研究課題/領域番号 |
23K04414
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
中村 和正 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (90433870)
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研究分担者 |
高瀬 つぎ子 福島大学, 共生システム理工学類, 特任准教授 (10466641)
寺西 義一 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 研究開発本部機能化学材料技術部プロセス技術グループ, 主任研究員 (50463055)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 構造・機能材料 / カーボン材料 / 表面・界面物性 / 電池・エネルギー材料 |
研究開始時の研究の概要 |
再生可能なバイオマス資源である木材およびバクテリア由来セルロースナノファイバーを用い、これらに簡便な方法にて官能基を導入することで、その後の加熱処理のみで自己賦活(活性化)を促し、多孔質カーボン材料を最大限簡略化したプロセスにて作製する。この作製した多孔質カーボン材料の電気化学測定によりキャパシター容量を算出し、蓄電デバイスである電気二重層キャパシターの電極への応用を試みる。その際、作製された多孔質カーボン材料の組織観察、構造解析、細孔特性などを調査し、キャパシター容量へ与える試料や処理の影響を多角的に調査する。
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研究実績の概要 |
資源問題、環境問題、電力不足、安定的電力供給の全てに対応するため、最大限簡略化された作製プロセスにて、再生可能なバイオマス資源を利活用し、それから高機能な蓄電デバイスの開発を目指している。これらのために、地球上で最も豊富に存在しているセルロースの中でも、特にセルロースナノファイバー(CNF)に着目し、それの加熱段階で自己賦活(活性化)を促すことで、多孔質カーボン材料を作製し、電気二重層キャパシターの電極へ応用することを目的とした。令和5年度は、バクテリア由来CNF(ナタデココゲル)に、3種類の硫酸ナトリウム系およびリン酸ナトリウム系の界面活性剤をそれぞれ添加し、加熱処理のみで多孔化を行った。単味および各界面活性剤添加CNFから作製されるカーボン材料の収率は、加熱処理の温度上昇とともに若干減少した。これは、熱重量測定やX線回折より、熱分解および炭素骨格構造の成長のためだと考えられる。また、界面活性剤添加CNFは、CNF内の炭素原子が界面活性剤とともに脱離したと推察される、カーボン材料の収率減少もみられた。1000℃で加熱処理することで、界面活性剤添加CNFから作製されたカーボン材料の比表面積は、単味のそれと比較して、約4~11倍となった。その際、界面活性剤の種類により、開孔する細孔径が異なることも分かった。さらに、電子顕微鏡観察より、界面活性剤添加CNFから作製されたカーボン材料のうち、最も多孔化が進行したカーボン材料は、崩れた組織が観察され、加熱処理と同時にCNF内の炭素原子が脱離し、開孔していく過程が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、再生可能なバイオマス資源であるバクテリア由来CNFを原料として、3種類の界面活性剤をそれぞれ添加することで、それぞれから多孔質カーボン材料が作製できた。つまり、バクテリア由来CNFに硫酸ナトリウム系やリン酸ナトリウム系の界面活性剤を添加し、加熱処理のみで、カーボン材料の細孔特性を大幅に向上させることが可能となった。硫酸ナトリウム系界面活性剤は2種類のそれらを使用したが、硫酸ナトリウム系界面活性剤Aを添加したCNFからは、単味と比較して、比表面積が約5.6倍で、2nm以下のミクロ孔が相対的に多く開孔した多孔質カーボン材料が得られ、硫酸ナトリウム系界面活性剤Bを添加したCNFからは、単味と比較して、比表面積が約11倍で、2nm以上のメソ孔が大量に開孔した多孔質カーボン材料が得られた。つまり、界面活性剤の種類により、多孔化の進行度合いが変化するとともに、開孔する細孔径を選択できる可能性も示唆された。また、より高温で加熱処理することで、細孔径分布が整っていき、特定の細孔径が開孔することが分かった。これらの結果より、カーボン材料の作製時にバクテリア由来CNFへの界面活性剤添加による多孔化の効果は絶大であり、これらを利用した多孔質カーボン材料の作製に対する見通しもついてきた。さらに、現在、再現性の確認を行っているが、ナトリウム化合物やリン酸塩の官能基が既に導入された木材由来CNFを加熱処理したカーボン材料は、単味と比較して、多孔化する傾向にあり、且つ、官能基の種類により開孔する細孔径が異なることも判明しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
資源問題や環境問題に対応するために再生可能なバイオマス資源の有効活用が求められ、電力不足の解消や安定的な電力供給に対応するために蓄電デバイスの開発が急務となっている。それら2つの課題を同時に解決しつつ、最大限簡略化されたプロセスにて材料の作製も考慮する必要がある。令和5年度に得られた結果に基づき、以下の2つの研究を推進する。 1)界面活性剤を添加したバクテリア由来CNFからのカーボン材料の作製および多孔化の効果が確認できたので、ナトリウム化合物やリン酸塩の官能基が既に導入された木材由来CNFを加熱処理したカーボン材料の作製および多孔化の効果に関しての再現性を確認する。 2)作製した各多孔質カーボン材料に対し、電気化学測定を行い、キャパシター容量を見積もり、蓄電性能を見極める。
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