研究課題/領域番号 |
23K04413
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
清水 一行 岩手大学, 理工学部, 助教 (30748760)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 水素脆化 / アルミニウム合金 / 放射光X線CT / 水素 / T相 / 変形破壊プロセス / クロスオーバー合金 / 亀裂進展 |
研究開始時の研究の概要 |
7xxx(Al-Zn-Mg)系合金は、最高強度の実用アルミニウム展伸材であり、さらなる高強度化には水素脆化の克服が課題とされている。これまで申請者は、η相は、高強度化をもたらすと同時に脆化機構としても振る舞うこと、さらに、T相は、η相と異なり、相内部に水素をトラップできることを見出している。そして、T相の優先析出により、高い強度と高い耐水素脆性を両立可能だと発想した。T相析出のためには、Mg量増加が有効とされる。本研究では、5xxx(Al-Mg)系合金に迫るほどMg/Zn比を増加させた7xxx合金、5xxx/7xxxクロスオーバー合金を創製し、この合金の高い強度・耐水素脆性を実証する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、T相を優先析出させた、高い耐水素脆性をもつ5xxx/7xxxクロスオーバー合金の創製に挑んでいる。 令和R5年度は、予定通り、T相析出型5xxx/7xxxクロスオーバー合金を試作後、T相の組成・構造をナノ組織解析し、変形破壊挙動を放射光X線CTでその場観察した。その結果、Zr添加型合金(AlZnMg-Zr合金)では、高水素状態かつ長時間の引張中断試験であっても15.8%の破断伸びを示し、水素脆性破壊(粒界・擬へき開破壊)をほぼ示さなかった。すなわち、Zr添加とT析出の両者によって、粒界・擬へき破壊が大きく抑制されたと言える。但し、2%程度ではあったが、擬へき開破壊を示した。このき裂の発生・進展プロセスを明らかにするため、SPring-8にて放射光X線CTその場イメージングを行った。そして、擬へき開亀裂は発生するものの、進展が大きく抑制されて鈍化することが可視化された。通常の水素脆性亀裂は、シャープな亀裂先端を維持したまま、小さなき裂進展駆動力で進展するが、試作合金の擬へき開亀裂は延性亀裂のように鈍化し、停留していた。この高い亀裂進展抵抗が、水素脆性破壊を抑制できた理由だと考えられる。 以上より、初年度は、T相析出とZr添加により、水素誘起擬へき開・粒界破壊の両者を防止できる、新奇Al-Zn-Mg合金を開発可能であることを実証した。さらに、Zr添加型T相合金では、擬へき開亀裂の鈍化という、従来のAl-Zn-Mg合金では現れない特異な破壊挙動を示すことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進展していると評価できる。その理由は以下の通りである。 (i)初年度に実施予定であった、T相析出型5xxx/7xxxクロスオーバー合金の試作ならびに組織評価が完了していること (ii)試作合金の変形破壊プロセスを放射光X線CTによりその場観察し、高い耐水素脆性を実証できていること、 (iii) 試作合金の特異な水素脆化防止挙動を直接可視化できていること
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、水素につよく高強度なAl-Zn-Mg合金を実現させるべく、研究を展開している。初年度の成果により、水素につよい合金の開発指針を達成しつつあるが、高強度化の点では課題が残っている。すなわち、高強度化のためのT相の高密度・微細析出および組成最適化には至っていない。次年度以降、試作合金を基本として、熱処理や組成を再調整し、その合金の水素脆化防止挙動を放射光X線CTによりその場観察する。最終的には、耐水素脆性・高強度アルミニウム合金を実現したい。
|