研究課題/領域番号 |
23K04357
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
武田 雅敏 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30293252)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 熱電変換材料 / シリサイド / 異方性 / 結晶方位 |
研究開始時の研究の概要 |
β-FeSi2は地殻中に豊富に存在する元素で構成された熱電材料であり,安価かつ毒性が極めて低く,排熱利用発電など大規模な利用に最適な材料であるが,実用化には更なる性能向上が必要である.β-FeSi2単結晶では熱電物性に異方性があることが明らかになっており,多結晶体においても結晶方位の制御により性能向上の可能性がある.本研究では,共析反応のみで相変態が完了するSiとβ-FeSi2の共存組成に着目し,その相変態挙動を調査するとともに,一方向凝固や温度勾配下での熱処理等によりβ-FeSi2の結晶方位制御を行う.これによりβ-FeSi2基材料の熱電物性の異方性を明らかにし,その性能向上を目指す.
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研究実績の概要 |
β-FeSi2/Si複合体の結晶方位制御の前段階として,出発材料であるα-Fe2Si5の結晶方位を制御する必要がある.本研究では一方向凝固法により,結晶方位の揃った試料の作製を行った.Si:Fe=70.5:29.5の組成の試料を電気炉にて溶融し,坩堝の移動と炉内の温度勾配を利用して一方向凝固させた.得られた試料を切り出し,X線回折による極点図測定,EBSD(電子線後方散乱回折)にて結晶方位とその分布を測定した.その結果,数mmサイズの結晶粒を持ち結晶方位がある程度揃ったα-Fe2Si5が得られたことを確認した. 得られたα-Fe2Si5に所定の温度,時間で熱処理を施し,β-FeSi2とSiからなる複合体へと相変態させた.SEMによる組織観察の結果,従来と同様にβ-FeSi2を母相としてそこに数百nmサイズのSiが分散した組織を有することを確認した.X線回折によりSi相{111}面,β-FeSi2相{101}面の極点図を測定した.Si{111}面に関しては,120°の角度関係を持ったスポットが観測された.Siはβ-FeSi中に微細に分散しているが,それぞれのSi粒子は同じ結晶方位を持っている,つまり結晶方位が揃っていることを意味する.この結晶方位が相変態前のα-Fe2Si5相の結晶方位と関係があるのかは,現時点では不明である. 一方,β-FeSi2相の極点図測定では明瞭なスポットは観測できなかった.X線回折の強度が弱いことやバックグラウンドが高いことも原因と考えられるため,今後,測定条件や試料の表面処理の再検討を行う必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一段階であるα-Fe2Si5を一方向凝固により作製し,数mmサイズで結晶方位がある程度揃った試料を得ることができており,その後の相変態の実験を予定通り実施することができた.また,相変態後のβ-FeSi2とSiの複合体において,Si相の結晶方位が揃っていることを見出し,当初期待していた結果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
出発材料であるα-Fe2Si5について,一方向凝固により得られる試料の結晶方位の制御性を向上させるため,装置や凝固条件の改善を行う.特に,使用する坩堝の材質,凝固速度の影響について調査する. 相変態後のSi相の結晶方位は明らかにすることができたが,β-FeSi2相の方位は現在のところ不明である.そこで,EBSDおよびX線回折にてβ-FeSi2相の結晶方位の解析を行う.そのためには試料表面を平坦で歪みの少ない状態にする必要があり,研磨条件や研磨手法を検討する. 得られた試料の熱電特性の異方性を評価するための測定方法を検討し,実際に測定を試みる.
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