研究課題/領域番号 |
23K04375
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安仁屋 勝 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30221724)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | イオン伝導 / 熱電効果 / ゼーベック係数 / 体積弾性率 / イオン導電体 / 金属ガラス / 結合強度・配位数揺らぎモデル / 結合揺らぎモデル / 熱電現象 / 超イオン導電体 / 貴金属カルコゲナイド / 結合ゆらぎモデル |
研究開始時の研究の概要 |
現在、熱電効果や熱電材料の研究が世界中で活発に行われている。その中で、多くの注目を集めているのが貴金属カルコゲナイドである。熱電現象の研究において、これらの物質は電子材料として扱われている。しかし、これらの物質は高温でイオン導電性を示すことから推察できるように、強い格子振動の非調和性を有する。その非調和性が熱伝導に影響することはよく知られているが、熱電材料の性能を決める他の因子への影響に関しては不明な点が多い。本研究では、以前に提案したイオン伝導に対する結合揺らぎモデルに基づき、貴金属カルコゲナイドの熱電現象におけるイオンダイナミクスの多面的な役割を理論的な観点から明らかにする。
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研究実績の概要 |
1)以前に提案したイオン伝導の結合揺らぎモデルによると、格子振動の大きい非調和性と電子状態は密接に関係する。同モデルの観点からイオン導電体のゼーベック係数に対する表式を導出した。理論式から分かる主な結果は以下のとおりである。結合揺らぎは電子状態のエネルギー幅を広げる。理論式は実験的に観測されているゼーベック係数の温度依存性を定性的に再現する。 2)イオン導電体の熱電的性質に大きく影響する格子振動の非調和性を探る手掛かりを得るため、微視的な経験的モデルを用いていくつかの物質の体積弾性率の温度依存性を調べた。熱膨張の効果をも組み込んだモデルから予想される温度依存性は実験値よりも弱く、特にイオン導電体では逸脱が大きい。この結果は、格子振動の非調和性を扱うには、従来のモデルでは考慮されていない要素を取り入れる必要があることを示している。 3)以前に行った欠陥濃度とイオン移動度が非線形にカップルするという理論的モデルの研究を基に、金属ガラスでの拡散を扱うモデルを提案した。当モデルによると、温度降下によってガラス中に存在する自由体積が凍結し、拡散係数の温度依存性にキンク挙動が生じる。 4)その他の研究として、ガラス形成物質の緩和現象に対して開発したモデルのリラクサー型強誘電体への展開、構造不規則性を有するイオン導電体での構造緩和と伝導緩和のデカップリング、ガラス形成物質における中距離構造とイオン輸送、イオン導電体と分子形状、イオン輸送と光学的性質、イオン伝導と焼結現象、イオン導電体におけるMeyer-Neldel則等に関する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目的は、①ゼーベック効果におけるイオンダイナミクスの影響、②イオン輸送とフォノンドラッグ、③非晶質性と熱電効果、などを調べることでその背景にある学理を解明し、銀や銅カルコゲナイドにおけるイオンダイナミクスが、熱電的性質にどう影響するかを結合揺らぎモデルの観点から明らかにすることにある。 これらの目的のうち、①に関しては、ゼーベック係数に対する理論表式の大枠を導出した。また、結合揺らぎによって電子状態のエネルギー幅が広がることも理論的に示された。②に関してはMeyer-Neldel則の観点から研究を開始した。③については、金属ガラスの拡散の温度依存性におけるキンク挙動に関するモデルの構築、イオン導電体における構造緩和と伝導緩和のデカップリングに関する研究など、関連する研究も含め、多くの進展があった。以上のことより、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
順番の入れ替えはあるかもしれないが、国内外で行われている他の研究の動向も見据えながら、半年毎の短期目標を立てて研究を行う。当面の目標は次のとおりである。 1)前年度の研究で導出したゼーベック係数の温度依存性の表式を具体的な物質に適用して解析する。また、その結果に基づき理論を改良する。 2)アモルファスイオン導電体における構造緩和と伝導緩和のデカップリングが熱電効果にどのように影響するかを検討する。 3)前年度に開始したイオン導電体におけるMeyer-Neldel則の研究を継続し、フォノンドラッグに関する知見を得ることを試みる。
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