研究課題/領域番号 |
23K04327
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
由比 政年 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (20262553)
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研究分担者 |
楳田 真也 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (30313688)
松下 紘資 西日本工業大学, 工学部, 准教授 (50913977)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 海岸災害 / 打上げ / 越波 / 海面上昇 / 海岸侵食 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,打上げ・越波統合算定モデルを高度化し,砂浜海岸背後域の災害リスクの将来変化特性を推定する.高波災害リスクの将来変化要因として,地球温暖化に伴う海面上昇と来襲波浪変化,および,砂浜侵食による波浪減衰効果の低下に着目する.砂浜とその背後の砂丘・構造物で構成される海浜システムを対象に打上げ・越波算定モデルを拡張・最適化した後に,海象変化(海面上昇,波浪変化)と海浜地形変化(砂浜幅や勾配変化)が重畳的に進行した際に,背後域の災害リスクに及ぼす影響を推定する.
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研究実績の概要 |
本研究では,砂浜とその背後の砂丘・構造物で構成される海浜システムを対象に打上げ・越波算定モデルIFORMを拡張・高度化するとともに,海象変化(海面上昇,波浪変化)と海浜地形変化(砂浜幅や勾配変化)が進行した際に,背後域の災害リスクに及ぼす影響を推定する.2023年度は,一連の研究の第1段階として,IFORMの拡張・最適化を視野に以下に示す検討を行って一連の成果を得た. (1)緩勾配海岸の極浅海域における打上げ・越波推定の高精度化:緩勾配海岸の極浅海域において,波の合体,追いつき,吸収が生じ,波数が減少(周期が増加)する現象について既往実験結果を参考にモデル化を行い,IFORMの推定精度を向上させることを試みた.モデル化にあたっては,砕波帯相似パラメータと無次元堤脚水深を主要パラメータとして選択し,経験的なモデル化を行って周期変化の影響を取り込むことで,従来問題とされた緩勾配海岸の極浅海域における推定精度を向上させることができた. (2)双峰スペクトル波浪に対する打上げ・越波推定法の構築:風波-うねりの双峰スペクトルが生じる場合の越波流量に関して,うねりの影響をエネルギー比率,波形勾配に着目してモデル化・実装し,適用可能な波浪条件を拡張することを試みた.モデル化にあたっては,二山型スペクトル波の波諸量(代表波高と代表周期)を入力条件として適切に定義して,打上げ・越波統合算定モデルに組み込む方法を提案し,拡張モデルによる算定結果は,従来の実験結果と良く一致することを示した. (3)海浜断面の長期変化と護岸越波量の関係を解明することを目的に,越波による被災を経験し,養浜等により海浜の回復が図られている海岸を対象に,護岸沖側の海浜断面の経時変化を考慮して越波量を算定し,海浜地形変化との対応を検討した.その結果越波量の期待値は海浜土砂量の増減と相関して変動する傾向を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,砂浜とその背後の砂丘・構造物で構成される海浜システムを対象に打上げ・越波算定モデルIFORMを拡張・高度化するとともに,海象変化(海面上昇,波浪変化)と海浜地形変化(砂浜幅や勾配変化)が進行した際に,背後域の災害リスクに及ぼす影響を推定する.2023年度は,一連の研究の第1段階として,IFORMの拡張・最適化を視野に以下に示す検討を行って以下の成果を得ている. まず,緩勾配海岸の極浅海域において,波の合体,追いつき,吸収が生じ,波数が減少(周期が増加)する現象について既往実験結果を参考にモデル化を行い,IFORMの推定精度を向上させることを試みた.モデル化にあたっては,砕波帯相似パラメータと無次元堤脚水深を主要パラメータとして選択し,経験的モデル化を行って周期変化の影響を取り込むことで,従来問題とされた緩勾配海岸の極浅海域における推定精度を向上させることができた.続いて,風波-うねりの双峰スペクトルが生じる場合の越波流量に関して,うねりの影響をエネルギー比率,波形勾配に着目してモデル化・実装し,適用可能な波浪条件を拡張することを試みた.モデル化において,二山型スペクトル波の波諸量(代表波高と代表周期)を入力条件として適切に定義し,打上げ・越波統合算定モデルに組み込む方法を提案し,拡張モデルによる算定結果は,従来の実験結果と良く一致することを示した.さらに,海浜断面の長期変化と護岸越波量の関係を解明することを目的に,護岸沖側の海浜断面の経時変化を考慮して越波量を算定し,海浜地形変化との対応を検討した.その結果越波量の期待値は海浜土砂量の増減と相関して変動する傾向を確認した. 消波ブロックによる打上げ・越波低減効果評価法の構築や研究成果の学術論文発表が当初予定より遅れ気味であるが,全体としてはおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,初年度に実施した研究の結果を踏まえて,以下に示す検討を行う. まず,初年度に引き続き,IFORMの高度化と適用性拡張を試みる. (1)砂浜-砂丘(構造物)海岸に対する越波推定モデルの拡張・最適化:幅広の砂浜(バーム)が有する打上げ高の減衰効果モデルを発展活用し,砂浜-砂丘系背後への越波量を適切に評価できるようモデルを拡張・最適化する.(2)消波ブロックによる打上げ・越波低減効果評価法の構築:護岸前面の消波ブロックが有する打上げ・越波低減効果を,既往の実験結果や他モデル表現を参考に低減係数の形で表してIFORMに実装し,適用可能な設置条件を拡張する. 合わせて,温暖化による海象変動・砂浜侵食が打上げ・越波災害に及ぼす複合影響評価に着手する. (3) 海面上昇・波浪特性変化の影響解析:予想される海面上昇および波浪特性の変化(規模,変化速度)を既往知見に基づいて類型化して設定し,砂浜-砂丘(or 構造物)系のモデル地形を想定したパラメータスタディを体系的に実施して,海象変化が打上げ・越波特性に及ぼす影響を評価・整理する.(4) 砂浜侵食の影響解析:予想される砂浜侵食の進行を既往知見に基づいて類型化して設定・表現し(汀線後退,海底勾配変化,Brunn則的な平行移動等),断面モデル地形に対して体系的なパラメータスタディを行って,砂浜侵食が打上げ・越波特性に及ぼす影響を評価・整理する.
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