研究課題/領域番号 |
23K04385
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
松本 里香 東京工芸大学, 工学部, 教授 (30338248)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | インターカレーション / ナトリウム / 多層グラフェン / グラファイト / 黒鉛 |
研究開始時の研究の概要 |
炭素材料へのナトリウム(Na)のインターカレーションは他のアルカリ金属とは異なり、高結晶性の黒鉛に高密度にインターカレーションすることはできない。よって、Naイオン電池の負極として高結晶性黒鉛は使用できない。 本研究では、Naを高密度にインターカレーション可能な黒鉛系の炭素材料を創製する。そのため、結晶構造とNaインターカレーション挙動の関係を調べ、Naがインターカレーションしやすい結晶構造の特徴を明らかにする。さらに、高密度にNaがインターカレーションするように結晶の修飾等を行う。さらに、これらの手法をマグネシウム(Mg)に応用して、未だ報告例のないMgのインターカレーションも検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では「ナトリウムの高密度インターカレーションを可能とする黒鉛系炭素材料の創製」を目指し、1)高密度ナトリウムインターカレーションを可能とする黒鉛系結晶構造の条件を明らかにし、2)ナトリウムを高密度にインターカレーションできる黒鉛系炭素材料を創製し、さらに、これらの知見を基に、3)多層グラフェンへのマグネシウムインターカレーションの可能性を探る計画である。 2023年度は、上記1)を実現するために、多層グラフェンへのナトリウムの高密度インターカレーションの条件を明らかにすることを目標とした。これまでも多層グラフェンに高密度にナトリウムがインターカレーションをした結果を得ていたが、実験の再現性が低く、明確な最適反応条件は明らかにできていなかった。よって、2023年度は、より詳細に反応条件の検討を行った。 また、実験を進める中で、インターカレーションした生成物の分析手法を見直す必要が生じた。ホストにはSi基板に転写した多層グラフェンを使用しているため、インターカレーションの可否やその程度の評価にはラマン分光分析を用いている。インターカレーション試料は真空下の気相法で合成しているが、試料を大気下に取り出した時点で分解が生じるため、大気非暴露で分析を行う必要がある。グローブボックス等で試料を測定セルに移動する方法等を用いていると大量の試料を迅速に分析することができない。よって、合成実験と同時に、大気非暴露で簡便かつ正確にラマン分光分析のできる方法の検討も行った。 現在までに、再現性良く高密度インターカレーション可能な条件が見いだせていないため、2024年度も引き続き実施し、明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多層グラフェンをホストとして、再現性良く、ナトリウムの高密度インターカレーションを生じる最適反応条件を明らかにするために、合成と生成物の分析を繰り返した。 多層グラフェンへのインターカレーションの生成可否の評価にはラマンスペクトル分析を用いているが、大気下での測定ではインターカレート試料が分解することがわかった。よって、分解前の状態を分析するために、大気非暴露での測定方法を検討した。はじめに、アルゴン置換した低露点のグローブボックス内で試料を反応管よりラマン分析用の気密ホルダに移すことを検討したが、測定に時間がかかること、気密ホルダに移した試料を再加熱することができないことから、他の大気非暴露測定の方法を検討した。その結果、測定の分解能が下がるが、反応ガラス管のまま測定する方法を見出した。また、反応条件の検討として、加熱温度や反応時間等々をさまざま検討した。 現在までに、高密度インターカレーションの最適反応条件は見つかっていないが、生成物の効率的な分析方法は確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はナトリウムが多層グラフェンに高密度に再現性良くインターカレーションする反応条件を見出す。これまでの経験より、インターカレーション挙動にはホストとなる多層グラフェンの結晶性も大きく影響すると考えられるので、CVD合成のグラフェンの他、HOPG剥離グラフェンも利用し、10~1000層スケールの多層グラフェンを用意し、反応条件を検討する。生成物は大気非暴露でラマン分光測定により分析する。 2023年度の研究より、加熱温度プログラムの違いによりインターカレーションの低度に差が生じる傾向がみられたので、2024年度は加熱過程を重点的に検討する。 さらに、以前よりナトリウムの高密度インターカレーションが報告されている低温熱処理の石油コークスを用いた合成・分析も行い、高密度インターカレーションの条件を探る。
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