研究課題/領域番号 |
23K04358
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
西野 洋一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (50198488)
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研究分担者 |
宮崎 秀俊 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10548960)
井手 直樹 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60262945)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ホイスラー合金 / 熱電変換材料 / 擬ギャップ / ゼーベック効果 / 相安定性 / 価電子濃度 / 熱伝導率 / 熱電変換 |
研究開始時の研究の概要 |
Fe2VAlやRu2TiSiのような擬ギャップ系ホイスラー化合物の価電子濃度はVEC=6.0であるが、元素部分置換や非化学量論組成を利用することでVECを制御して、相安定性と熱電性能の関連性を追究する。VEC制御により擬ギャップ内のフェルミ準位を最適化すると出力因子は増大するが、同時にVEC=6.0から外れるほど相安定性の低下に起因して(格子)熱伝導率が低減することを検証し、無次元性能指数ZT=0.6を目標にして熱電性能の向上を図る。
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研究実績の概要 |
価電子濃度VEC=6.0を有する擬ギャップ系ホイスラー化合物について、擬ギャップ内のフェルミ準位を最適化して相安定性の制御と熱電性能の向上を図った結果、以下の成果が得られた。 1. Fe2V0.97Al1.03-xSixについて350 Kの熱伝導率を調べた結果、x=0では20 W/mKであるが、Si置換したにもかかわらずわずかに増加し、x=0.06で21 W/mKとなった。一方、x>0.06では熱伝導率は減少に転じ、x=0.16で14.5 W/mKまで低減した。電子熱伝導率はx=0.06までは大きく減少し、それ以降は緩やかに増加したため、格子熱伝導率はx=0.06、つまりVEC=6.0で最大値を示し、VEC=6.0から外れると減少する。VEC=6.0においてフェルミ準位が擬ギャップの底に近づき凝集エネルギーが増加するので,規則構造が強く安定化することによる。 2. Ru2TiGeはRu2TiSiと同じく擬ギャップ系である。Ru2TiGe焼結合金はp型を示し、ゼーベック係数は550 Kにおいて156μV/Kであるが、出力因子は750 Kで5.1 mW/mK2に達しており、Ru2TiSiより高くなった。また、Ru2TiSiの熱伝導率は300 Kで約20 W/mKとかなり高いが、Ru2TiGeでは16.6 W/mKと低くなり、これはRuのみならずGeも重元素であるためである。無次元性能指数は1000 KでZT=0.36を示したが、Ru2TiSiよりは低い。 3. BoltzTraPを用いてボルツマン輸送方程式に基づいてRu2TiSiの熱電特性の理論計算を行った結果、フェルミ準位近傍の低い状態密度を反映して僅かな化学ポテンシャルのシフトにより大きなゼーベック係数を示すことがわかった。したがって,Ru2TiSiではわずかなキャリアードーピングでもフェルミ準位の最適化が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ru系ホイスラー化合物の熱電材料への応用の可能性を研究した結果、Ru2TiSiはp型で、Ru2Ti1-xTaxSiはn型となり、いずれもバルクのホイスラー化合物熱電材料の中で世界最高性能(無次元性能指数ZT)を達成した。この成果をJALCOM誌(2023年)に論文発表し、さらに本研究課題に関連する研究成果について、国際会議において3件、国内の学会で4件の講演発表も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 擬ギャップ系ホイスラー化合物においては、元素部分置換だけでなく構成元素を化学量論組成からずらすことにより価電子濃度VECを制御することが可能である。VECの制御により出力因子が増大すると同時に格子熱伝導率も低減できるので、VECを制御した合金の相安定性と熱電性能の相関関係を追究する。 2. 熱電特性の中で最も重要な役割を演じるゼーベック係数そのものの理論は依然として極めて不完全である。ボルツマン輸送方程式を基礎におけば、ゼーベック係数はフェルミ準位における状態密度の傾きと絶対値の比に比例する。しかし,この関係が成り立っていることを定量的に実証した研究すらまだない。そこでバンド計算や高分解能光電子分光実験により、ゼーベック係数はフェルミ準位における擬ギャップ構造だけで決まると言ってよいかどうかを見極める。
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