研究課題/領域番号 |
23K04350
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大場 武 東海大学, 理学部, 教授 (60203915)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 火山灰 / 付着成分 / 河川水 / 富士山 / 噴火 / 水道水 |
研究開始時の研究の概要 |
富士山の来るべき噴火は、首都圏の生活環境に対する脅威である。噴火により放出される火山灰の堆積は首都圏のインフラストラクチャーに甚大な被害をもたらすと想定されている。本研究では、水道水の水質に対する火山灰の影響に焦点を当てる。殆どの水道水は、河川から取水し浄水場で浄化されて住民に供給されている。火山灰粒子の表面には、マグマに起源する陰イオンや、金属イオンが付着している。これらの成分は殆どが水溶性であり、地表に堆積した火山灰粒子が降雨を受けると成分は溶出し、河川に流れ込み、浄水場に混入する。これらの溶出成分のいくつかは高濃度の場合、人体に有害であり、その影響を評価する必要がある。
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研究実績の概要 |
本研究では、富士山の噴火により影響が懸念される首都圏の河川水の成分変化を予測し、防災に貢献する。富士山の噴火が首都圏に及ぼす最大の影響としては、火山灰の堆積が想定されている。火山灰の溶存成分は、河川水を通じ水道水の水質悪化をもたらす可能性がある。火山灰粒子の表面には、火山ガスに起源する成分や、火山灰から溶出した成分が付着しており、火山灰が地表に堆積し、降雨を受けると溶存成分は地表水を通じて河川に流れ出し、浄水場に到達する。一般的に、浄水場の沈でん池やろ過池は、蓋がなく開放されているので、降下した火山灰が直接混入する可能性もある。火山灰に付着する成分はマグマに起源し、複数の過程を経て、浄水場にたどり着く。火山灰付着成分の上水道水に対する影響を解明するためには、火山灰に実際に影響されている河川水を採取・分析することが最も直接的で有効な方法である。2023年度は、鹿児島県の桜島火山周辺において3月27日と28日の二日間にわたり河川水の採取を実施した。桜島火山は鹿児島湾の内部に位置している。最初に鹿児島湾の北西部の姶良市平松の思川で河川水を採取した。河川水は川に架かる橋の上からロープに結び付けたバケツを川面に下すことにより採取した.採取後は,即座に熱電対式デジタル温度計で水温を測定した。3月27日はこの他,七ケ所で採水を行った。3月28日は,最初に霧島市福山町福山の湊川に架かる橋の上から採水を行った。引き続き,計14か所で採水を行った。最後の採水地点は鹿屋市浜田町の高須海岸に流出する小さな河川で行われた。27日の最初の採水地点は桜島の火口から北方に位置し,最後の採取地点は,桜島の火口から南南東の方向に位置する。鹿児島湾に沿った採水地点はほぼ等間隔であり,河川水の分析により桜島火口を起点とする方角に依存した火山灰の影響を評価できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Witham et al (2005)は既存の火山灰溶出成分に関する多数の論文をレビューし、環境と健康に最も関連性のある元素や化学種として、As、Cl、F、Fe、Hg、Pb、Se、SO42-を挙げた。Fe を含むいくつかの元素は、火山灰の表面酸性度または反応性を増加させ火山灰に関連する呼吸器系の危険性が増加させると指摘している。Witham et al (2005)は火山灰に吸着する特に有害元素として、フッ化物(HF由来)を指摘している。飲料水のフッ化物濃度が基準値を超えると、歯のフッ素症のリスクが高まり、10 (mg/L)以上の濃度になると骨のフッ素症を引き起こす。1997年のメキシコ、ポポカテペトル山噴火で放出された火山灰の溶出液からF-が検出された後、メキシコ政府の飲料水に関する委員会は飲料水のモニタリングプログラムを開始した。ポポカテペトル山の周辺では、地元住民に事前に警告を出し、浄水池に蓋をして降下火山灰による汚染を防いだ。本研究では既存の研究を参考にし,地表に堆積した火山灰が河川水の水質に及ぼす影響を解明する。 2023年度では現地調査として、桜島周辺の河川で河川水を採取した。桜島火山は頻繁に噴火を繰り返している火山であり、新鮮な火山灰が山麓や周辺地域に大量に堆積している。火口に近い河川水は火山灰に由来する成分を含んでいると想定される。また室内実験として、桜島で雨水に洗われていない火山灰を採取した。実験室に持ち帰り、純水に浸し、溶出する成分を分析し、桜島山麓の河川水成分との比較を行った。
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今後の研究の推進方策 |
桜島火山から放出された火山灰は、山麓に最も多く堆積しており、その影響を見積もるには、桜島火山の山麓に発達する河川で河川水を採取し、化学組成を分析することが適している。しかし、2024年3月に実施した調査では、桜島山麓の河川は河川水が無い涸川の状態であり河川水の採取はできなかった。今後は、降水の影響が大きい時期に調査を行い河川水の採取を試みる。2023年度では河川水を22カ所で採取し、pH測定とイオンクロマトグラフによる陰イオン組成分析を行った。2024年度は、陽イオン組成について2023年度に採取した試料水の分析を行う予定である。
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