研究課題/領域番号 |
23K04382
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
村田 貴広 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (70304839)
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研究分担者 |
猿倉 信彦 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (40260202)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ガラス / シンチレータ / 中性子 / フォトニクス |
研究開始時の研究の概要 |
インフラ非破壊検査,ガン治療,核セキュリティーなど幅広い分野において中性子を利用したイメージング技術の開発が進展している.中性子イメージングの高性能化のために,デバイスの心臓部となる中性子を検出するガラスシンチレータには高速応答性と高輝度に加えて,高い化学的安定性と放射線耐性を兼ね備えていることが必要不可欠である.本研究では,高速応答性能を有するPr3+から高効率で高輝度を達成でき,高い化学的安定性と放射線耐性を兼ね備えたガラス組成を設計し,中性子イメージング用ガラスシンチレータの高性能化に取り組む.
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研究実績の概要 |
本研究では,高速応答性能を誇るPr3+をドープする新規なマトリクスガラスを独自の組成設計指針に基づいて開発し,高速応答性と高輝度を達成でき,高い化学的安定性と放射線耐性を兼ね備えたガラス組成を設計し,中性子イメージング用ガラスシンチレータ材料の開発研究を2つのアプローチで行っている. 本年度は,光学活性を維持したままPr3+を高濃度ドープ可能なガラス組成の開発に取り組んだ.通常,シンチレーション蛍光を担う賦活剤をガラスに高濃度にドープすると,賦活剤が互いに近接あるいはクラスタリングを生じることによって,賦活剤間で吸収したエネルギーの移動が起きることで,失活し発光量が著しく低下する濃度消光が生じる.これに対し,リン酸塩系はガラスネットワークにP=O二重結合を起源とする賦活剤を均一分散・固定化させる site selectivity と呼ばれる特異性を有することを研究代表者が明らかにしている.申請者らが開発した20Al(PO3)3-80LiF (APLF80) ガラスも同様にこの site selectivity が期待できる.そこで,APLF80ガラスをベースに濃度消光することなくPr3+を高濃度にドープできるガラス組成の開発を行った.本年度ではAPLF80ガラスの組成を展開し,フッ素を含まずに安定なガラスを形成できるリン酸塩系ガラスについて調査を行った.比較のために,ケイ酸塩系でも希土類イオンを高濃度に含有することができるガラス組成についても比較検討を行った.ガラスの調製は通常の溶融急冷法で行った.得られたバルクガラスを切削加工・研磨を行って,市販の蛍光分光光度計度で蛍光スペクトルを測定し,ガラス組成がPr3+の深紫外蛍光スペクトル波形に及ぼす効果について検討を行った.その結果,リン酸塩系ガラスに比べ,ケイ酸塩系ガラスにドープしたPr3+では励起および蛍光のピーク波長はともに長波長側にシフトし,励起および蛍光のスペクトル幅はともにひろがることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では,APLF80ガラスをベースに濃度消光することなくPr3+を高濃度にドープできるガラス組成の開発を目的として,APLF80ガラスの組成を展開し,フッ素を含まずに安定なガラスを形成できるリン酸塩系ガラスとともに,ケイ酸塩系でも希土類イオンを高濃度に含有することができるガラス組成を見出すことができたので,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
通常の多くの酸化物ガラスでは,Pr3+の深紫外蛍光波長領域に対する光透過能が低い.さらに,中性子イメージング用シンチレータに求められる必須条件であるLi+高含有組成では,紫外光を強く吸収する非架橋酸素が大量に生成されるので,ガラスの紫外透過能が著しく低下する.従って,Li+を多量に導入しても紫外透過特性を維持するガラス組成の設計が必要となる.本年度で調査したリン酸塩系およびケイ酸塩系にPr3+をドープしたガラスについて,組成を改良し,蛍光寿命および発光量に関する計測を行なって蛍光特性に関する物性値をさらに集積するとともに,シンチレーション特性についても評価を行うべく研究を継続して取り組む計画である.
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