研究課題/領域番号 |
23K04363
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山本 知之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40298196)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | アップコンバージョン蛍光体 / 再生可能エネルギー / 太陽電池 / 局所環境解析 / 第一原理計算 / 蛍光体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,吸収した光をより高いエネルギーの光に変換して放出するアップコンバージョン現象に着目し,近赤外光を可視光に変換して太陽電池発電に寄与できるようにすることを目指した高耐久・高効率アップコンバージョン型蛍光体として希土類元素添加酸化物を中心とした新規材料の開発と原子レベルでの構造評価や電子状態解析等を通して,次世代太陽電池として期待されているペロブスカイト太陽電池とのハイブリッド化を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では,再生エネルギーの有効活用を目的として,太陽光のエネルギーを充分に活用することを目指して,吸収した光をより高いエネルギーの光に変換して放出することを可能とするアップコンバージョン蛍光体を用いることにより,これまで発電に寄与していなかった近赤外光を可視光に変換して太陽電池発電に寄与できるようにすることを目指している.そのために高耐久のアップコンバージョン型蛍光体の高輝度化と,次世代太陽電池として期待されているペロブスカイト太陽電池とのハイブリッド化により上記目標を実現させることに挑戦している. 具体的には,種々のマトリックスに希土類元素を添加したアップコンバージョン型蛍光体を合成し,粉末X線回折法を用いた結晶構造解析,及びシンクロトロン放射光を用いた添加元素の原子レベルでの局所環境解析を行うとともに,小型の出力可変近赤外レーザーと小型分光器を組み合わせて独自に開発したアップコンバージョン発光特性を簡便に評価可能とする測定装置を用いたアップコンバージョン発光特性評価を行う.更には,上記の構造解析結果を利用して,X線光電子分光,紫外可視吸収分光,及び第一原理計算を用いた電子状態評価を進めている.これらの分析のより得られた知見を基に高耐久・高輝度アップコンバージョン蛍光体を創製を進めている. また,上記の高耐久・高輝度アップコンバージョン蛍光体の開発と並行して,高効率なアップコンバージョン型蛍光体とペロブスカイト太陽電池のハイブリッド化を進める. ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層,吸光層,ホール輸送層はスピンコート法で作製するが,太陽光の入射側となる透明導電層から吸光層までの間にアップコンバージョン蛍光体をスピンコート法で追加する形でハイブリッド化し,発電効率の評価を進めて行く.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度においては,シェーライト構造を有するAEMO4(AE = Ca, Sr, Ba, M = Mo, W)をマトリックスとし,発光中心イオンとしてErを添加した系を中心に合成,評価を進めた.試料は固相反応法を用いて温度,雰囲気,焼成時間等の条件を変えて作製し,作製した試料の結晶構造および相同定を粉末X線回折により行った.アップコンバージョンスペクトル測定を行い,マトリックス及びEr濃度とアップコンバージョン発光強度について整理した.それらの原料に,更に炭酸アルカリ金属(A2CO3,A = Na, K, Rb)を加えた試料を同様に固相反応法で合成し,同様に粉末X線回折およびアップコンバージョン発光スペクトル測定を実施した.その結果,原料に炭酸アルカリ金属を添加することにより最大約8倍のアップコンバージョン発光強度の増大が確認できた.炭酸アルカリ金属を加えることによってアップコンバージョン発光強度が向上した原因を検討するために,熱重量・示差熱分析,蛍光X線分析などを行った.更に,発光中心イオンであるErの局所環境評価を目的にシンクロトロン放射光施設においてX線吸収端微細構造(X-ray Absorption Fine Structure: XAFS)測定を行うと共に,第一原理計算を用いたErの局所環境解析結果との比較を試みた.これらの解析はおもに原子配列を中心とした検討であったが,それらに加えて,紫外可視拡散反射スペクトル測定を行い,電子状態とアップコンバージョン発光強度との関係の整理に取り組み,第一原理計算から得られるバンド構造,状態密度との比較検討を行った.また,走査型電子顕微鏡観察による粒の形態,サイズの評価も行った.
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今後の研究の推進方策 |
今後,本研究を進めるにあたって,2023年度に得られた,炭酸アルカリ金属添加によるアップコンバージョン発光強度の高輝度化を参考にして,異なる結晶構造を持つマトリックスに対して合成条件および発光中心となる希土類元素のペアを変えた試料合成を進め,2023年度に行ってきた,粉末X線回折,蛍光X線分析,示差熱・熱重量測定,走査型電子顕微鏡,紫外可視拡散反射測定などの実験室レベルでの分析,およびシンクロトロン放射光施設における局所環境解析実験を進めていく.それらの実験的な検討に加えて,第一原理計算を用いた局所環境解析および電子状態評価も同時に進めて行く. ここまでは代表者の研究室の所属大学院生との共同体制が基本であったが,すでに他の分野において国際共同研究を推進している理論計算に強いグループとの連携を進め,多電子効果を取り入れた数値計算により,より精緻な電子状態評価を行い,紫外可視拡散反射測定などの電子状態評価実験の結果との比較,検討を行い,アップコンバージョン発光強度が変わる理由についてより深い理解を目指していく.
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