを選定する。 【3.教育用ツールの開発と試用】ノウハウの特徴に応じたツールを開発する。例えば、視線に係るノウハウは言語化が難しいため、視線映像等にノウハウを注釈として付与し、教育に活用する。 開発したツールを教育担当の薬剤師に試用してもらい、必要に応じて改良を図る。
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