研究課題/領域番号 |
23K04399
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
白石 幸英 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 教授 (60289303)
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研究分担者 |
秦 慎一 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 特任准教授 (20796271)
後藤 達也 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 助教 (50844940)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | カーボンナノチューブ / 熱電変換材料 / 金属有機構造体 / ナノ材料 / エネルギーハーベスティング / 創エネルギー / 環境発電 / ナノ界面 |
研究開始時の研究の概要 |
未利用低温排熱の有効利用法の一つとして、熱から電力を直接取り出す熱電変換技術に大きな期待がよせられている。この実現のために、本申請者は、導電性高分子やナノカーボンをナノ粒子で複合することで、熱電変換特性の向上を図ってきた。しかし、その性能を真に発揮し、モジュール化するには、キーマテリアルであるCNTハイブリッド膜の革新的な特性向上が不可欠である。本研究では、CNT/ナノマテリアルの界面を精密制御することで、高い熱電変換特性を示す有機無機ハイブリッド材料を創製し、高い熱電特性を長期間保持するフレキシブルモジュールの応用に繋げる。
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研究実績の概要 |
モノのインターネット(Internet of Things; IoT)を実現するための課題は、電源の確保であるが、電池交換、電源配線、充電操作などが容易でない場所も多い。その電源技術のひとつとして注目されている技術が、熱、光、振動などを「ハーベスト」して、電力に変換する技術である。世界の総エネルギー消費の約9割は、化石資源に依存しているが、66%が排熱として失われており、その大部分は150 ℃以下の低温排熱である。この未利用低温排熱の有効利用法として、熱から電力を直接取り出す「熱電変換技術」は、可動部がないためメンテナンスフリーで、設置も容易な点で注目されている。熱電変換材料の性能は、無次元熱電変換性能指数ZT で評価され、ゼーベック係数S、導電率σ、熱伝導率κと、温度T を用いて計算される。従来、熱電変換材料には無機材料のみが対象とされ、毒性元素を含むテルル化ビスマスなどが実際に電子冷却に用いられてきた。 p型カーボンナノチューブ(CNT)は、熱電変換モジュール出力を支配する重要構成部であり、その特性強化のために多くの検討がこれまで積み重ねられてきた。本研究室では、高分子保護金属コロイドを用いて調製された複合系CNTフィルムにおいて、p型熱電変換特性が向上する新しい結果を得ている。一方、金属と有機リガンドが相互作用した金属有機構造体(Metal-Organic Framework; MOF)が、活性炭やゼオライトをはるかに超える高表面積を持つ多孔質の配位ネットワーク構造をもつ材料として、ガス吸着や分離技術、センサーや触媒などへの応用が期待されている。本研究では、MOFとCNTとを複合したフィルムを創製し、その熱電変換特性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cuベース金属有機構造体を複合したカーボンナノチューブの調製と熱電変換特性 調製したHKUST-1のFT-IR スペクトルより、HKUST-1における特徴的なピークである1645 cm-1、1445 cm-1、730 cm-1付近に、それぞれカルボニル基による非対称伸縮振動、対称伸縮振動およびCu-Oの振動が観察された。SEM観察より、約10 μmの粒子が多数確認された。一般にHKUST-1は八面体型構造を取ることが知られている。合成した試料においても綺麗な八面体型の構造が観測されているため、HKUST-1の調製に成功したと判断した。HKUST-1/CNT複合膜の熱電変換特性評価の結果、HKUST-1を複合化することでCNTのS値とσ値がともに改善され、95.2 μWm-1 K-2だった出力因子が314 μWm-1 K-2まで上昇した。作製した複合膜のラマン分光分析により、G bandの高波数側シフトが確認された。これは、単層CNTに電子受容体を加えたときなどに起こるホールドーピングを示す挙動である。σ値の向上は、HKUST-1が電子受容体となり、CNTから電子を引き抜き電子が抜けた後にホールが生成され、CNT中のホールが豊富になったと考えた。しかし、この材料では、材料の化学的安定性と再現性に課題があることがわかった。その要因はHKUST-1の脆弱な構造で、溶媒分子がpaddlewheel型Cuダイマーにaxial配位しているが、この配位子が除去されると不安定になるため、空気/湿気にさらされると不可逆的な分解を起こすためである。これは一般にCuを基盤とするMOFに見られる現象であり、他の材料に当てはまるとは限らないとされているため、Znベース金属有機構造体/カーボンナノチューブ複合膜の調製を検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究室では、以前Znベースナノ粒子とpoly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly(styrenesulfonate)やCNTとの複合熱電変換材料について報告した。一方、Znベース金属有機構造体(ZIF-8)が、新しいMOF材料として注目されている。ZIFの熱安定性は最高約500℃であり、大多数のMOFよりも安定であることも知られている。ZIF-8は、TEM観察の結果、173 nmであった。ZIF-8/CNT複合膜の熱電特性評価の予備的な結果、S値は減少したが、σ値は大きく増加した。これに伴い出力因子は、未添加の58.1 μWm-1 K-2から、ZIF-8添加により158 μWm-1 K-2を示し、最大2.7倍向上した。今後は更なる条件検討を行い、高い熱電性能を示す開発を図る予定である。
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