研究課題/領域番号 |
23K04416
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
高林 康裕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (90769655)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 蓄電池 / X線回折 / オペランド測定 / XAFS / 小角散乱 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、広く使われているリチウムイオン電池より高いエネルギー密度を持ち、より安全な革新型蓄電池の開発が進められている。その開発のためには、実際の充放電挙動を理解することが必要である。電池動作中の状態を観測するオペランド測定は重要であるが、セルの外装や電池の幾何構造のために困難がある。本課題で新たなセルを開発し、充放電に伴う電極や固体電解質の構造の変化をその場観測によって明らかにすることを可能にする。このセルでは、電極と固体電解質およびそれらの界面といった場所依存性についても研究を行うことが可能となる。多様な研究手法のオペランド同時測定により、充放電に伴う構造変化、電子状態変化を明らかにする。
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研究実績の概要 |
現在、広く使われているリチウムイオン電池より高いエネルギー密度を持ち、より安全な全固体革新型蓄電池の開発において、電池を解体せずに行うオペランド測定は実際の充放電メカニズムを知る上で重要であるが、セルの外装や電池の幾何構造などのために困難がある。本課題では、新たなオペランド測定セルを開発することで、充放電に伴う電極や固体電解質の構造の変化をその場観測によって明らかにすることを目的に研究を進めている。当初、高圧実験で用いられるダイアモンドアンビルセルを参考に設計を行っていたが、電池試料が微量であるために調整や充放電が困難であることが分かった。そこでセルの設計を変更し、内径を0.7、1.0、3.0 mmとした円筒型セルならびに内径0.3 mmの半円部を外周に設けた凸型加圧セルを製作した。これらのうち、内径3.0 mmの円筒型セルと凸型セルを用いて、FeF3を正極合剤に用いた全固体電池について、充放電をしながらのX線回折および小角散乱実験をSPring-8 BL28XUで実施した。正極合材に重元素を含むため、X線のエネルギーは26 keVを使用した。ビームラインの光学的条件から、当初予定していたX線吸収微細構造を含めた3種同時測定については実施を見送り、2種同時測定とした。先述の試料によるX線の吸収のために試料セル外周付近の試料の厚さの小さい部分にX線を照射して、充放電中のX線回折および小角散乱を測定したが、充放電曲線からFe2+からFeへの変化が予想される反応段階においても、Feに帰属されるX線回折ピークは観測されなかった。これは、試料の中心部に比べて、外周部の反応が遅れるという反応分布のためであると予想される。また、小角散乱からは、放電によって生成した密度の高い粒子の粒径が、FeF3を正極合剤に用いたリチウムコンバージョン電池での鉄粒子よりも大きいことが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の計画時点でのセル設計から、研究開始後に大幅な変更を行ったが、セルの試作を行い、限定的ではあるものの、当初の計画通り、初年度中に実際の全固体蓄電池の構成での放射光を用いたオペランド実験を実施することが出来た。現時点では、試料によるX線の吸収と充放電を考慮した十分な試料量の確保を両立したセルの設計と実際の組み立てに課題があるものの、研究室での予備実験を繰り返すことで、セル設計の問題の洗い出しと改善、組み立て技術の向上を図っており、研究期間内でのオペランド測定可能な全固体電池用セルの開発とそれを用いた放射光実験は達成可能であると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
円筒型セルの試料中心部に比べて反応速度が遅い外周部でしかX線回折や小角散乱を測定出来ていない、という問題に関しては、より内径の小さなセルを用いて、セルの中心に近い場所にX線を照射して実験を行うことで解決を図っている。これを実現するには、セルの組み立て方法を改善し、正極、電解質、負極をそれぞれ適切に積層させる必要がある。そこで、手法の改善と、技能の習熟を兼ねて、研究室での予備実験を繰り返している。また、放電により生成した粒子の粒径が当初予想より大きく、当初のセットアップでは測定出来ないという問題があったが、SPring-8 BL28XUのビームライン担当者と協力し、試料から検出器までの距離を延長したセットアップを構築し、測定可能領域を拡げた実験を計画している。
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